北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

冬の燕岳~北アルプス常念山脈のテント泊縦走計画(2度敗退)

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 正面に見えるのが山小屋「燕山荘」(2005年12月31日撮影)

 

目次

 

 

 

 「正月に、山が混雑しなくなりました。昔はどこの山岳会も大イベントをやるから、とにかく人だらけで」「登山者の数は減り続けていると思います。減った理由の一つは、山岳会の衰退ですね」「山岳会って、やたらともめごとが起こるんだよ。人間関係が面倒なんだよね」

 

 雑誌「山と渓谷」2022年2月号をめくっていたら、山岳ガイドと山道具屋の元従業員が、そんな対談を指定ました。

 まったく、同感ですね。

 

 そこで思い出したのは、20年も前の苦い思い出。入っていた社会人山岳会で、真冬の12月末に、北アルプス燕岳(つばくろだけ)から大天井岳(おてんしょうだけ)、常念岳蝶ヶ岳を縦走して上高地に下りる計画を2度立てたのですが、いずれも燕岳まで登って敗退したのです。

 その後、山岳会を抜け、単独でまたも燕岳まで登っていますので、冬の「ツバクロ」は3回経験したことになります。

 

 メモが残っていますので、過去3回のようすをアップしました。

 

 

1回目:2002年12月28日から2003年1月1日

 

 メンバーは、男性ばかり山岳会の5人

12月28日

AM0:29 JRの臨時快速列車「ムーンライト信州」号に立川駅から乗車。

 

AM4:51 「穂高」駅で下車。タクシー2台に分乗して「宮城(みやしろ)ゲート」へ。

 

AM5:35 宮城ゲートから、ヘッドライトをつけて歩き始める。燕岳登山口まで12㌔の道のり。星がキラキラ瞬いて、いい感じ。路面に雪は少なく、バリバリに凍っている。ところどころに黒い地肌がのぞいている。

 

AM6:10 発電所通過。

AM8:05 第四発電所。登山口まであと4㌔。とても眠い。

AM9:26 有明荘前。歩くペースが落ちてきた。

 

AM9:45 中房温泉にある「燕岳登山口」に到着。標高1462㍍。ここでメンバーの1人が風邪で体調不良を訴えたが、とりあえず燕岳のふもとの山小屋「燕山荘」(えんざんそう)まで行こうかということに。

 

AM10:10 登山計画書をボックスに投げ込んで、さあ出発。トレースができているため、歩きやすい。

 

AM10:55 第一ベンチ(標高1660㍍)着。

AM11:10 出発。

AM11:40 第二ベンチ着。

AM11:58 出発。トレースはしっかりしているが、外れるとズボッ。

 

PM0:33 第三ベンチ着。そろそろテントを張るところをさがそうよ、ということになって、2140㍍地点で幕営

 

 

 

12月29日

朝、粉雪が舞っているが、無風。新雪が10㌢ほど積もっている。

AM7:15 テントをたたんで出発。

 

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AM8:45 合戦小屋(かっせんごや)に到着。標高2350㍍のところ。

 3か月前に偵察山行で来た時には、小屋のすぐわきの樹林帯を進んだが、今は埋もれていて見えず、その右を直登するようにトレースができていた。

 小屋から上は雪が多く、やっと北アルプスにやってきたね、という印象。

 

AM10:50 燕山荘(標高2705㍍)に到着。小屋の中で温まってから、正午ごろ、小屋の前のテント場でテントを設営体調不良の1人をテントに残して4人で燕岳へ。それにしても風が強い。ゴーグルがいる

 

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PM1:45 燕岳(標高2763㍍)の山頂に立った

 

 

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PM1:50 燕岳の山頂から見た大天井岳(標高2922㍍)と、その向こうの山小屋「大天荘(だいてんそう)」

 

 

 テントに戻ってこれからの行動を話し合うが、別の1人が股関節の痛みを訴え、とても大天井岳を越えられないと言い出す始末。このため大天井岳の手前の「大下りの頭(おおくだりのかしら)」まで景色の素晴らしい稜線歩きを楽しんで引き返すことにする。常念山脈冬季縦走はこの時点であきらめた。

 

 

 

12月30日

AM6:20 起床。

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 「蛙岩(げえろいわ)」を過ぎて、大天井岳方面に進む。

 

 

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AM9:20 「大下りの頭(おおくだりのあたま)」付近から見た大天井岳

