(2021年6月27日、東京都大田区で撮影)
新型コロナウイルス感染症対策で、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの接種が、先を争うように各地で繰り広げられています。発症予防に効果があるようです。が、副反応について、接種を推進する政府や政府お抱えの医師は「注射部分の痛みがありますが、2日ぐらいで収まります」とはいうものの、中長期的にはどうなのか、ほとんど触れません。分からないのです。
数年先に、健康だった体に異変が生じることはないだろうか――。
そうした不安から、以下の作文を会社のOB会の会報に投稿しました。備忘録として載せます。
目次
新型コロナワクチンは有効ですが・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(リード)
mRNAワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子情報の一部を健康な人間の体に注入する、という過去にないタイプのワクチンだ。
SNSでは不安をあおるデマや憶測が飛びかっている。このワクチンについて書かれている信頼できそうな公開資料に目を通し、どんな課題があるのかチェックした。
(本文)
「ワクチン、注射した?」。感染者が多い1都3県に住むOB会員に次々と聞いてみた。「7月中に2回目が終わるよ」が大半。副反応も今のところ、筋肉痛。症状がない人もいる。
しかし、先輩の一人は「あのワクチン接種でどんなことが起こるか心配で、決めかねている。何か隠しているのではないか。はっきりするまで接種を待ってもよいではないかとも思っている」と話し、別の1人は「ボクは接種したけど、小学6年の孫娘はやめとこうという話をしている」という。
役所から届いた「接種券」入りの封書。
mRNAワクチンのメカニズム
mRNAという物質を用いたこのワクチンは、新型コロナウイルスの表面にあるトゲトゲしたスパイクタンパク質の遺伝情報を含んだmRNAを、脂質ナノ粒子というカプセルに包んで、筋肉注射する。
mRNAは筋肉細胞や免疫担当細胞の中に入り、スパイクタンパク質が作られる。
すると、免疫担当細胞がスパイクタンパク質の特徴を記憶し、同時にタンパク質への抗体が作られ、免疫ができる。
本物の新型コロナウイルスが体内に侵入しようとしてきた時には、免疫担当細胞が記憶をもとに素早く抗体を再び作り、細胞内への侵入を防ぐ、というメカニズムだ。
政府は、このワクチンを感染収束の切り札として、国民に接種を推進している。
強い期待と問題点の指摘(島根大の飯笹久・准教授)
3つのレポートが目に留まった。
1つは、日本RNA学会会報第43号(2021年6月発行)の
飯笹久・島根大准教授(ウイルス学)の論文。
飯笹准教授は「従来の手法と比べ、mRNAワクチンは強力な感染予防効果が期待できる」「ワクチンを革命的に変える可能性を秘めたワクチンだ」と高く評価する。同時に、問題が3つある、という。
第1に、温度管理。低い温度で保存するワクチンは初めてで、温度管理が不十分だと、ワクチン効果は低くなることが予想される。
第2に、アナフィラキシーという重症なアレルギー症状。mRNAワクチンで発症する確率は、インフルエンザワクチンよりやや高い。
第3の問題は、自己免疫疾患 (注:免疫機能が正常に働かなくなり、自身の組織を異物だと誤って認識して攻撃することで発症する病気)。ウイルス感染がふだんは起こらない細胞に、ウイルスが感染した場合に、ごくまれに自己免疫疾患が生じることがある。
mRNAワクチンは筋肉に注射されるうえ、筋肉細胞でスパイクタンパク質が発現すると、何が生じるのか、細かい影響は分かっていない。副作用として思わぬ症状が報告されるかもしれない。製品化されてから時間が経っていないため、まだ副作用の頻度が予想できないという欠点がある。
ワクチン接種会場の案内版 (東京都内の病院で撮影)
日本感染症学会の国民向け提言
目に留まった2つ目の文書は、日本感染症学会のワクチン委員会が作成した
「COVIDー19ワクチンに関する提言(第3版)」(6月16日付)。
この中で、「感染拡大防止にワクチンの開発と普及が重要」だとしつつ、接種するかどうかを自分で判断する時の参考にしてほしいポイントを示している。以下は抜粋。
◆「現在接種が進んでいるファイザーとモデルナのワクチンに含まれるmRNAは、分解されるため長時間細胞内に残存することはなく、またヒトの染色体に組み込まれることはないので、比較的安全性が高いことが予想されます。」
◆「しかしながら、mRNAを今後繰り返し投与する場合の安全性や、
脂質ナノ粒子に含まれる脂質の長期的な安全性はまだ明らかになっていません。」
◆「アストラゼネカのワクチンに使用されているウイルスベクター(注:遺伝子の運び屋)は、複製ができないように遺伝子を改変しているため体内で増殖する心配はありませんが、ウイルス自身が被接種者の免疫にどのような影響を与えるのか不明な点も残っています。」
◆「ワクチンも他の薬剤と同様に、ゼロリスクはあり得ません。病気を予防するという利益と副反応のリスクを比較して、利益がリスクを大きく上回る場合に接種が推奨されます。国が奨めるから接種するというのではなく、国民1人ひとりがその利益とリスクを正しく評価して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です。」
◆「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではありません。接種しても一部の人は発症します。発症しなくても感染し無症状病原体保有者として、人に広げる可能性も一部にはあります。また、ワクチンの効果がどのくらい続くかも不明です。」
ワクチン接種後の死者数と専門家の評価
厚生労働省ホームページの「新型コロナワクチンの副反応疑い報告にいついて」というサイトでは、ワクチン接種後の死者の数が分かる。
ファイザーのワクチン接種開始(2月17日)から6月13日までに277人の死亡が医療機関や製造販売業者から厚生科学審議会副反応検討部会(6月23日開催)に報告された。
このうち65歳以上が248人と9割を占める。死因は心不全、出血性脳卒中など。
専門家の評価は、明確に「ワクチンとの因果関係が認められない」は2人だけで、
残りは「情報不足などにより因果関係が評価できない」。
そして「現時点ではワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」が部会の結論。
高齢者の接種が増えているため接種後の死亡として報告された事例が増えているのであり、ワクチン接種が原因かどうかはわからない、という判断だ。
私自身は、数年先にひょっとして発症するかもしれない副反応が不安だが、何も起こらないことを願い、今を生きるために7月に接種した。
≪追記≫ (7月9日)
2021年7月7日に開かれた厚労省の「副反応検討部会」への報告によると、ファイザーのワクチン接種後に医療機関や製造販売業者から6月27日までに「死亡」として連絡があった事例は453人になった。
ほとんどが「情報不足などによりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」で、「ワクチンと症状名との因果関係が認められない」が1件という中で、
「ワクチンと症状名との因果関係が否定できない」事例が1件出てきた。
「因果関係が否定できない」との報告されたのは、基礎疾患のある80歳の女性で、亡くなったのは2回目の接種の1週間後。死因は、血小板減少症とクモ膜下出血が併記されていた。これに対し、部会での専門家による評価は「ワクチン接種後の血小板減少の原因としては、ワクチン自身の関与よりも、接種時の身体状態に問題があったのではないかと推測されるが、ワクチンが誘因になった可能性は否定できない。また、血小板減少と死亡との直接的な関連性は不明である」とされた。