「知床旅情」や「霧の摩周湖」という歌がヒットした1960年代後半、私は愛知県の片田舎の中学生か高校生でした。北海道を旅行してみたいなあ、と思ったものです。
長い年月が経って、2015年夏に知床岬を船の上から眺めました。
摩周湖にもその2年前の2013年夏に足を運びました。
その時の写真中心の記録です。
目次
知床岬を観光船から見た
“シレトコ”の語源
「知床」という言葉から受ける感じは、ロマンチックで心地よいですよね。
「知床」はアイヌ語では「シリ・エトク」。「陸地の突端部」という意味だそうです。
原生林があって、そこにはヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、エゾリス、オジロワシ、オオワシといった野生の動物が生息しています。
シマフクロウという絶滅が危惧される希少動物も生活しています。
立ち入ることはできないけれど、ロマンを感じさせる地です。
世界自然遺産に登録
かもめは何を思う・・・向こうに見えるのは国後島 (羅臼の港で撮影)
「知床」は2005年7月17日に世界自然遺産に登録されました。
区域
遺産に指定されている区域は、ウトロと羅臼(らうす)を結ぶラインあたりから知床半島の先端の知床岬までの森と、沿岸から3キロの海域です。
登録されたわけは?
理由は3つです。
①流氷がもたらす恵みが海から陸へと生命をつなげるという生態系があるということ
②非常に少ない動植物が生息・生育している地域であるということ
③それらを保護管理する体制が自治体や住民の協力で整っていること――です。
知床は流氷が押し寄せる北半球でいちばん南の海域。流氷の塊の中にいる「植物性プランクトン」は春になると海に溶けだし、「動物性プランクトン」が植物性プランクトンをエサにして増殖し、動物性プランクトンを狙って小魚が集まる。そして小魚よりひと回り大きな魚、それを狙ってもっと大きな魚が食べる。トドやアザラシも食べる。海を回遊してきたサケやカラフトマスはふるさとの知床の川を遡上し、ヒグマやオジロワシのエサとなる。ヒグマの食べ残しをキツネや鳥が食べ、サケの死骸は土にかえって原生林の栄養になる、という生態系です。
もう一つの生物多様性という点は、地球から絶滅が心配される動物や植物がいくつかここで見られること。シマフクロウ、オジロワシ、シレトコスミレなどなど。ヒグマやエゾシカ、トド、アザラシが多数生息していることも評価されました。
同じ世界自然遺産でも屋久島のように「自然美」が評価されたわけではありません。
知床五湖でまず、自然を満喫
2015年8月9日、北海道・女満別空港からウトロに入りました。
まず、知床五湖を回ろう、ということでハイキングを楽しみました。
「五湖」。
知床五湖は、手つかずの原生林の中に点在する5つの湖です。
ハイキングコースが整備されていて、知床連山をながめながら、原生林の一角に足を踏み入れることができます。5つの湖をすべて回るコースは約3キロ。1時間半ですね。
「四湖」です。
五湖から四、三、二、一と順番にゆったり回ります。
「三湖」 です。
これは「二湖」。
そして「一湖」。写真真ん中の高い山は、羅臼岳です。
「一湖」の先は木道になっています。木道入り口のドアを開けて、階段を上ります。
「高架木道」と名付けられています。地面から3~5メートルほどの高さのところに木道が設けられていて、散策するコースです。
木道の端っこには7000ボルトの高圧線が張り巡らされていました。ヒグマが上ってこないように、という願いです。
木道のところどころには展望台があって、知床連山をながめて息抜きできました。
写真左端のとがった山は硫黄岳。右端のどっしりした山は羅臼岳。
知床クルーズ
8月10日、観光船に乗って、海から知床半島の断崖絶壁や滝をながめるクルーズに出かけました。
大型観光船「おーろら」
ウトロから知床岬沖まで往復します。所要時間は往復3時間45分。1日1便でした。
クンネポール
岩にいくつもの大きな穴が開いています。海の洞窟ですね。アイヌ語で「黒い洞窟」。流氷が削り取ったんでしょうか。
カムイワッカの滝
この滝の水には硫黄分が含まれているそうです。滝の上流には観光スポットの「カムイワッカ湯の滝」があります。
