北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍級の登山、国内外の旅行、歴史探訪、反戦・平和への思いなど備忘録としてつづっています。

報道~田舎暮らしは甘くない! 私がかかわった失敗事例を話します

 「コロナ禍」をきっかけにテレワークという離れた場所で情報通信技術を使って働くスタイルが広がってきましたね。その延長線上で、田舎暮らしを考える人が出てきたようです。

 

 テレビの娯楽番組では、田舎での暮らしの楽しそうな部分だけ切り取ってオンエアーしています。しかし、実際は面白いことばかりではないですよ。

 

 

目次

 

 

 

 

「空き家」入居者にとって近所付き合いはストレス

 片田舎で生まれ育った私は、空き家になった実家を、田舎暮らしにあこがれた老夫婦に貸した経験があります。でも、入居して1年後、夢破れて出て行ってしまいました。

 近所付き合いがストレスになったのです。

 

 苦い経験です。が、備忘録として記しました。

 

 

 

 

 

「空き家」を貸した私の事情

 生まれ育ったところは、家から国道にあるバス停まで3キロというへき地です。周囲はほとんどが農家です。小学校教員だった父が亡くなり、独り暮らしをしていた母が地方都市の老人ホームに入ったため実家が空き家になりました。

 

 実家の土地・建物を相続していた長男の私は、ここに住むつもりはありません。私の兄弟姉妹も同じです。すぐに売却するのも母に申し訳なく思い、家を誰かに貸そうと思って地元の市役所の「空き家バンク」に登録しました。

 

 

 

 

 

「空き家バンク」とは?

 空き家バンクというのは、市役所や町村役場が主体となって運営しているインターネット上の空き家情報サイトです。

 

 市町村が地元住民から、売ったり貸したりしたい空き家についての情報をもらい、これを「空き家バンク」と名付けたネット上のサイトに登録し、田舎暮らししたいという人たちに情報提供する仕組みですね。

 

 田舎に住む人どんどん減っていって空き家が増え、防災面でも衛生面でも好ましくないので都会の人に入居してもらおうというわけです。

 

 ただ、市役所や町村役場は、入居をめぐるトラブルに巻き込まれたくはありません。だから、空き家の登録受付と、住みたいという人が現れた場合に空き家所有者に「連絡」するだけであって、交渉や契約の「仲介」はしません。仲介してくれる不動産屋の紹介だけしてくれます。

 

 

 

 

 

借り手はすぐには現れず、届いたのは「苦情」

 「空き家バンク」の登録申請書です。

 

 

 ひとくちに「田舎暮らし」といっても、都市近郊とへき地とでは、そこに住んでいる住民の意識が相当違うと思います。

 私の場合は、マイカーがなければ満足な買い物ができない交通の便が悪いへき地です。

 

 「空き家バンク」に登録したのは、2012年6月でした。

 貸すのは母屋だけ。木造平屋建て約127平方メートルで、8畳間が4部屋と応接間、台所と風呂、トイレ。

 戦後間もなく建てており、築60数年。家賃は月4万8000円としました。

 

 当時、農家の人手不足のため、中国人女性が集団で農家に手伝いに来ており、その人たちの入居を内心期待したのですが、反応はありませんでした。

 

 登録から2年も経った2014年9月、市役所から一通の封書が届きました。空き家所管の建築課ではなく環境政策課からです。「苦情」でした。空き地の樹木の枝が道路にはみ出しているから通行のじゃまだ、と住民から苦情が届いている、という内容でした。地元のシルバー人材センターに電話し、せん定などお願いしました。

 費用は2万7330円でした。

 

 

 

 

 

 

やっと現れた「借りて」は磯釣りが好き

 吉報が2014年11月に届きました。市役所からの電話で、「希望者がいますよ」と。登録から2年半も経っていました。

 60歳代後半のご夫婦。大都会でマンション住まいをされている方でした。仕事は既にリタイアーされている。

 空き家を見に来られた時、立ち会ってくれた不動産屋に、こう言ったそうです。

「磯釣りが好きなんです。海が近くていいところだ。毎日、釣りをしてのんびり暮らしたいと思っているんですよ」と。

 住み慣れたマンションは処分してきたそうです。翌12月から入居してくれました。軽乗用車を1台お持ちでした。

 

 

 

 

 

「近所付き合い」で破綻、1年後に転出

 2016年3月の夜でした。ビックリしました。仲介してくれた不動産屋からの電話で、借り主夫妻が翌4月初めに出ていくというのです。入居してわずか1年。わけを聞きますと・・・。

 

 不動産屋の話ですと、家や自然環境には不満はないけれど、「地元の人たちと付き合っていけない。どうもなじまない」と、言ったそうです。

 そう聞いた時、ああ、そうかもしれないなあ、と思いました。思い当たる節があるのです。

 

 というのは、私も東京でマンション暮らしをしていますが、11階建てのマンションのどの部屋も表札は出さず、「番号」・・・例えば「305」「1021」というふうに数字だけがインタホン脇に付いているだけです。

 ですから隣の人がどんな人か知りませんし、顔を合わせることもなく、通路で人に会えば挨拶するだけの関係です。(知らん顔をしてすれ違う人もいますね)。そういう状態になじんでいる人であれば、近所付き合いが濃厚な田舎暮らしは相当、きついでしょうね。

 

 

 

 

 

「風習」「しきたり」になじめない都会人

 私の記憶に残っている風習・しきたりをいくつか挙げます。

「おひまち」

「よりあい」

「ごにぐみさ」

「ふれやく」

「組の旅行」

などなど。

 

