北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

丹沢のブナの原生林(鍋割山稜)を正月に歩いた(2021年)

 「コロナ禍」で首都圏の1都3県に緊急事態宣言が首相から出されたのを受けて、東京都知事1月8日以降不要不急の外出の自粛を都民に要請しました。

 その直前の1月6日、控えめに神奈川県・丹沢のブナの原生林を歩いてリフレッシュしてきました。

 

目次

 

 

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 塔ノ岳(標高1481㍍)の山頂。日本海側と違って、雪は積もっていません

ここは100年近く前までは、山頂一帯がブナの大木に覆われていました。

 

 

 

山行記録

★登山コース

 大倉バス停(標高291㍍)~金冷やし~塔ノ岳(標高1491㍍)~金冷やし~

鍋割山(標高1272㍍)~金冷やし~大倉バス停

 

★歩行時間  8時間30分

★歩行距離  18.4キロ

★標高差  1200㍍

★ザック  10キロ

 

★コースタイム

 大倉バス停(7:40)~金冷やし(10:35)~ (10:58)塔ノ岳山頂(11:13)~金冷やし(11:30)~大丸(11:42)~小丸(12:05)~(12:31)鍋割山(12:41)~小丸(13:10)~大丸(13:35)~金冷やし(13:45)~大倉バス停(16:10)

 

 

 登山者はこの日、数十人だったでしょうか。

 3ヵ月ぶりに山を歩いて、バテバテです。

 

 

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 塔ノ岳への登山口、大倉バス停のトイレ。門松が地味に飾られていました。正月なんですよね。世の中、沈んでいますが。

 

 

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 大倉尾根の山小屋「堀山の家」(標高950㍍)の前のしめ飾り

 

 

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 これは塔ノ岳山頂に立つ山小屋「尊仏山荘」の入り口のしめ飾り

 

 

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 塔ノ岳山頂。気温はマイナス3度。積雪はありません。

 

 

 

 大倉バス停から塔ノ岳山頂に通じる大倉尾根は、別名・バカ尾根。品のない言葉ですが、ダラダラといつまでも登りが続くだけで変化が乏しいために、そう呼ばれています。塔ノ岳へのメインルートです。

 

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 金冷やし。

 

 ブナの原生林を見るには、塔ノ岳から大倉尾根を下山するルート上の、「金冷やし」から西に入ります。

 ここから西は≪鍋割山稜(なべわりさんりょう)≫と言います。鍋割山(なべわりやま)までブナの原生林を楽しみながら歩くルート。所要時間は片道1時間。木道や階段が多いです。アップダウンがあり、決して平たんではありません。帰りは疲れます。

 

 

 

衰退が進むブナ林

ブナ林が美しい大丸

 

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 大丸付近です。標高は1386㍍。

 

 

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 いい感じです。

 

 

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 倒木もありました。台風の影響でしょうか。

 

 

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 倒れた木がところどころに・・・。

 

 

 

鍋割山荘

 

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 1時間歩いて見えてきたのが、鍋割山の山頂に建つ鍋割山荘(なべわりさんそう)です。

 

 この小屋の主は、山の世界では知る人ぞ知る草野延孝さん。御年72歳。

 重さが50㌔から100㌔にもなるプロパンガスや食材を背負って、週に何回かふもとから山小屋まで担ぎ上げる歩荷(ぼっか)さんです。

 

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 山小屋の入り口には、「鍋焼きうどん 1500円」という看板が掛かっていました。ここの名物で、登山者10人近くが外で食べていました。

 

 

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 鍋割山の山頂です。小屋の前です。

 

 

 

丹沢のブナについての話

 ブナは北海道から鹿児島まで見られる落葉広葉樹。雄大で美しいその姿から「森の女王」とか「森の母」なんていうこともあるようです。

 

 名前の由来ですが、ブナ林を風が通り抜ける時に「ブーン」という音がするとかで、「ブーンと鳴る木」→「ブナ」と呼ばれるようになった、というもっともらしい話もあります。

 

 

 

立ち枯れは50年前から

 丹沢でブナが生育する標高は、800㍍以上で、丹沢山塊の最高峰の蛭ケ岳(標高1672㍍)の山頂にまで分布しています。

 ただ、まとまった「ブナ林」は、標高1000㍍以上の稜線や南向きの斜面でみられるとのことです。

 

 ブナ林の立ち枯れは、半世紀前の1970年代から、 蛭ケ岳から丹沢山にかけての1400㍍を超える稜線で始まり、森林が消えた・・・。そして草がそのあとに生えてきて、近年は草地の面積が増えているとのことです。

 

 

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 写真は、塔ノ岳と丹沢山(標高1567㍍)との間にある竜ケ馬場(りゅうがばんば)付近。立ち枯れたブナが倒れ、笹原が広がっています。

                     (2016年1月10日撮影)

 

 

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 写真は、丹沢山の山頂。ここもブナが枯れてしまいました。

                     (2016年1月10日撮影)

 

 

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 塔ノ岳山頂。ここも以前は一帯がブナの大木に覆われていたことを示す写真を、神奈川県のHPで見たことがあります。

 が、いまは赤土で小さな岩や石ころがゴロゴロしています。

 ブナが立ち枯れしたことで、富士山はよく見えますが・・・。

 

 

 

立ち枯れて草地になった原因は?

 ブナ林が衰退していく原因は、「丹沢大山総合調査学術報告書」(神奈川県)をめくってみますと、3つあるようです。

 

第1に、大気汚染。光化学スモッグの主成分のオゾンが、ブナの成長を阻むとのこと。

第2に、温暖化傾向で雪が少なくなり、ブナ林が乾燥してきたこと。ブナは比較的浅い土の層のを吸い上げていますが、土の表面が乾いてきていることも原因と考えられるようです。

第3に、ブナハバチの大量発生。このハチの幼虫はブナの葉を好んで食べるため、被害を受けたブナの木は葉がほとんどなくなってしまうようです。

 

 

対応は?

 神奈川県は「うっそうとした健康なブナ林の再生」をスローガンに掲げて、ブナ林を再び産み出そうと奮闘しています。

 ブナの苗木を植えたり、その苗木がシカによって食べられないように柵で囲ったりと。

 ブナの林がなくなって、土がむき出しになると、土砂崩れも起こりやすいし、洪水も発生しやすくなります。 

 とにかく、きれいなブナ林が確実に消えていくというのは、まずいです。