北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

九州の旅~観光列車「或る列車」に乗った(下)

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 JR矢岳(やたけ)駅構内に展示されているデゴイチ

 

目次

 

 

 「或る列車」という奇妙な名前の観光列車の乗った翌日の2017年7月16日(日)、鹿児島から熊本に向かって、JR九州の別の観光列車に乗りました。

 

特急「はやとの風

普通「いさぶろう・しんぺい」

特急「かわせみ やませみ」

です。

 

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特急「はやとの風

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 JR鹿児島中央駅に停車中の特急「はやとの風

 

 

 午前9時26分、特急「はやとの風」は鹿児島中央駅を出発して終点の吉松駅に向かいました。

 2両編成です。

 

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 外観は、往年のSLをほうふつとさせるツヤのある漆黒で、シックな感じ。

はやとの風≫と金色の文字で書かれたロゴが輝きます。

 

 

 

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 2004年に運行を始めた観光列車です。

 

 

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 桜島・・・。鹿児島中央駅を出てしばらくすると、右手の錦江湾(きんこうわん)のキラキラした水面の向こうに、雄大桜島が見えてきました。好天に恵まれてラッキーでした。

 

 重富という駅近くまで、車窓から桜島を見ることができました。

 

 

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 これが「はやとの風」の車内です。

 イスや床に気が使われて、ぬくもりを感じさせます。

 

 

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 車両の中央は大きな窓に向かってイスが並ぶ展望スペース。テーブル付きです。窓は上に向かって湾曲していて、沿線の風景をたっぷり楽しめます。

 

 

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 奥はトイレです。

 

 

 

明治の駅舎が残る「嘉例川(かれいがわ」駅

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 「嘉例川」という名の駅に、5分ほど停車しました。

 

 

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 観光客に、駅舎を見てもらうための停車です。

 

 

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 無人の木造駅舎。

 

 

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 「明治36年1月15日」、1903年に営業開始とか。築100年以上です。

 

 

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 駅開業100周年を祝う「記念碑」が建っていました。

 

 

 

戦争の傷跡が残る「大隅横川(おおすみよこがわ)」駅

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 大隅横川駅にも停車しました。

 

 

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 無人駅ですが、自転車が写ってますね、特産物を観光客に売りに来た近所の人でしょうか。

 

 

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 駅舎は、「明治36.1」とあります。こちらも築100年以上。

 

 

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 駅のホーム側に戻ると、柱に穴が開いているのに気付きました。「機銃掃射の跡」と書かれています。

 

 

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 説明文には、こう書かれています。

「第二次大戦中に被災した機銃掃射の跡です。弾は屋根、柱を貫通しました。」

 こんな山の中の駅舎にまで米軍戦闘機は攻撃してきたのか、と驚きました。上空から蒸気機関車の煙でも見えたのかしらん、と想像してしまいます。

 

 

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 午前11時11分、吉松駅に着きました。

 

 

 

いさぶろう・しんぺい

 

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 JR吉松駅に停車中の「いさぶろう・しんぺい」です。

 車両は、深みのある赤色、といったところでしょうか。

吉松人吉の間で運行されます。

 

 

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 「いさぶろう・しんぺい」は同じ車両ではありますが、列車名は吉松行きが「いさぶろう」人吉行きが「しんぺい」という名になる珍しい列車です。

 

 「いさぶろう」は肥薩線(ひさつせん)の建設に貢献した当時の逓信大臣・山縣伊三郎に由来し、「しんぺい」は鉄道院総裁・後藤新平の名前をとったそうです。

 

 

 

 

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 私が乗ったのは人吉行きの「しんぺい」です。

 車内は、こげ茶色でシックな雰囲気。普通列車だからなのか、席はボックスシートでした。

 

 

 

スイッチバック走行する「真幸(まさき)」駅

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 JR真幸(まさき)駅=宮崎県えびの市=に停車しました。

 真幸駅スイッチバックです。急斜面を上るために、線路がジグザグに敷かれています。

 

 

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 「せ」と書くこの駅は、ホーム中央の赤い屋根の下に「幸せの鐘」が吊り下げられていて、観光客が鐘を鳴らしています。幸せになるそうです。

 

 

 

