羽田空港の端っこにある「平和の大鳥居」。近くを飛行機が飛び立ちます。
コロナ禍で、東京都大田区の羽田空港は、国際線の運休、減便が続いて暗いムード。それでも目を地上に向けますと、空港「跡地」で再開発が着々と進んでいるんですね。立派な建物や施設が次々にオープンです。
2022年3月12日には、羽田空港と川崎市臨海部の間を流れる多摩川に橋が架かりました。
多摩川スカイブリッジです。
開通した橋と、その上を行く歩行者の姿。
羽田空港周辺の空港「跡地」がどう変わりつつあるのか、歩いてみてきました。
目次
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羽田空港の「跡地」って何のこと?
羽田空港の「跡地」と言われている部分は、京急「天空橋」駅から、羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)にかけて広がる、約53ヘクタール(53万㎡)の土地のことです。
上の写真の左下が「跡地」の「第1ゾーン」。写真中央はB滑走路。
「跡地」というのは、B滑走路の先端部分の土地のことです。羽田空港は飛行機の離着陸時の騒音が問題になって、沖合を埋め立てて空港の敷地にする「沖合展開事業」を進めてきましたが、その時にB滑走路も400㍍ほど北側に移動させたために空き地ができたのです。その空き地が「跡地」です。
「跡地」は2つのエリアから成っていて、「第1ゾーン」は「天空橋」駅近く、「第2ゾーン」は第3ターミナルの南側です。
羽田イノベーションシティ
新しい街づくりが進む
一部出来上がった「羽田イノベーションシティ」の外観。
「第1ゾーン」というところは、「羽田イノベーションシティ」という名前のエリア。
このエリア一帯がインターネットでつながった「スマートシティ」という新しい街にしよう、という試みです。
鹿島建設が中心になって大手企業9社が出資して地上10階、地下1階の建物を造って、大ホールや食事を楽しめるスペースを設けるようです。
2020年秋に一部の店がオープンしていて、若い人を多く見かけます。
現在、人気があるのは、「足湯スカイデッキ」というスペース。無料です。足を湯に突っ込んでおしゃべりを楽しんだり、B滑走路から離陸のため手前に向かって滑走してくる飛行機が、頭上を飛び去るシーンを撮影できる絶景ポイントなんです。
足湯スカイデッキのフェンスには、カメラを持ったファンがズラリ。
ここは各建物を結ぶ歩行者用のデッキ。
建物は今も増築されていて、全面開業は来年2023年らしい。
ホテル・ヴィラフォンテーヌ
開業予定は2年前・・・いまだメド立たず
気の毒なホテルです。その名は、「ホテル・ヴィラフォンテーヌ」。
「跡地」の「第2ゾーン」は、空港第3ターミナルの南側ですが、この川沿いに豪華ホテルが建ちました。
住友不動産が建てたホテル・ヴィラフォンテーヌです。
ホテルの客室は、ハイグレードの1557室のほかに、それ以上の富裕層向けに160室、計1717室あるそうです。ホテルのほかにも、天然温泉展望風呂、イベントホール、会議室、商業施設、バスターミナルといった施設をあわせ持っています。
このホテル、訪日外国人が増え続けていることや東京オリンピック・パラリンピックの開催を念頭に置いて、国から土地を借りて建設し、2020年4月に開業の予定でした。
ところが、コロナ禍で開業延期を決定。その夏の開業を目指しましたが、国内線も旅行者の大幅な減少が続くために再度延長に。
写真は、従業員用の自転車置き場。
開業のめどはたっていません。
ソラムナード羽田緑地
「第2ゾーン」の多摩川沿いに2020年4月、細長い公園がオープンしました。
ソラムナード羽田緑地です。
細長い公園の長さは1㌔近くあります。散策路が整備され、ベンチもあります。ゆったり歩いて、飛行機や川面を眺めるのもいいものです。
南から強い風が吹く日は、午後3時以降、B滑走路からの離陸シーンを撮影できます。
多摩川スカイブリッジ
2022年3月12日に開通した、多摩川に架かる橋です。
羽田空港と、川崎市の医療分野の研究・開発拠点「キングスカイフロント」とを結ぶ長さ840メートルの道路です。
橋の名前は、「多摩川スカイブリッジ」です。
工事の施工者は川崎市です。
この道路の中央の675㍍は橋梁で、車道と歩道、自転車道が区分されています。
開通初日の3月12日は、歩行者が大勢いました。
ただ単に橋を渡るのではなく、みなさん、橋の上からの景色を楽しんでいるようでした。
多摩川スカイブリッジの歩道の上に、プレートがはめ込まれていました。
「初日の出」を拝むには、このポイントがいいよ、というわけでしょうか。
あちらから陽がのぼるようです。
橋は、多摩川の河口のすぐ近くです。
多摩川河口から見た橋とホテルです。
上の写真は、多摩川スカイブリッジの上から見えるキングスカイフロントです。
キングスカイフロント
その「キングスカイフロント」というのは、羽田空港の対岸にある40ヘクタール(40万㎡)のエリアです。地番は、川崎市殿町。
ここに新しい薬の開発や難病の治療方法の研究、医療機器の研究開発といった、健康・福祉・医療にかかわる企業や研究機関が進出してきているのです。
かつての「いすゞ自動車川崎工場」( 川崎市作成のパンフレットから引用)
もともとこの土地には、いすゞ自動車川崎工場がありました。ところが2000年ごろ経営が悪化し、川崎工場の機能を別の工場に移して閉鎖。跡地は2004年、東側半分をヨドバシカメラに、西側半分を都市基盤整備公団(現在のUR都市機構)に売却しました。
跡地を取得したUR都市機構が川崎市と相談して土地区画整理をし、生まれたのがキングスカイフロントだそうです。
キングスカイフロントに集まるのは、川崎市の説明だと、現時点で70の企業や機関。ライフサイエンス(生命科学)分野の就業者は約1400人、うち研究者は約600人で、博士号を取得している人は約300人いるそうです。
散歩していて目についた建物を、以下に載せておきます。
★実験動物中央研究所(略称「実中研」)
人間の体内に似た機能のある「ヒト化マウス」という実験動物を作製したり、新たな動物実験の開発と実用化に取り組み、ヒトの病気の研究と解明に努めている。
★CYBERDYNE(サイバーダイン)
装着型のロボットを研究開発・製造・販売をしている会社。新しい研究施設がこの2月に完成したばかりという。
★ペプチドリーム
2006年に設立されたバイオ医薬品企業。
★ライフイノベーションセンター
失われた組織や臓器の機能を、細胞を使って再生を目指す医療のことを「再生・細胞医療」といいますが、この事業化を目指して企業、大学26事業者が入居しているそうです。慶應義塾大学、シスメックス、タカラバイオほか。
★日本アイソトープ協会川崎技術開発センター
アイソトープ製品の試験・研究開発、普及啓発などしている。
医療従事者を対象にした、先端医療技術を安全に使うための訓練施設。病院の手術室や検査室が再現されている。
主に、がんやアルツハイマー病の診断のための放射性医薬品を研究開発している。
ここで商品を一時保管し、配送している物流センター。
★交番
敷地の一角には、お巡りさんも常駐します。神奈川県警川崎臨港署殿町交番です。