塔ノ岳(2015年秋)
気になるにおい
「ヤマに行った時、一番気にすることは何ですか?」――
こう聞かれたら、「ニオイです」と返事をする人も多いと思います。
以前、近郊の山に行った帰りに、こんなことがありました。
額から汗をポタポタ落としながら山登りした夏のある日、汗くさいと思われるシャツとズボン、異臭を放っているかもしれないザックを足元に置いて、電車に乗った時のことです。
私の隣の空いている席に一旦腰を下ろしたおばさまが、ほんの数10秒あとに立ち上がり、少し離れた席に移りました。
別の日には、隣に座った若い男性が、しばらくすると自分のシャツの上腕部を鼻の前に持ってきてクンクンにおいをかぎ始めました。その数秒後、今度はチラリとこちらを見ると、席を立って隣の車両に移って行きました。
自宅に帰ってからザックやズボンに鼻を近づけたところ、においました。奥さんからも、「におうよ!」。
「登山者はくさくていやだね」と言われないように、日帰り温泉に立ち寄るなり、少なくとも着替えるなり、気配りしたいものです。
汗がくさいのはなぜ? 汗は何からできるの?
汗は何からできるのか・・・。
答えは「血液」。血液から赤血球と白血球、血小板という細胞部分を取り除いた液体部分を「血漿(けっしょう)」といいますが、これが毛細血管から体の組織ににじみ出て、さらに皮膚の表面から汗となって蒸発していきます。
この血漿には水分のほかにナトリウムなどの電解質や栄養素も含まれていますが、栄養素などは汗になる前に途中で体に再吸収されるため、汗になるのは血漿の中の水分だけ、と言ってよいほどです。
この汗は、出たばかりの時はほぼ無臭。においがありません。
では、におうのはなぜか?
においのカギを握るのは?
においのもととなるのは、「汗」と「皮脂」と「細菌」の3人組です。
皮膚には、汗を分泌する「汗腺」があり、体温を調整する役割があります。また、皮脂を分泌する「皮脂腺」もあり、皮膚に潤いを与える機能を持っています。
もう1つ、皮膚には表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌などという名の、さまざまな微生物である「皮膚常在菌」がくっついて生息しています。
皮膚常在菌と称される細菌は、皮膚の表面や毛穴の中で生きています。肌を滑らかにする菌や、逆に肌荒れを起こす菌などが共生しています。
汗も皮脂も、分泌された直後は無臭です。
しかし、時間がたつとともに、皮膚常在菌が汗、皮脂、そしてそれらに含まれているタンパク質、アミノ酸、脂質といった成分と混じり合って行きます。混じる合うことによって成分が細菌によって分解され、すっぱく不快なにおいのするガスを発します。
どうすればいいの?
手っ取り早く対処するのは、ぬれたタオルやペーパーで汗をふき取ること。トイレで作業する人が多いです。