北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

疲れないコツは笑顔と睡眠ですよ、という話

 疲労は、登山での疲れもふだんの生活で感じる疲れも、実は「脳」で起きているんですって。体で起きているのではなく!!!

 

 そんな指摘があるのです。そこで調べてみました。

 

目次

 

 

 

 

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  北アルプスで見かけた花 (2019年8月10日撮影)

 

 

疲れる原因は?

 疲れの原因はいろいろありますね。

 思いつくだけでも、

①働きすぎや激しい運動をした時

②騒音、睡眠不足、人間関係といったことでストレスが続いている時

③頭痛、肩こり、腰痛などの痛み

 

 

 

疲れの症状

 疲れるとどんなふうになるかというと、

①集中力がなくなって考えがまとまらなくなるなど思考力の低下

②外部からの刺激への反応の低下

③目覚めた時に脚がだるく、起きるのがつらい

④頭痛、腰痛、肩こり、目の疲れ

⑤登山中に脚がもう一歩、前に出ない

などなど。

 

 

 

疲労は体ではなく脳が疲れている状態

  こうした「疲労」について、「体の疲労ではないんだよ」と教えてくれるのは長年、疲労についての研究を続け、2006年に大阪市立大学大学院医学研究科に疲労医学教室を立ち上げた医師の梶本修身さん

 現在は、大阪市立大学大学院の疲労医学講座特任教授。著書「隠れ疲労」の中で、こう言い切ります。

 

 「すべての疲れの原因というのは、たったひとつしかありません

 「脳にある自律神経の中枢が疲弊することです

 

 “自律神経の中枢”というのは神経細胞がたくさん集まってできている「脳」の中の、「間脳(かんのう)」という場所の、その一部の視床下部(ししょうかぶ)」という領のことのようです。

 難しいですね。脳のその部分が疲れてしまった、というのです。

 

 

 

「神経」とは何でしょう

 ここで「神経」について大ざっぱにまとめます。

 「神経」というのは、脳と体の末端の手足の器官とをつなぐ糸のような器官です。末端が受けた刺激を脳に電気信号で伝えたり、逆に脳からの指令を末端の手足に電気信号で伝えます。

 

 「神経」は、頭蓋骨に囲まれた「脳」と、背骨の中を通っている「脊髄(せきずい)」、それと全身に「自律神経」「運動神経」「感覚神経」が行き渡っています。

 

 「感覚神経」は、例えば指先が氷に触れてしまった場合に、「冷たい」という情報を脊髄を経て脳に伝える神経のこと。

 「運動神経」は、脳が「走りたい」と考えた場合、「動け」という脳の指令を全身に伝え、手足が動きます。

 

 

自律神経って?

 では、ここで取り上げる「自律神経」は、その人の意思とは関係なしに24時間、呼吸や心拍、体温、血液循環、消化・吸収といった、人間が生きるために必要な生理現象をコントロールしてくれる神経、だそうです。

 

 

 

交感神経と副交感神経

 自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられます。

 交感神経は、背骨の中を通る脊髄という神経の束から、全身の内臓(心臓、肺、肝臓、胃、腸など)や器官(末梢血管、気管支、唾液腺など)にのびています。

 

 副交感神経は、脳の中の中脳(ちゅうのう)や、脳から脊髄への通路に当たる延髄(えんずい)から、内臓や器官にのびています。

 

 内蔵や器官の側からみれば、交感神経と副交感神経の両方の神経がのびてきており、両方の神経のコントロールを受けることになります。

 

 交感神経と副交感神経は、互いに相反する働きをしていて、車に例えると、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキです。

 

 

 交感神経は、主に朝から昼間にかけて、仕事や運動に緊張して取り組んでいる時に優位に働きます。心臓は心拍数が増えてドキドキし、心筋も大きく収縮して血液がタップリ全身に送られます。脚や腕の末梢血管は、血管の周りの筋肉の「血管平滑筋」が収縮して血管が細くなるため、血圧が上がります。

 

 

 一方、副交感神経は、主に夕方から夜間にかけてリラックスしている時に優位になります。すると、心拍数が減り、末梢血管の周りの筋肉が緩んで血管が柔らかく太くなり、血圧が下がります。

 

 

 つまり、交感神経が優位な状態が長く続くと、自律神経中枢の神経細胞を疲れさせることになります。

   

 交感神経と副交感神経のどちらかが優位になり過ぎないように、指令を出してコントロールし、シーソーのようにバランスをとっているのが、脳の視床下部です。

 

 

 

 

自律神経の酷使が疲れの原因

 「疲労」は自律神経の疲れによって生じます。自律神経の疲れはやがて、自律神経の司令部である「脳の視床下部の疲弊を引き起こします。

 

 梶本さんによると、カギを握るのは「性酸素」だといいます。

 

 

 

直接の引き金は「活性酸素

 活性酸素というのは、ほかの物質を「酸化」、つまりさびた状態にしてしまう力がたいへん強い酸素のことです。

 

 

 

疲労のメカニズム

 人間は、呼吸によってとり入れた酸素を使って、細胞の中で、糖質(ブドウ糖)から生きるためのエネルギーをつくり出していますが、その時に副産物として発生するのが「活性酸素です。

 細胞に運ばれた酸素のうち、2%ほどが活性酸素になります。

 活性酸素は殺菌力が強いために体内で細菌やウイルスをやっつけてくれますが、同時にほかの物質を酸化させてしまいます。

 