 「おひまち」は「御日待ち」という字を当てると思いますが、江戸時代からの風習でしょうか。特定の日に、輪番で当番となった家に、近所の家から1人ずつ計20人ぐらいが集まって食事をし、あちことで勝手におしゃべりする行事です。教員だった父は農家の人とふだんから会っていないためにどこの誰だか知らず、居心地が悪かったようです。祖父にしばしば出席を頼んでいました。

 

 「よいあい」は会合のことで、「寄り合い」と書きます。「きょうは寄り合いがある」と何度か耳にしました。

 

 「ごにぐみさ」という言葉は「五人組」が語源。江戸時代に各地の村で編成された相互監視組織の名残りでしょうね。地域のリーダー格のことを「ごにぐみさ」と呼んでいましたね。

 

 「ふれやく」は「触れ役と書くと思います。これも江戸時代からのなごりか、役所からの伝達事項を一般に知らせる広報係ですね。

 「触れ役」は死者が出た時に、親戚縁者を戸別訪問して、通夜や葬儀の日程を知らせる係です。葬式は田舎では大事な儀式の1つです。父が亡くなった2007年4月も、亡くなった当夜、近所の男性20人ぐらいが仮通夜にきてくださり、私はしきたりがわからないまま「よろしくおねがいします」とあいさつしました。

 近所の衆はその夜、手分けして戸別訪問し、日程を伝えました。電話ではないんですね。葬儀の日はこの20人ほどがお寺の境内にテントを張って、受付をしてくれました。顔を知っているのは2、3人だけでしたが。

 

  このほか、「組の旅行」というイベントがありました。これは地域が20戸ぐらいずつだと思いますが「何番組「何番組」というふうに番号を付けて分かれていまして、年1回、「組」ごとに日帰りのバス旅行をするんです。懇親旅行ですね。バスの中で順番に歌を歌わされるので、もうイヤでイヤで嫌な思いでしかありません。いまは子どもが減っているので存続しているかどうか知りません。

 

 

 もうちょっと、思い出しましたので書いておきますが・・・・・。

 

 

 田舎の人は平気で他人の敷地に入っています。もちろん悪意はありません。夏に私が帰省している時も、まだ眠っている早朝に門の鉄扉を開けて、「おーい、おるかん?(=いますか?)」といって玄関の戸を開けます。採りたての野菜を持ってきてくれるんです。ありがたいですが・・・。

 

 別の時期に、私が庭で洗車していますと、通りがかりの人が、「あんた、ここの人かね」「××君かね。やっとかめだのん(=久しぶりですね)。いまどこにおるだん(=どこにいますか)」などと、気軽に声をかけてくれます。日々の変化が乏しいだけに、ちょっとした話題はすぐに広まるでしょうね。

 

 こんなこともありました。

 神奈川県に住んでいる妹が墓参りに近所のお寺に行った時のことです。墓場で草取りをしていたおばあさんが妹に、「あんた、このへんで見かけん人だけど、どっから来たね(=どちらから来ましたか?)」に声を掛けました。気の強い妹は、カチンときて、歩いてきた方向を指さして「あっち(=あちら)」と答えたとか。

 

 

 

 

 

 

「賃貸」をやめて「売却」を決断

 1年間、空き家に住んでくださったご夫婦には、ご夫婦には申し訳ないことをしたと思っています。結果的に失敗でした。

 

 2016年6月、市役所の空き家バンクに登録をし直しました。家を「賃貸」ではなく、きれいさっぱり「売却」します、と。

 価格は、1079平方㍍もある広い土地と、母屋を含む住宅4棟、倉庫2棟、庭を「現状のまま」で200万円にしました。

 安くしたつもりですが、その後、1年間は音沙汰がありませんでした。

 

 結局、2017年5月、経緯や使いみちは知りませんが、ご近所の方が買ってくださいました。感謝しています。

 受取金額は、不動産屋への仲介手数料や隣家との境界を測量して杭を設置するひようなどを差し引いて、150万円ほどでした。

 

 

 

 

 

まとめ

 空き家バンクのおかげでお荷物を処分できました。

 田舎に移住を考えている方は、空き家を見に行った時に、必ず近所を何軒か当たって、しきたりや年間行事を聞いておくことが大事だと思います。新しい土地で、その土地の人と知り合いになるのが好きな方はいいですが、人それぞれですから。地域によっても違うと思います。

 

 市役所や役場に聞いても、何も教えてくれません。責任を転嫁されるのが嫌ですからね。

 

 

 

おまけ

 ひとつ、書き忘れました。

 空き家を買ってくださったご近所の家の「おばあさん」から後日、私の電話がありました。

 もう契約は済んでいるのになんだろう、と思いましたら、「空き家の仏間を見たら『仏壇』が残っているけど、あんた、『ショウヌキ』、やっとらんだらー(=やっていないでしょう)」というわけです。

 

 「ショウヌキ」っていわれても何のことか分からないので何ですかと聞きますと、どうやら「魂抜き」という宗教上の儀式らしく、仏壇を処分する時にするらしい。

 合理主義者の私が「位牌を取り除いてあるのだから、仏壇といってもただの箱でしょ?」と言ったところ、ビックリしたようで納得してもらえませんでした。

 やむなくお寺に電話して、住職にこの話をしたところ、笑いながら「私が今度、家の前を通りがかった時に、お経をあげておきますから」と言ってくれました。

 

 とにもかくにも、あれやこれや、たいへんでした。

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