北穂高岳で味わう至福のひと時

穂高連峰を中心とした登山でみたこと、感じたこと、考えたことを備忘録として書いています。

山の雑学~落雷①富士山で稲妻が横に走った!

f:id:alps6717:20190428134115j:plain

積乱雲わく富士山・富士宮ルート山頂

恐怖の体験 落雷で死者出る

 2008年8月9日のことです。富士山(標高3776㍍)に、勤め先の同僚と2人で静岡県側の富士宮ルートから登りました。この日は上空の寒気の影響で天気が不安定で、標高3000㍍の9合目あたりで「ひょう」(直径5㍉以上の氷塊)が降り始めました。周りをあらためて見ると積乱雲があちこちにモクモクと発生し始めていて、富士山より高く伸びている雲もました。「これは、ちと、まずいねえ」「ええ」などと言葉を交わしながら先を急ぎ、昼前に山頂の測候所跡に立ちました。

 日本一高いところで眺望を楽しんだあと、山頂直下の山小屋脇でも写真(上)を撮って下り始めましたが、やにわにすざまじい雷鳴と雨。富士山自体がすっぽり黒い雷雲に覆われた格好でした。

 ドタバタと登山道を駆け下り、8合目の山小屋(標高3250㍍)に逃げ込もうと考えたのですが、既に軒先まで人であふれていて入れてくれそうにない。それでも命が欲しいですから強引に背中で押して軒下に少し入りました。でも雨は雨具をパチパチたたき続けるばかりです。

 10分、20分とジーッと眼を閉じていると、「稲妻が右から左に行きましたよ」と同僚の声。「エエーッ」と眼を開けると、確かに稲妻が上下ではなく真横に走っているではありませんか。

 積乱雲と地上との間で起こる「落雷」ではなくて、積乱雲と積乱雲との間で電気が流れる『雲放電』という現象が起きているのでした。

 「あっ、また走った」と感動して眺めているうちに、(帽子を脱いでいたために)首の後ろから背中に入った雨水で体がガタガタ震え出してきたのです。雨はやみそうになく軒先も雷にうたれる危険があるため、同僚に「こりゃ、あかんわ。走るぞ、一気に下まで」と声を掛けて軒下をあとにしました。

 6合目の山小屋を過ぎたあたりで、「落雷に遭った人が小屋に担ぎこまれたよ」という登山者の声が耳に入りました。

 

翌日の新聞記事(要旨)

  9日午後1時50分ごろ、富士宮登山道の6合目と7合目の間で、都内の会社経営52歳男性が落雷のあと倒れているのを、別の登山者が見つけ、近くの山小屋に通報した。病院に搬送されたが死亡した。落雷による感電死だった。

 

 

雷の対策はどのように?

 雷の時は、建物の中の「中央」や、車といった閉鎖された空間にいるのが一番安全です。

 樹木の下は、決して安全ではありません。木の下で雨宿りした場合、樹木が雷の直撃を受けると、落ちた雷が木の幹を離れて近くにいる人の体を通って地面に逃げる、という現象があるからです。人体のほうが樹木よりも電気を通しやすいんです。山小屋の「軒先」での雨宿りも、山小屋に落雷した場合に巻き込まれることがありますから危険です。

 

 

木陰にいて落雷、死亡

  最近でもこんなニュースがありました。「令和」の時代が始まったばかりの2019年5月5日のNHKニュースです。

 4日、神奈川県西部の丹沢山地で登山をしていた45歳の男性が落雷に遭い、死亡しました。

 神奈川県などによりますと、4日午後1時半ごろ、神奈川県秦野市、松田町、山北町にまたがる丹沢山地の鍋割山で、登山をしていた千葉市の45歳の男性が落雷に遭いました。男性はその場で死亡が確認されたということです。

 県によりますと、男性は友人と2人で登山に訪れ、山頂から南に600㍍ほど離れた場所で雨が降ってきたため、友人が雨具を準備している間に1人で木の陰に移動し、落雷に遭ったということです。当時、現場付近には雷注意報が発表されていました」

 

 木の“すぐ下”は、安全ではないんですね。

 やむを得ず、木の下に避難する場合は、次のような場所を選ぶ必要があるそうです。

①4㍍以上の高さがある木を選ぶ

②木の先端を45度以上の角度で見上げられる場所

③木の幹から4㍍以上離れた場所

 

     ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

“あの時”あれでよかったのでしょうか……?

 2008年夏の富士山で遭遇した落雷。あの時、私は逃げ込むところなかったために、雨と雷の中を山小屋の軒先から同僚と2人で登山道に飛び出しましたが、あの判断は正しかったのでしょうか。あの時は無事でしたので、ホッとしていましたが。

 しかし、無謀でした。登山自体が――。山行前にきちんと雷予報をチェックしなければいけません。危険を察知したら、途中下山をしたいものです。