北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

伊豆大島で土石流でも生き残ったローカルテレビ局の中継用鉄塔

目次

 

 

台風の土石流で被災

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 土石流で崩れ落ちる一歩手前だった放送施設

 

 

 なんだ、この写真は・・・と思われるかもしれません。山で土石流が発生して、足元を洗われそうになった建物です。

 

 この施設、静岡県のテレビ各局がお金を出し合って、それぞれ電波を発射するために建てた鉄塔です。中継局」という施設です。

 

 現場は、東京都という区分に入るの伊豆大島三原山の中腹、御神火(ごじんか)スカイライン沿いです。「静岡県」ではありません。

 

 

 2013年10月16日、台風26号の影響で、中継局が崩れ落ちそうになったんです。

 1年後の2014年9月19日に撮った写真を記録として載せました。

 

 

 

 

 

「中継局」って何なの?

 唐突に“中継局”といわれても、なんなのソレ、何を中継するの、ですよね。

 

 

 東京キー局にしろ、地方テレビ局にしろ、制作した番組の映像や音声、文字は、電気信号に変換されて、送信所(親局といいます)に送られます。

 

 そして送信所の大きな送信機が発射する電波に番組が乗って各世帯に届けられます。その時、途中に高い山やビルがあると電波はさえぎられます。そこであちこちの山頂などに建てられるのが中継局なんです。

 中継局は「電波」を中継します。

 

 

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 これが崩れ落ちそうなった伊豆大島の「中継局」です。

 

 

 

 中継局は、「局舎」と「鉄塔」でワンセットになっている施設です。

 

 「局舎」は無人の設備。中には、小型の送信機など無線通信設備、発電機、燃料、蓄電池、室温を一定に保つためのエアコンなどを置いています。

 

 

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 「鉄塔」には、送信アンテナと、信アンテナ取り付けます。

 

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 写真上の直方体が送信アンテナ、下の丸いのが受信アンテナです。

 

 

 

 

どうして静岡のテレビ局が東京の伊豆大島に鉄塔を?

 

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    (グーグルマップから拝借)

 

 あまり例がないですよねえ。自分の県内だけに放送するのに、中継局を県外に置くなんて。

 

 政府はテレビ放送について、

「情報を電気信号に変換して伝える」アナログ放送2011年7月24日に終えて、「情報を数字で表す」デジタル放送という方式に情報を伝える仕組みを変えたのです。

 

 

 その結果、アナログ放送時代は静岡のローカルニュースや情報番組を受信できたのにアナログとデジタルという電波の性質の違いからテレビ番組を見ることができなくなったという世帯が発生しました。

 静岡県伊豆半島東側の地域東伊豆町全域と伊東市下田市河津町の一部地域、1万4141世帯です。

 

 この救済案として、伊豆半島の山中に2、3カ所、新たに鉄塔を建てて中継局を新設する考えも出ましたが、ばく大な額の出費を強いられるために、却下。

 静岡県からはみ出して、東京の伊豆大島から電波を打ち返す格好にしたら比較的安くできるだろう、となって、この案が採用になりました。

 

 

 

 

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 (総務省関東総合通信局のHPより引用)

 伊豆大島に建てる中継局の名前は、伊豆東海岸中継局に。

 

 

 

テレビ放送が家庭に届く仕組み(静岡県を例に解説)

  

 ところで、

 静岡県のテレビ各局が制作した番組の映像や音声、文字は電気信号に変換されて静岡市内の各局敷地内の鉄塔のアンテナから、親局と呼ぶ日本平山頂に共同で建てた電波塔の中の各局の送信機、各局が独自に「マイクロ波帯の周波数を使った無線回線」か「光ファイバー回線」で送られます

 

 各テレビ局の番組は、日本平でそれぞれの局の送信機で電波に乗って発射され、いくつかの中継局を経て各世帯のアンテナに届くのです。

 

 

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 静岡市の高台の「日本平(にほんだいら)」に各社が協力して建てた送信所

 

 

 