 

 燕山荘前のテント場で、2泊目に入る。

 

 

 

【12月31日】

未明、風が強くてテントの生地がパタパタはためき、そのたびに顔に露がかかって目覚めてしまう。

 

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AM6:50 こんな感じ。

 

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AM7:12 ご近所さんのテントをパチリ。

 

 

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AM7:20 テント場を出発。合戦尾根を下って中房温泉を目指す。

 

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AM7:33 撮影。いい感じ。

 

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AM7:40 撮影。私の背中には、赤い旗竿が数本。縦走中にホワイトアウトになった場合、安全な場所まで戻ることができるようにと用意したが、使うこともなかった。

 

 

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AM7:41 撮影。風も止んで、穏やかな下りに。

 

 

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AM7:43 撮影。

 この日は中房温泉の駐車場にテントを張った。露天風呂に入った。

 

 

 

 

1月1日

朝、暗いうちにまた、露天風呂に入り、身を清める(?)。餅を食べて、下山へ。

 JR穂高駅前の穂高神社に立ち寄り、交通安全の反射鏡を買った。

 

 

 

 

 

 

     ◇     ◇     ◇      ◇     ◇

 

2回目:2004年12月30日から2005年1月1日

 

 2年後に再挑戦です。メンバーは、今回は3人でした。(写真は紛失)

 

 

12月30日

AM0:29 JR立川駅から「ムーンライト信州」号に乗車。ところが先行の貨物列車が車両故障で立ち往生し、穂高駅には4時間近く遅れて到着した。

 

AM9:00ごろ 「宮城ゲート」から歩き始める。

PM0:30 中房温泉に到着し、小休止。

PM1:00 燕岳登山口から出発。第二ベンチ(標高1820㍍)でテントを張る。

PM4:00 気象通報を聴いて天気図を作る。大陸に低気圧はなく、穏やかだという感触を得た。

 ※気象通報はNHKラジオ第二放送で、毎日午後4時から気象庁が発表しており、冬山では必ず山岳会に入会して日が浅い者が作らされた。が、昨今は、このラジオを聞く人はまずいない。

 

 

 

 

12月31日

AM6:30 ヘッドライトをつけて登山開始。

 下山してきた単独行の青年は「合戦沢の頭から先はトレースがないので、下りてきました」と登山をあきらめたらしい。

 

 次に会った青年は「燕山荘から下りてきました。1パーティー大天井岳方面に進みましたが、2つ玉低気圧が現れていますよ」と。あれ?いつ2つ玉になったんだろう、いやだなあと思う。

 ※2つ玉低気圧は、日本海と太平洋にある2つの低気圧が日本列島をはさむように進んで、列島通過後に東の海上で合体し、西高東低の強い冬型の気圧配置となって

雪が積もる。遭難がしばしば起きている。

 

AM7:45  富士見ベンチ。 

 

AM11:00 燕山荘に到着。計画では大天荘(だいてんそう)の冬期小屋に泊まる予定だったが、パーティーの1人が疲れていて、大天井岳を越える体力はないと判断、燕山荘から一段下がった地点にあるテント場にテントを張ることに決めた。

 テント場にはほかに3組。雪まじりの風が強く、テントの土台部分を深く掘った。

 雪は降り続け、2時間もするとテントのヘリに20㌢も雪がたまる。ジャンケンで負けた人や燕山荘のトイレに行く人が、周りの雪を取り除いた。

 

PM8:30 雪は降り続き、テントをさらさらと流れ落ちる音を聞きながら、1つのテントに3人で眠りについた。

 

 

 

【2005年1月1日

時刻不明 パニックが起きた

 もぐり込んでいるシュラフの左側から、体が強く押される一方、右隣りで寝ている仲間からも圧迫されている気配を感じた。そのうえ、テントの外では、女性の悲鳴のような、何かに驚いているような声。そしてスコップで掘る音。夢うつつでいると、仲間の1人が「あ~、こりゃ大変だ」と大声を上げた。

 ヘッドライトをつけると、テントが圧迫されて空間がわずかになっていた。目の前の入り口のチャックを開けると、雪の粒がピュッと顔に当たる。もう少し開けると、積雪の天井は、チャックの天井部分を越えていた。「壁ができてるよ。奥までで、厚いよ」と思わず声を上げてしまった。

