北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

コロナ禍~「N95マスク」医療用が足りない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、高度医療を担う全国の救命救急センターで、医療従事者が使う高性能の「N95マスク」が底をついてきました。危機的な状況です。

 

 日本救急医学会代表理事嶋津岳士・大阪大学教授と、

 日本臨床救急医学会代表理事坂本哲也・帝京大学教授の2人が4月24日、

日本記者クラブ主催の記者会見に出席して救急医療現場の窮状を訴えました。

 

 

 会見は、会見場には人を入れず、日本記者クラブと両大学をインターネット回線でつないで、視聴者(日本記者クラブ会員)のパソコンにライブ配信するという形式で行われました。

 

 以下は、両教授の発言要旨と、「N95マスク」をめぐる国内の動きのまとめです。

 

 

救急患者の中に「コロナ」感染者も!

坂本哲也・帝京大学教授の発言

 「外傷として受け入れた救急患者が、後で新型コロナウイルス感染症だったと判明する事例が増えつつある。そういう意味ですべての医療機関で無症状の新型コロナウイルスの患者が混在していても、院内で濃厚接触が起こらないように個人防護具が現場にいわたる必要がある。特に都市部では、今後、患者数が急速に増加していくことが考えられる」 

 

N95マスクが足りない!

嶋津岳士・大阪大学教授の発言

 「個人防護具が不足している。なかでも特に影響が大きいと思われるのが、高機能のN95マスクのひっ迫だ。これは日本救急学会のホームページにも載せているが、本来は使い捨てのN95マスクを、長時間使用したり、繰り返し滅菌したりして再利用している医療施設もたくさんある

医療者は不安を感じている。これは院内感染の増加にもつながるし、ストレス、ひいては離職、さらには救急医療体制の崩壊を促進させる重大な要因だと考えている」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【メモ】 「N95マスク」とは?

マスクには、いろいろな種類があります。

「布マスク」は昔から風邪をひいたときに使ってきた、ガーゼを重ねて作ったマスク。

今では一般的になった「不織布マスク」。

そして「N95マスク」これはフィルターの目が非常に細かいためにウイルスや微粒子の吸引を防ぐことができ、医療現場で飛沫(ひまつ)による感染予防に使われます。建設現場でも使用されます。

 

 「N95マスク」は、米国労働安全衛生研究所(NIOSH)規格に合格した高性能マスク。「N95」とはフィルター自体の性能を示すもので、

N95の「N」は、Not resistant to oil(耐油性なし)という意味。

 0.3㎛(マイクロメートル)以上の微粒子を、95%以上除去できる性能があることを示していま

 ちなみに、新型コロナウイルスは直径約0.1㎛の大きさ。このウイルスはN95のフィルターより小さいために防げないのではないかと思われるかもしれませんが、ウイルス粒子は周りに水分が付着してもう少し大きくなるため、侵入防止に全く効果がないとは言えません。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

嶋津岳士教授の発言

日本救急医学会が会員に対して行ったアンケート調査の結果から、いくつか声を紹介します。不足している物資については、こんな声です。

 『防護具の不足:サージカルマスクは週に2枚、N95は個人に1つで交換なし』

別の施設では、

 『マスクは2日に1枚、N95は1週間に1枚の交換となった。(消毒用の)アルコールも不足している』

など」

 

 

国は産業界に働きかけて!

坂本教授の発言

 「看護師も個人防護具の不足によってストレスを感じている。また、病院まで患者を連れてくる救急隊員も、個人防護具の備蓄が尽きてきて、1つのマスクを長時間使わなければならないという消防本部もあると聞いている」

 「個人防護具は多くを輸入に頼っているが、今は世界中で奪い合いとなって、なかなか日本が輸入することも難しい状況になっていると聞いている。また、輸入した物に粗悪品が混じっているという話も聞いている。ぜひ国から産業界に働きかけていただいて国産できちんとした品質の物を供給できるように働きかけていただいて、大至急、現場に行きわたるようにお願いしたい」

 

 

 

医師・看護師を守ってください!