成した中継局が被災

 伊豆大島の中継局は、2012年7月、静岡県内の民放4局とNHK静岡局が、総務省の関東総合通信局に「伊豆大島に中継局を新設するための免許申請書」を提出。

 2013年1月25日に免許状が関東総合通信局から「付与」され、1月29日から、伊豆半島の東側の世帯も静岡のニュースや番組を視聴できるようになりました。

 

 テレビ番組は、静岡市内の各局社屋から日本平の送信所に送られ、そこから伊豆半島の2つの中継局、さらに伊豆大島の中継局を経て、伊豆半島東海岸の各世帯に届くようになったのです。

 

 

 

土石流発生!

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土石流の跡。上の写真上部の「白い建物」が、中継局の施設   

                 (全国治水砂防協会HPから借用)

 

 

 

 2013年10月16日、台風26号の影響で土石流が発生、たくさんの死者・行方不明者が出ました。

 中継局は、付近一帯の電柱が倒れて停電した後は、非常用発電機が作動しましたが、土砂が局舎のドアを壊して入り込んできて発電機も停止。NHKが独自に用意していた非常用発電機を使わせてもらって、仮復旧しました。

 この間、35時間56分も停波し、伊豆半島東海岸の皆さんはテレビを見られなくなりました。(「放送停止事故」として総務省に発生状況を報告するよう求められました。)

 

 

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 土石流・・・

 上の写真ど真ん中の白い建物が、テレビの「中継局」。

 

 

 

1万世帯余りぐらい、放っておけばよい?

 1万4000世帯ぐらい、無視しておけばいいじゃん、という声もありました。

でも・・・そうはいかないんですよね。

 

 

民放は、その放送対象地域において、その地域の住民がその放送を「あまねく受信できるように努めるものとする」というふうに法律に書かれていて、民放にはみんなが受信できるようにする≪努力する義務≫があるんですね。(放送法第92条)

 

NHKに対してはもっと厳しいです。テレビ放送が「あまねく全国において受信できるように措置をしなければならない」と、≪義務≫づけているんです。(放送法第20条第5項)

 

 

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放送免許は総務省から与えられるもの!

 日本ではテレビ事業を営むには、「免許」を総務省からもらう必要があります。

 

 総務省、テレビ局から提出された審査資料(事業計画、事業収入見通し、電気通信設備など)を審査して、電波法などに照らして問題がないと判断すれば、有効期限5年免許を放送局に「与えて」います

 

 放送局側は5年ごとに、再免許の申請をしています。

 

 同じ“マスコミ”とはいえ、放送局という業種は、自由にものを言える新聞社や出版社とは立ち位置が違うんですね。

 テレビ放送用に割り当てられる電波の周波数は限られていて、誰でも希望すれば与えらるわけではなから、権力のチェックを受けるのはやむを得ないか・・・。

 

 

 

放送局が総務省を接待???

 

 コロナ禍の最中の昨年末、放送の許認可を担当する総務省情報流通行政局秋本芳徳局長総務省高級官僚4人が、個別に「衛星放送関連会社に勤める菅義偉首相の長男」の誘いで会食し、秋本局長が帰りに長男から受け取ったタクシーチケットを右手に持って見つめ、左手で手土産いるの紙袋ぶら下げた写真が、「週刊文春」で報じられました。

 

 首相の長男の狙いが何なのかは、あまりに情けなくてアホかと思いますが、

気になるのは官僚ががん首そろえて誘いに応じたのはなぜか――。

菅首相への「忖度(そんたく)」でしょうか?

 

 

 あ然とするのは、招きに応じた総務省の秋本局長の衆院予算委員会での説明。

「当初、会食の)出席者の中に利害関係者はいないと認識しておりましたため、自己分の負担を行っておりませんでした」と答えたのです。

 

 高級官僚たちは、ふだんからごちそうになるのが当たり前になっているのではないだろうか。

 

 国家公務員は、許認可の相手方である利害関係者から飲食などの接待を受けることは禁止されています。

 腐ってますな。