北穂高岳で味わう至福のひと時

穂高連峰や丹沢を歩いて20年余り。見たこと学んだことを備忘録として書いています。

どうして?人体の不思議~内臓脂肪を落とす!

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北穂沢を詰める……北穂高岳山頂へ (2014年5月3日撮影)

「そのポッコリお腹、何とかなりません?」

太っているわけでもなく、体重は身長に比べて問題ないのに、オナカだけポッコリ。

「だらしない人ねえ」と、思う人は少なくありません。

 

 そんな周囲の視線を感じて、近所のスポーツジムに通い始めてみたものの、短期間で腹が凹むわけはなく、1週間であきらめた人もいるでしょう。

 

人の体を構成する栄養素の割合

 

 人間が生きていくうえで毎日とらなければならないものは、「水」のほかに炭水化物(糖質)、脂質(脂肪)、タンパク質の3つがあり、これを3大栄養素といいます。

 体を構成する割合を、大ざっぱにみますと、

水分60%、脂質19%、タンパク質15%、その他(無機質、糖質など)6%ほど。 

  (出典;「1から学ぶスポーツ生理学」ナップ発行)

 

 例えば、体重70㌔の人の体にに占める脂質の割合は、13㌔にもなります。

 

男性にたまりやすい内臓脂肪

 体の中の脂肪は、「脂肪細胞」という名前の細胞に蓄えられています。中性脂肪という脂肪の塊を持っている細胞です。脂肪は蓄積している部分によって、「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。

 

 「内臓脂肪」は、お腹の中にある腸間膜(ちょうかんまく)という、腸を固定する膜にたまる脂肪で、過剰に蓄積するとお腹がポッコリと出っ張ります。メタボリックシンドロームでも注目されています。

 

 一方の「皮下脂肪」は、皮膚のすぐ下の皮下組織にたまる脂肪で、女性は腰の周りや太ももにかけて多く付きます。

 

脂肪の役割は?~~エネルギー貯蔵庫

 脂質(脂肪)の大事な役割は、炭水化物と同様に、体を動かすうえで欠かせない「エネルギー」の源であるということです。

 脂質は体内で、1㌘あたり9㌔カロリーという高いエネルギーを生み出します。炭水化物とタンパク質はそれぞれ4㌔カロリーです。脂質は優れたエネルギー貯蔵庫なんです。

登山で遭難した場合、食事をとれない状況でも水さえ飲んでいれば数日間は生き延びられるといわれるほどです。

 また、女性に多い皮下脂肪には、臓器を保護し、体を寒さから守る働きがあります。ぶつかった時のショックを和らげるクッションの役割もあります。

 

内臓脂肪はなぜ増える?

 内臓脂肪は、食べ過ぎると増えます。食物からとった脂質(水に溶けない物質)がエネルギーとして消費されずに余ると、肝臓で「中性脂肪」が合成されます

 この中性脂肪は血液に乗って全身に運ばれ、「脂肪細胞」に蓄えられますが、特に腸間膜や腹膜に付きやすいために、内臓脂肪の増加につながります。結果的に「肥満」という状態になります。

 

怖いのは内臓脂肪!

悪い物質を血管の中に分泌

  食べ過ぎの状態が続くとどうなるか、といいますと、脂肪細胞に中性脂肪がどんどんたまって肥大化し、限度を超えると脂肪細胞自体の数が増えてきます。

 

 健康面で問題になるのが、内臓脂肪です。

 

 脂肪細胞は、いろいろな物質をつくって血管内にそれを放出し、結果的に体の機能が調整されています。しかし、内臓脂肪がたまり過ぎると、悪玉というべき物質を血管内に過剰に分泌し、これが血流に乗って全身に運ばれます。それによっていろいろな弊害が出ます。

 

 第1に、動脈硬化が進行します。動脈硬化になって血管が詰まりますと、そこから先の組織に酸素と栄養素を送れなくなり、組織が死にます。場所によって心筋梗塞になったり脳梗塞になります。

 

 第2に、血液中のブドウ糖の濃度である血糖値を一定に保つために、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きをじゃまし、糖尿病の発症につながります。

 

 第3に、血液を固めて血栓をつくりやすい物質も内臓脂肪から分泌されます。

 

 第4に、血圧を上昇させる物質も分泌され、血圧が上昇して高血圧症の心配が生じます。

 

 登山で内臓脂肪を減らせるの?

脂肪が燃えるメカニズム

 “脂肪を燃やす”という表現をよく耳にしますが、どういうことでしょうか。

 燃やすというのは、「消費する」という意味で、消費するためには中性脂肪の「分解」が必要です。

 

 運動しようとすると、エネルギーが必要になります。その時、脳が「中性脂肪を分解してエネルギーをつくりなさい」と命令を出します。すると、脂肪を分解する能力のある「リパーゼ」という消化酵素の動きが活発になり、中性脂肪脂肪酸とアルコールの一種のグリセロールに分解。脂肪酸は血液の中に放出され、血流に乗って「筋」に運ばれます。ここで筋肉細胞の中の「ミトコンドリア」という小さな器官で「酸素」と結びついて分解され、エネルギー源になります。

 

 「脂肪を燃やす」というのは、「エネルギー源として消費する」という意味です。中性脂肪は体内に貯蔵された“固形燃料”に例える研究者もいます。

 

有酸素運動がおすすめ

有酸素運動って?