 雪の壁とのすき間は30㌢ほどあり、脱出できないことはない。事態に気づいた仲間はトイレに行きたくて目がさめたらしく、雪を押しのけて脱出した。

 テント内はとても狭く、ガスコンロをつけるスペースもなく、30㍍ほど先の燕山荘に逃げ込むことに決定。1人ずつ順に大雑把にパッキングを始めた。テントの入り口のチャックは前夜から締まりにくくなっており、入口を私がザックと左腕で閉じ、別の仲間の作業が終わるのを待ったが、すぐに私のザックや腕には雪が積もった。

 

 このあと、大きな失敗をしてしまった。

 

 燕山荘でお正月の温かいお雑煮を食べてからテント場に戻り、テントの撤収に着手。ここまではよかったが、テントのスソは降り積もった60~70㌢の雪に埋もれ、掘り出しているうちにテントポールが2、3ヵ所で折損。テントを引っ張り上げた時に、底が破れてしまった

 とにかく掘り出したテントを丸め、また山小屋に避難した。テントの支点に、仲間の1人がアイゼンを使っていたことから、その仲間はアイゼンを掘り出せるか相当心配した。アイゼンがなければ、凍てついた山を歩いて下山することはできない。

 

 常念山脈縦走という計画は、また水泡に帰した。

 燕山荘という山小屋が横にあったからよかったものの、小屋もなく雪洞も掘れない状況の縦走路でテントが壊れたら、低体温症になって「サヨナラ」だ。まだまだ私には修行が足りない。

 

 

AM7:30 燕山荘の小屋番の4人がラッセルして、宿泊者のための下山ルートづくりに出発した。これに数10人の宿泊者が続いた。

 

AM8:00 我々、テント組も下山開始。小屋番は「合戦沢の頭(かっせんさわのあたま)」(標高2489㍍)でルートづくりを終了し、小屋に引き返してしまった。

 小屋に泊まっていた皆さんは、ビビッてしまったのか、立ち止まってしまった。俺たちが引っ張るしかないのか、ということで、そこから先の合戦小屋まで、輪かんをつけていた我々3人が先頭に立ってルートをひらいた。

 

AM11:20 中房温泉着。缶ビールを飲んで、正午ごろ出発。

PM2:45 宮城ゲート着。ここで携帯電話でタクシーを呼び、JR穂高駅に向かった。穂高駅前で、苦いそばを食べた。ほとんど無言だった。

 

 

 

 

 

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

3回目:2005年12月30日から2006年1月1日

 

 次の年末年始も飽きもせずに、燕岳に向かいました。

 前の2回と異なるのは、山岳会を抜けたということと、単独行だということ。

 冬の燕岳は厳かで美しく、一人で年末年始をくつろぐのもいいなあ、と思ったからでした。

 

 

【2005年12月30日

AM7:29 JR八王子発の特急「スーパーあずさ」に乗車。

AM10:35 穂高駅下車。

AM11:00 タクシー相乗りで「宮城ゲート」着

AM11:16 歩き始め

AM11:42 有明山表参道入口

AM11:58 中電中房第4発電所

PM0:48 菩薩・観音峠

PM1:30 中電中房第5発電所

PM1:47 信濃坂ピーク

PM2:03 橋

PM2:50 国民宿舎

PM3:05 中房温泉の駐車場(=テント場)着。他にテント泊の者なし。

 

 

【12月31日】

AM7:00 テントを撤収して出発。

AM7:41 第1ベンチ

AM8:22 第2ベンチ

AM9:09 第3ベンチ

AM10:08 富士見ベンチ

AM10:53 合戦小屋

PM1:20 燕山荘に到着。小屋の前のテント場は吹きだまりになっていて、テントを張る登山者はゼロ。私も弱気になって小屋泊まりにチェンジ。

 

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 宿泊の手続きをした後、燕岳まで往復した。

 

 

 

【2006年1月1日

AM6:37 燕山荘を出て、蛙岩(げえろいわ)方面に、稜線を歩く。

 

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 後ろに見えるのは、槍ヶ岳(標高3180㍍)。

 

 

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 はるかかなたに、富士山も・・・。

 

AM8:44 燕山荘前から下山へ。

AM11:05 中房温泉登山口着

PM2:04 宮城ゲート着。タクシーを呼んでJR穂高駅へ。

 

 

 冬山は、空気がピーンと張りつめて、好きです。

 

 

 

 

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