カムイワッカの湯の滝には、近くまで道があるため車で行けますが、こちら、「カムイワッカの滝」は海上からのウォッチングです。
チャラセナイの滝
滝の下に「番屋」があります。
番屋は、漁師さんがサケやマスの漁をするために寝泊まりしたり、作業をするための小屋です。海岸沿いに点在していました。(ヒグマも周囲にいるはずですが、このクルーズでは気付きませんでした)
漁師さんは春から秋までここで過ごし、番屋の前に定置網を仕掛けているそうです。
知床岬灯台
灯台です。
知床岬は、知床国立公園の特別保護地区に指定されていて、岬の周りに一般観光客が利用できる歩道はありません。
岬の先端部に、船を使って一般観光客が上陸することは、自然環境保護という観点から認められていません。
これは地元の森林管理局、海上保安部、自治体、漁協などによる「知床岬地区の利用規制指導に関する申し合わせ」(1984年)によるものです。
船上から半島の景色をながめたり、原生林の奥に生息する野生動物に思いをはせることになります。
ウトロを出て、1時間半すぎると、こんな風景になります。知床岬です。
船上から知床岬を見ると、高台の上から空に向かって突き上げているものが目に入りました。
知床岬灯台です。(写真右端)
灯台は、円柱でコンクリート造り。白地に黒い帯が2本塗られています。
灯台の高さは12メートル。海面から灯火(レンズ)までの高さは102メートル。
1963年10月に初めて明かりがともりました。
以後、半世紀以上、沖に向かって光を放ち続けています。
観光船はこの位置で折り返しです。船内では、「知床岬視察証明書」と書かれた郵便はがきをが乗客にプレゼントされました。(上の写真左)
知床峠
知床峠は、ウトロ(斜里町)と羅臼町を結ぶ国道の途中にある峠です。
8月11日に、ウトロからバスで羅臼に向かう途中、下車しました。
峠の標高は738㍍。
目の前には、羅臼岳(標高1661㍍)。
羅臼
羅臼国後展望塔
国後島を一望できる羅臼国後展望塔は、標高167メートルの高台にありました。
かなたに国後島。
眼下には、羅臼の港。
知床連山も見えます。
左から、羅臼岳、三ツ峰、雲がかかったサシルイ岳、右端がオッカバケ岳。
羅臼の街並み
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霧の摩周湖をのぞいてみた
摩周湖のこと
2013年8月11日、摩周湖をみるため、JR摩周駅で下車しました。
第一展望台からのながめです。摩周湖の湖面は、標高355㍍にあります。
火口が陥没してできた水たまり
摩周湖。 (2013年8月11日午後5時撮影)
摩周湖は、火山が噴火して大量のマグマが噴き出した後、火口部が陥没してくぼ地になり、そこに水がたまってできました。
摩周湖には注ぎ込む川はなく、雨と雪解け水が水源ですので、透明度は日本一。そのうえ水深が一番深いところで212メートルもあります。
カムイシュ島
摩周湖の真ん中に頭を出して浮かぶのが、カムイシュ島です。
水深200㍍超の湖底から噴き出した火山の頂上だそうです。
湖の東岸(上の写真の右端)は、カムイヌプリ(別名:摩周岳、標高857㍍)ですが、この日は雲が低く垂れこめていて山頂部は見えませんでした。
(北海道庁のホームページから借用)
摩周湖の青さの秘密
摩周湖の湖面は、摩周ブルーと呼ばれます。吸い込まれそうな神秘的な色ですね。
どうしてこんなに青いんでしょう。
答えは、太陽の光のうち、赤い光が水に吸収されるからなんです。
ちょっと理屈っぽくなりますが、
太陽の光は実は、波長が異なる色が混ざっているのです。波長が長いものから順に、赤→オレンジ→黄→緑→青→藍(らん)→紫と短くなっていきます。
太陽の光は水に入ると、波長が長い色ほど水の分子に吸収される性質があるそうなんです。
だから波長が長い赤やオレンジは、水中を進むにつれて水の分子に吸収されて弱くなり、波長が短い紫や青が水中を進んでいきます。ただ、人間の目には紫や藍はみえにくいために「青」だけが見えるというわけです。
水深が200㍍になれば濃い青に見え、さらに数キロの深さになれば光自体が届かなくなって真っ暗です。
翌8月12日も摩周湖に行ってみました。でも、霧で湖面も山も見えませんでした。
「霧の摩周湖」でした。