 「酸化」というのは、ほかの物質の電子を奪ってしまう反応です。電子を奪われた物質は不安定になり、機能を果たせなくなります。例えば、さびた釘や茶色に変色したリンゴの断面などは、酸化されたことによって生じる現象です。

 

 脳やせき髄を構成する細胞を「神経細胞と言いますが。神経細胞の中で、活性酸素の攻撃を受けやすい部分が「ミトコンドリア」という小さな器官です。

 

 ミトコンドリアは“細胞のエネルギー工場”と言われるように、口からとり入れた糖質(ブドウ糖)を、細胞の中で酸素を使ってエネルギーをつくり出すという重要な働きがあります。このミトコンドリア自身が、発生した活性酸素に攻撃されて傷ついてしまうと、自律神経の細胞も細胞機能が低下してエネルギーを産み出せなくなり、結果として「疲労」が起こる、というわけです。

 

 

 

 梶本さんはこういいます。

激しい運動や長時間のデスクワーク、強いストレスを感じるなどすると、酸素の吸入量が増えるとともに、活性酸素の量も一気に増え、細胞を守るシステムが処理できる量を超えてしまいます。そうしてあふれ出した活性酸素によって、自律神経の細胞がさびて傷つくことが、私たちが【疲れる】根本的な原因です

 

 

 

 

疲れをとるには睡眠が第一

 疲労を起こさない技術は、現在の医学では開発されていません。

 でも、「疲労」は痛みや発熱とともに3大生体アラームと呼ばれる警告信号であって、ほうっておくと死に至ることもあるようです。

 

 「一度発生した疲れ自体を回復させる手段は、今のところ質のよい睡眠をとることただひとつ。質のよい睡眠とは、前の日の疲れがスッキリととれた睡眠のこと。睡眠時間の長さではない」と梶本さんは言います。

 

 

疲れないようにするコツ

 梶本さんの助言をいくつが並べておきます。疲れないためのコツです。

①大きな音で目覚ましのアラームを鳴らさないこと。突然大きな音がすると、人間は動物同様、反射的に恐怖とストレスを感じ、自律神経に負担がかかって血圧が上がります。

②朝、太陽の光を浴びて、「セロトニン」の分泌を増やすのがお勧め。セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれる、脳内で働く神経伝達物質です。セロトニンには精神を安定させ、ストレスを軽減させる働きがあります。

③精神的なストレスは8割以上が人間関係に起因します。職場でストレスを感じる相手には、距離を置いたりコミュニティから外れれば、疲労も軽減できます。

④ストレス発生源の上司には、「仕方なく我慢する」のではなく。「この上司の相手をするのも仕事として給料に含まれているのだ」と、価値観を「お金」に置き換えて、自分を納得させることです。気分的に楽になります。

⑤横向きに寝る。すると、イビキをかかず熟睡できます。横向きに寝る場合、右側を下にするのが正解。そうすると胃の入口が上、出口が下になるため、重力によって胃の内容物が移動しやすくなり、自律神経の負担が減って疲労の蓄積を防げます。

⑥ウエストポーチを活用して、右側を下にして眠る。ウエストポーチが膨らむように中にタオルを入れ、ポーチを腰の後ろにくるように置きます。すると、寝返りを打って仰向けになりかけると、膨らんだウエストポーチで腰が圧迫されて違和感が生じ、すぐに元の横向きに戻ります。

 

 

 

笑いのすすめ

 自律神経研究の第一人者、小林弘幸・順天堂大学医学部教授が、著書「自律神経を整える【あきらめる】健康法」で、面白いことを言っていますので引用します。

 

「怒りや不安を覚えると副交感神経が下がりますが、ちょっとした動作で副交感神経を上げる方法があります。それは【笑い】です」

「私も実際にいろいろな表情をした時の自律神経の状態を計測、比較するという実験をしたのですが、心からの笑顔はもちろんのこと、たとえ作り笑いであっても、口角を上げれば副交感神経は上がるという結果が出たのです。こちらはまだ理論的には仮説なのですが、おそらくは、口角を上げるという動作が顔筋の緊張をほぐし、心身にリラクゼーション効果をもたらすのだと考えられます」

「私は、意識してやっていることがあります。それは診察の時、患者さんに笑顔で接するということです。私は日々、患者さんと接していて、“医者が笑顔でいる、つまり自律神経のバランスが整っているほど患者さんの治りが早くなる”ということを感じます。不安や恐怖で自律神経のバランスが乱れてしまった患者さんの自律神経をまず元に戻してさしあげる。その上で最善を尽くして、笑顔になって帰っていただく」

「笑顔をたたえ、マイナスな言葉は口にしない。これを実践していると、呼吸がゆっくりと深くなり、副交感神経を高め、自律神経のバランスを整えるのです」

 

 

質のよい睡眠をとる

 「過労死」が社会問題になっています。過労死は、働きすぎによるストレスが自律神経に変調をきたし、アクセルを踏み込んで交感神経が活発になりすぎるか、ブレーキである副交感神経が故障した状態です。

 交感神経は血管を収縮させるため、不整脈心筋梗塞脳出血などを起こしてしまうこともあります。

 脳に休息を与えるために、質のよい睡眠をとって、生活習慣も整え、自律神経のバランスを崩さないようにしたいものですね。