島津岳士教授の発言

「N95マスクをはじめとする個人防護具は、自分たちの安全を守るために不可欠ですし、自分がひょっとしたら感染しているかもしれないという危機感を持つと、同居する家族、特に高齢者、妊婦、子供さんがいる人ですと、医療になかなか専念できないし、不安を抱えながら毎日の仕事をするようになる。安心・安全を促進するための1つとして、N95マスクをはじめとする個人防護具をぜひ、準備していただきたいと思う」

 

 

  ◇     ◇     ◇     ◇

記者会見は以上でしたが、企業に動きがあります。

 

経団連が呼びかけ

 日本経済団体連合会が4月13日に動き出しました。

 「N95マスク、DS2マスクなどご提供のお願い」と題する「お知らせ」をHPに掲載。

「医療現場ではN95規格やDS2規格のマスクが不足し、深刻な状況にあります」とし、

「製造や建設など産業の現場で防塵用として使用されることが多いことから、各企業の現場で一定量保有しておられるものと見込まれております。各社において保有しておられる、これらの産業用のマスクについて、予備等がございましたら、ご提供をお願いいたします」と、会員企業・団体に協力を求めました。

   (注)「DS2マスク」は厚生労働省が定めた国家検定に合格した防塵マスクで、N95と同等の効果を得られます。

 

 

企業が応じ始める

住友化学(株)は4月15日、緊急用に備蓄していたN95マスクを2万枚経団連を通じて医療現場に寄付することを表明。

 

リコージャパン(株)は4月21日、本社事業所近隣の「東京都済生会中央病院」と「国際医療福祉大学三田病院」に、N95マスクを1000個ずつ、計2000個を寄付した。川崎事業所で非常用の備品として保管していたもの。

 

DIC(株)は4月21日、備蓄していたマスク1万枚医療機関に寄贈した。このうち5000枚はN95マスクで、経団連を通じて厚生労働省に寄贈。今後、同省から感染症指定医療機関に順次配布される。残り5000枚は「ダチョウ抗体マスク」という”ダチョウ抗体フィルター”を組み込んだ不織布マスクで、マスク不足が特に深刻な医療機関に寄贈した。

 

▼(株)ブリヂストンは4月24日、同社とグループ会社の製造現場が保有しているN95マスクとDS2マスクを計2071枚経団連を通じて医療機関に提供する、と発表した。

 

 

 

国は「再利用」を勧める???

 厚生労働省は4月10日、これまで“使い捨て”とされてきたN95マスクについて、

「滅菌器を使うなどして再利用できます」という“事務連絡”を都道府県の衛生担当部局に発出し、各医療機関に周知をするよう指示しました。

 

再利用』には2つの方法がある、としています。

◆1つは、過酸化水素水プラズマ滅菌器を使うと、N95マスクの滅菌と再利用ができる。ただし、再利用は2回までとする。

◆もう1つは、1人に5枚のN95マスクを配布し、5日間のサイクルで毎日取り換える再利用法。これは新型コロナウイルスは、プラスチック、ステンレス、紙の上では、72時間しか生存できないということが報告されていることから、N95マスクを1人につき5枚配布するとともに、使用したものを通気性の良い、きれいなバッグに保管し、毎日取り換えて5日間のサイクルで使用すること。

 さらには、N95マスクについて

必要な場合は、有効期限にかかわらず利用すること

「複数の患者を診察する場合に、同一のN95マスクを継続してしようすること」

などと書いています。

 

 苦肉の策、なんでしょう。しかし、ここまで政府が追い詰められてきたのかと思うと、背筋が寒くなります。

 

 

 

国内で医療用マスク生産を――日本医師会

 日本医師会の横倉義武会長が、興味深い発言をしました。4月15日の定例記者会見です。

 「N95マスクについては認証ハードルが高く、需要がピークを過ぎれば過剰設備となる懸念から、企業が国内生産に慎重になっていると言われているが、新型コロナウイルス感染症が収束しても、いつ次の感染症が発生するか分からず、N95マスクの国内生産は必要である。感染症の危機に備え、国内生産に国費を投入することは、国民の理解も得られるのではないか」。

 

 これには全く同感です。

 

 新型コロナウイルス感染症とは、相当長い間、付き合わなければならないでしょう。

国内の企業にN95マスクの生産をしてもらい、仮に生産が需要を上回るような事態になった時は政府が責任をもって買い上げ、備蓄などに回すなどの対処方針を打ち出すべきだと考えます。