 吉松(上の地図の下側)から人吉(地図の上方)に向かう列車は、えびの高原線(=肥薩線の愛称)を真幸駅にそのまま進んで停車します。発車時刻になると、スイッチバックが始まります。駅ホームからそのまま前進するのではなく、バックして本線に引き返します。そして今度は駅の上側(上の地図では駅の左側)に取り付けられている線路で山を上っていきます。これがZ型のスイッチバック走行です。

 

 「いさぶろう・しんぺい」はワンマンですので、進行方向が変わるたびに運転士が通路を行き来します。

 

 

 

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 真幸駅の駅舎。木造かわらぶき平屋建て。1911年(明治44年)開設時のままの姿です。

 

 

 

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 スイッチバックでいったん離れたホームを、また上の線路からホームを見ると、駅舎で特産品を売っていた地元の方々が手を振って見送ってくれていました。

 

 

 

 

SLが残る「矢岳(やたけ)」駅

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  JR矢岳駅。

 

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 矢岳(やたけ)駅は、肥薩線の中でいちばん高い場所(標高537㍍)にある駅。明治の開業当時に建てられた駅舎が今も使われています。

 

 

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 矢岳駅構内にある「SL展示館」。国鉄D51形蒸気機関車が展示されていました。愛称、デゴイチです。

 

 

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 「しんぺい」が停車中の数分間に、観光客はSLや駅舎をながめていました。

 

 

 

ループ線上にスイッチバックがある「大畑(おこば)」駅

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 真幸駅の次(矢岳駅)の次が大畑(おこば)駅です。

 大畑駅は日本で唯一、ループ線の途中にあるスイッチバック駅。鉄道ファンに人気の秘境の駅です。

 

 

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 ループ線とは、線路を輪のような形にして、傾斜を緩やかにする工法。高低差の大きい場所を通過するための1つの方法です。

 近年は長いトンネルを掘る技術の進展で、ループ線を造ることはないようです。

 

  

 

 吉松(上の地図では下)から人吉に向かう「しんぺい」は、大畑駅に近付くと右回りするループ線に入り、ぐるりと回り終えたらいったん停車。次はバックで大畑駅に入線して停車します。そして発車時刻になると通常の運転通りに前に進んで、人吉方向(上の地図では左方向)の線路に入ります。これが大畑駅でのスイッチバックです。

 

 

 

 

大畑(おこば)駅に名刺を残すと出世する?

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 大畑駅の駅舎の壁やドア、窓ガラスに、ペタペタとはられている名刺。なんでしょう・・・、この現象。

 いつのころからか、自分の名刺をここに張ると出世するとかいわれるようになったとか。

 

 

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 訳も分からないまま、だれかがすれば、ついていく、同じことをする・・・なんなんでしょう。

 

午後1時05分、人吉駅熊本県)着。

 

 

 

 

特急「かわせみ やませみ」

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 JR人吉駅で、乗ってきた「しんぺい」(赤)と、これから乗る「かわせみ やませみ」(青と緑)が並んでいました。

 

 特急「かわせみ やませみ」人吉と熊本を結ぶ観光列車です。

 午後1時20分、人吉を発車しました。

 

 

 

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  (途中駅の坂本駅で撮影)

 

 「かわせみ やませみ」は2017年3月からデビューした観光列車。球磨川(くまがわ)沿線を走ることから、流域に生息する野鳥のカワセミとヤマセミを列車の名前にしています。

 2両編成です。

 

 

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 「かわせみ」は青い車体、「やませみ」は深い緑色の車体です。

 

 

内装は、地元産のヒノキや杉を使っているとのことです。

 

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午後3時01分、JR熊本着。

 

 

 

「令和2年7月豪雨」(気象庁命名)で大きな被害を受けた

 

 2020年7月の豪雨で、吉松と八代の間が不通になってしまい、特急「かわせみ やませみ」、「いさぶろう・しんぺい」は運休になってしまいました。

 

 

 球磨川(くまがわ)が氾濫して、鉄橋が2つ流されたほか、レールと枕木を支える道床や路盤が流れてしまうなど450件の被害(JR九州発表)がありました。

 

 早く復旧してもらいところですが、費用は100億円かかるという発言もあります。沿線に住んでいて鉄道を利用する人が少ないために、JR九州の経営陣は路線の廃止をちらつかせながら国や地元自治体に応分の負担を求めていくでしょう。旅行好きの人間としては復旧が待ち遠しい。

 

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