北穂高岳で味わう至福のひと時

穂高連峰や丹沢を歩いて20年余り。見たこと学んだことを備忘録として書いています。

山の雑学~紫外線!山ガールの敵

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北穂高岳に咲く高山植物 (2018年7月27日撮影)

 日差しがきつくなってきました。紫外線が気になりますね。なにせ、肌の老化を早める原因となるのが紫外線ですから。

 北アルプスの穂高連峰に登るために上高地から涸沢に向かう登山者が、必ずと言ってよいほど日焼け止めを顔や腕に塗る場所が「本谷橋」を渡ったところです。休憩を兼ねています。時間をかけて塗り終わると、「さあいくぞ」。気合いを入れて登り始めます。

 

高い山ほど紫外線たっぷり!

 紫外線は、人間が太陽から浴びる光線の1つです。光には波長というものがあって、人間の目には「赤・橙・黄・緑・青・青紫・紫」の7色は見えるんですが、紫外線はこれら“可視光線”よりも波長が短く、見えないのです。見えないんですが、人体には「害」がある、というわけです。

 その紫外線の強さというものは、太陽から地球に着くまでの間に、少しずつ衰えます。それは地球のはるかかなた上空の成層圏にある「オゾン層」によって、吸収されるうえ、空気の分子や大気中に浮かぶゴミにぶつかって散乱するためです。

 ただ、山に登ると空気が薄くなるため紫外線は散乱しにくくなり、登山中の人が浴びる紫外線は強くなります。

 

 環境省がまとめた「紫外線 環境保健マニュアル2015」によりますと、高度が1000㍍上がると、浴びる紫外線の量は、10~12%増としています。

 つまり富士山(標高3776㍍)の山頂では、平地より40%ほど多く浴びるということです。

 また雪山では、雪が紫外線を強く反射するために、日焼けしやすくなります。

 

紫外線による「皮膚」への悪影響

  “紫外線”が人体に及ぼす影響について、専門家は紫外線の「波長」をさらに3つに分けて考えています。

 UV-A、UV-B、UV-C

です。

 

シワやタルミの原因

 UV-A(ULTRAVIOLET-A)紫外線A波

 地表に届く紫外線のほとんどがこれです。これが長い時間、肌に当たると、皮膚の表面だけでなく奥の“真皮”にまで達します。するとコラーゲンやヒアルロン酸などをつくり出す細胞を傷つけ、その結果として肌は弾力性を失い、シワタルミといった肌の老化が進みます。

 

シミの原因にも

 UV-B(紫外線B波)は、浴びる量そのものはごくわずかです。肌の奥にまで達することはありません。

 しかし、肌の表面に強く作用するために短時間で日焼けしてしまい、肌が炎症を起こします。それが2、3日後には黒くなります。

 これは皮膚の内部の色素細胞が紫外線の刺激を受けることによって、皮膚全体を守ろうとする防御機能が活性化し、「メラニン」という黒い色素を生成し、紫外線を吸収しようとします。

 普段ならばメラニンは肌の表面から“アカ”となって排出されますが、メラニンが多すぎるほど生産されてしまうと、皮膚内部にたまったままとなり、これがシミとなります。

 

 UV-C(紫外線C波)はオゾン層などで吸収され、地表には到達しません。

 

目にもダメージ

 目の「角膜」は、いわゆる黒目を覆っている壁であり、光をとり入れる窓でもあります。ここが紫外線(UV-B)にさらされると炎症を起こし、「雪目(ゆきめ)」という病気になります。“眼の日焼け”ともいわれるようです。

 角膜に光が当たっているうちは痛みを感じませんが、夜になると充血し、痛くてまぶしいという症状が出ます。1日か2日で治ります。

 ただ、何年も紫外線(UV-A)によってダメージを受け続けていると、白内障になることもあるようです。

 

紫外線の浴び過ぎ、を防ぐには?

