北穂高岳で味わう至福のひと時

穂高連峰を中心とした登山でみたこと、感じたこと、考えたことを備忘録として書いています。

どうして?人体の不思議~エネルギーはどこにある?

f:id:alps6717:20190629204347j:plain

涸沢テント場への遠い道 (2015年5月1日撮影)

 シャリバテとあんぱん

  登山で、脚を上げて前に進むには、エネルギーが必要です。

 神奈川県・丹沢山塊の塔ノ岳(標高1491㍍)。重さ10㌔超のザックを背負って昔ながらの皮の重登山靴をはき、毎時標高400㍍強のペースで登っていますと、2時間で急にペースが落ちてきます。シャリバテなんでしょうね。

 それでもベンチでザックを降ろし、あんぱんを2、3個、口に放り込むと、しばらくすると元気が出てきます。

 エネルギーは体の中の、どこでできるんだろう。調べてみました。

 

 「ブドウ糖」に、とりあえず注目

 昔から、エネルギーの元になりやすいのが「ブドウ糖」だとか、糖質だとか、いわれてきました。

 糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたもので、ご飯やパン、麺類に含まれています。「ブドウ糖」はその糖質の1つで、英語で「グルコース」といいます。

 しかし、ブドウ糖は、そのままではエネルギーとして利用できませんね。

 

 調べてみますと、ブドウ糖などの栄養素を体内で変化させてつくりだした≪ATP≫(アデノシン三リン酸)という分子が、エネルギーを製造しているようなんです。

 

 登山者の脚の筋肉が前に動くのは、体の中でつくりだされた≪ATP≫が分解する時に出るエネルギーが使われるようです。

 

「ATP」というのがカギらしい

  いきなり難しそうな話になってきました。ちょっと我慢を――。

 ATPというのは、アデノシン三リン酸のこと。人体の全部の細胞の中にあるそうです。約37兆個の細胞の中に。

 ATPは、アデノシンに3個のリン酸がくっついた化合物。身体運動をしようとする時には、3個目のリン酸が切り離されてADP(アデノシン二リン酸)に分解します。この分解する時にエネルギーが放出され、筋肉の収縮⇒関節の屈伸⇒脚の前進――という流れになるわけです。

 

  そしてリン酸を1個失ったアデノシン二リン酸は、食物を外部から摂取することによって、また、リン酸分子と結合し、ATPに戻るんです。これを「ATPの再合成」といいます。

 

ATPは何からつくられるの?

 炭水化物、脂質、タンパク質という源で3大栄養素すべてが、ATPをつくるためのエネルギー源です。人間はこれら栄養素を分解して、生きるため、そして動くためのエネルギーを確保しているのですね。

 

3大栄養素すべてから

  ご飯や果物に含まれる「炭水化物」は、小腸で分解され、ブドウ糖は小腸の細胞に吸収されたあと血流に乗って全身に送られます。

 そしてブドウ糖の一部は「筋肉」に蓄えられ、一部は「肝臓」にブドウ糖がたくさんつながったグリコーゲンとして貯蔵されます。

 「脂質」は低強度・長時間の酸素を使う運動の時の、ATPの原料になります。

 「タンパク質」もアミノ酸に分解された後、ATPをつくるためのエネルギー源になります。

 なお、3大栄養素の食品に含まれるエネルギーの量は、一般的に「キロカロリー」という単位で示されます。

 

 ATPは体のどこでつくられているの?

 ATP(アデノシン三リン酸)は、筋肉をはじめ、体のすべての「細胞」に蓄積されている分子です。

 このATPの分解によってエネルギーが発生するのです。

 私たちは登山をするためのエネルギーを得るために、ATPを分解してエネルギーを獲得するわけですが、同時に、その時にできるADPをATPに「再合成」し続けなければなりません。

 

細胞のミトコンドリアで生産

 もう少し細かくみますと、ATPがつくられる場所は、「細胞」の中の2ヵ所です。

 1ヵ所は、細胞を包んでいる細胞膜と核の間にある、海のように広い「細胞質」。

 もう1ヵ所は、細胞質という海に浮かぶ小舟のようなイメージの「ミトコンドリア」という細胞内の小器官です。このミトコンドリアは、1つの細胞に数百から数千個存在しています。

 人間の細胞は約37兆個といわれますが、このすべてにミトコンドリアがあるわけです。

 ミトコンドリアでATPの約95%が産生されています。

 

ATPはどのようにしてできるの?

 ATPが再合成(産生)される仕組みは、3種類あります。

【第1】酸素を使わずに、細胞質でブドウ糖を分解してATPを取り出す方法。

【第2】酸素を使って、細胞の中の「ミトコンドリア」という小器官でATPをつくり出す方法。

【第3】クレアチンリン酸の分解によるATPをつくる仕組み。

 

この3つのルートは、ATPを再合成するスピードや、つくる出す量が異なります。

 もう少し詳しくみます。

 

【第1】は、強度の高い瞬発的な運動をしている時の例で、筋肉の細胞に蓄えられているブドウ糖が段階的に分解され、ピルビン酸という物質にまでなった時、量は少ないですがATPがつくられます。これは「解糖系」という仕組みで、この化学反応には酸素は必要とされません。

 

【第2】は、細胞の中に多数ある「ミトコンドリア」という小器官の中に、ブドウ糖をはじめ脂肪酸やアミノ酸を取り込み、「酸素」を使って分解すると、最終的に二酸化炭素と水になります。その時、同時に大量のATPが合成されます。こうしてATPをつくる方法を「有酸素系」と呼んでいます。長時間の運動ではこれが使われます。

 

【第3】は、筋肉に存在する「クレアチンリン酸」が、クレアチンとリン酸に分解し、外れたリン酸をADPに渡すことによって、ATPをつくるという仕組み。これは他のATP合成に比べて、速度は最も速いですが、筋肉にあるクレアチンリン酸の量が少ないため、ATP合成はすぐに終わってしまいます。短距離走や重量挙げなど瞬発力を必要とする運動の時、これが作用します。

 

結論

 登山をすると、まずエネルギー源としてブドウ糖が優先的に使われます。が、やがて脂肪酸の利用が始まります。脂肪酸はミトコンドリアで分解されることによって二酸化炭素と水になります。ただし、運動強度が高くなると、脂肪酸ではなくブドウ糖の出番になってしまいます。内臓脂肪を減らすためには、汗をタラタラ流して必死で登るのではなく、ゆっくり登ったほうがよいようです。

 

 

 

 

1から学ぶスポーツ生理学【第2版】

1から学ぶスポーツ生理学【第2版】

  • 作者: 中里浩一,岡本孝信,須永美歌子
  • 出版社/メーカー: ナップ
  • 発売日: 2016/03/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る