 内臓脂肪を消費するには、どうすれば効果的なの?と聞ききますと、厚生労働省は「有酸素運動が効果的です」といいます。

 

 有酸素運動というのは、体を動かす時のエネルギー源としてブドウ糖などの糖質と中性脂肪を使い、さらに脂肪を分解するために「酸素」を呼吸によって取り入れてエネルギーを産み出しつつ、長時間続ける運動のことです。

 ウォーキングやジョギング、サイクリングなどがそれにあたります。

 

生活習慣病予防のための健康情報サイト」

 厚生労働省のホームページに「生活習慣病予防のための健康情報サイト」があります。

 「メタボリックシンドロームを防ぐ身体活動と運動」の項では、宮崎滋・結核予防会総合検診推進センター所長が、こう書いています。

 

 「体にたまった脂肪を減らすには、息が切れるような激しい運動は不適当で、呼吸が十分できる、ややきつい程度の運動(有酸素運動)がいいのです。」

 「運動は消費エネルギーを増やすとともに、筋肉量を増やして基礎代謝を高める効果もあります。基礎代謝が増えれば、減量のあとのリバウンドも起こりにくくなりますし、太りにくい体になります。」

 「基礎代謝を高めるには、ある程度、強度のある、筋肉を鍛える運動が必要です。比較的簡単にできる筋肉を鍛える運動としては、スクワット、腹筋、腕立て伏せなどが挙げられます。」

 

 

 また、「内臓脂肪減少のための運動」の項では、大河原一憲・電気通信大学大学院准教授がこう書いています。

 

 「運動単独で内臓脂肪を減少させるためには、少なくとも週当たり、10メッツ・時以上の有酸素性運動を加える必要のあることが、系統的レビューにより報告されています。」

 「有酸素性運動に該当するものであれば、ウォーキング、自転車エルゴメーター、ジョギング、水泳など、いずれの種目でも効果に大きな差はありません。」

 「減量するためには、1回に20分以上運動しないと脂肪が燃焼しないというようなことを耳にする方がいると思いますが、これまでの研究成果から、1日に30分の運動を1回行っても、10分の運動を3回行っても、両者の減量効果に差のないことが認められています。つまり、同じ運動であれば、その効果は総運動時間に対応するといえます。」

 「以上から、内臓脂肪減少のための運動には、有酸素性運動を用いて、週10メッツ・時以上の運動量を加えることを目標にするとよいと考えられます。」

 

       ◇   ◇   ◇

(注)

基礎代謝=何もせずにじっとしている時でも、体は心拍や呼吸、体温維持のために必最小限のエネルギーを使っており、この量をいう。10代をピークに加齢とともに低下する。適度な運動を続けることによって基礎代謝量が増えれば、太りにくい体質になる。

 

メッツ=運動強度の単位で、安静時を1とした時に比べて何倍のエネルギーを消費するかによって身体活動の強度を示したもの。

例えば、「平地でのやや速歩」は4.3メッツのため、これを1時間行えば、

    4.3メッツ×1時間=4.3メッツ・時

となる。

「健康づくりのための身体活動基準2013」(厚生労働省)によると、

「山を登る(4.1㌔以下の荷物)」6.5メッツ

「山を登る(約4.5㌔~9㌔の荷物)7.3メッツ

「ジョギング」7メッツ

「普通の歩行」3メッツ     など。

 

 

登山は脂肪の減量に効果あり~~山本教授~~

 鹿屋体育大学の山本正嘉教授は、平地でのウォーキングと、ハイキング(傾斜の緩いコースを軽装でゆっくり歩く登山)とで、体脂肪の減量効果を比べる実験をしています。その結果が教授の著書「登山の運動生理学とトレーニング学」(東京新聞に載っていますので引用しますと――。

 実験は①群=運動なしでダイエット(食事指導)だけ毎日実施するグループ

②群=毎日1時間の平地ウォーキングとダイエットも行うグループ

③群=週末に1日だけ5時間のハイキングと毎日のダイエットを行うグループ――の3つのグループに分け、1ヵ月間実施した。

 その結果、体脂肪率は、①群は変化しなかった。一方、②群と③群は、ほぼ同じだけ減少した。

 山本教授は「毎日1時間のウォーキングと、週末に1回だけ行うハイキング(登山)とは、脂肪の減量、つまりメタボリックシンドロームを防ぐうえで同等の効果を持つ。どちらを選んでもよいわけだが、平日は仕事が忙しくて運動する時間を確保しにくい人には、登山はうってつけの選択肢になるだろう」と登山の意義を強調しています。

 

 

 

 

登山の運動生理学とトレーニング学

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