 お役所(環境省)のマニュアル(前述)には、こう書かれています。

①紫外線の強い時間帯を避ける

②日陰を利用する

③日傘を使う。帽子をかぶる

④衣服で覆う

⑤サングラスをかける

⑥日焼け止めを上手に使う

とあります、

 この中で、登山で活かせそうなのは③以下でしょう。

 特に、⑤の「サングラス」で注意しなければいけないのは、色の濃いサングラスをかけると、目に入る光の量が少なくなるため瞳孔が普段より大きく開いた状態になる、ということです。紫外線カットが十分ではないレンズだと、かえってたくさんの紫外線を浴びることになる、ということです。

 

 

日焼け止めの成分は?

「散乱」か「吸収」か

 

 日焼け止めの化粧品が、どのように紫外線をカットしているのか、といいますと、

2つの方法があります。

 1つは、紫外線を「散乱」させるタイプ。もう1つは紫外線を薬剤で「吸収」するタイプです。

 

 紫外線を散乱させる対応では、使用される成分は主に「酸化亜鉛」や「酸化チタン」です。この粒子が紫外線を反射し、散乱させることによって、直接、肌に紫外線が届くのを防ぎます。

 ただ、肌に薄く均一に塗っても酸化亜鉛の粒子同士がくっついて大きな粒子になってしまうため、肌が白くなってしまうことがあります。

 

 一方、紫外線の吸収剤に使われる主な成分は、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」などです。これ自体が紫外線を吸収したうえで、紫外線のエネルギーを熱に変換したのち、放出します。これによって皮膚に紫外線が届くのを防ぐわけです。

 肌が白くならないという特徴がありますが、肌が敏感な人はまれにアレルギー反応を起こし、かぶれることもあるようです。

 

 日焼け止めの効果の表示

  日焼け止めの効き目は、商品に表示されている「SPF」と「PA」の数値で分かります。

SPFは、UV-Bを防ぐ指標です。

SPF=Sun Protection Factor 

 数値が大きい方が日焼け止めの効果が高い。

 

◆PAは、UV-Aを防ぐ指標です。

PA=Protection grade of UV-A

 PA「+」からPA「++++」までの4段階で標記され、「+」が多いほど日焼け止めの効果が高くなります。

 

登山者向きの「日焼け止め」は?

  紫外線は高い山に登るほど強くなります。どんな日焼け止めを使ったらよいのでしょうか?

 

SPF「30」、PA「++」程度

 日本山岳会医療委員会は、「山の救急医療ハンドブック」の中で、SPFは30程度、そしてPAについては「PA++以上」を選ぶよう指導しています。

 

 また、同委員会は日焼け予防全般について、次のように注意を促しています。

  「日焼け止め(クリーム)をこまめに塗ること。登山中は汗で流れやすいので、休憩のたびに塗りなおすのが望ましい。顔だけでなく、手の甲や腕、首筋、耳にも塗ること。唇の保護も忘れてはならない」

 「衣類を着用していること自体が、紫外線をカットしていることも忘れてはならない。なるべく肌の露出を防ぐように。暑い時はメッシュ生地の薄手長袖シャツを選ぶのも一考だ。つばの広い帽子をかぶれば顔への紫外線を防ぎやすい。首筋をバンダナで保護したり、襟付きシャツを着るのもよい」

 「紫外線は晴れの日だけでなく、曇った日や雨の日でも地上に届いている。曇りの日はUV-Bが50~80%、雨の日でも20~30%ある。UV-Aは雲を透過するので、90%以上が地上に届く」

 

野口いづみ委員長の解説

 日本山岳会医療委員会委員長の野口いづみ医師は、2019年7月9日に都内で行われた東京都山岳連盟主催の講演会のなかで、日焼け止めクリームについて次のような解説をしました。

 「SPFは最近50ぐらいのものも出ているが、30以上で効果は横ばいといわれる。屋外でもSPF30、PAは++程度でよい。PAは4プラスまで出ているが、強ければ強いほど皮膚に負担がかかると思われる」。

 

  参考にして山に向かいたいものです。

 

 

 

 

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