ライトアップされて青色に見える「鳴沢氷穴」の氷柱。
(2022年7月19日撮影)
富士山のふもとに青木ヶ原樹海(あおきがはらじゅかい)があります。
平安時代に富士山が噴火した時に、火口から流れ出たマグマが冷えてできた自然の恵みです。樹海には溶岩のほら穴があちこちにあります。
いっぱいあるほら穴のうち、「富岳風穴(ふがくふうけつ)」と「鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)」は観光客用にきちんと管理されている人気のスポット。その中に入って、富士山の生い立ちに触れてきました。
2022年7月19日、昔の職場の先輩・同僚7人と富士急・河口湖駅で落ちあい、レンタカー2台で回りました。
目次
「青木ヶ原樹海」が持っているイメージは?
青木ヶ原樹海は、富士山の北西側の山麓に広がる約30平方キロの原生林。およそ5キロ四方ですね。
松本清張の小説「波の塔」で、ヒロインが死を選ぶ場所として青木ヶ原樹海が登場したことをきっかけに、自殺の名所というイメージが定着してしまったようです。
でも、実際は、観光用の遊歩道が整備されていて、原生林の神秘的な雰囲気を安全に楽しむこともできそうです。
青木ヶ原の樹海をつくったのは西暦864年の大噴火
標高1165mの紅葉台(こうようだい)からのぞむ富士山。(午前11時30分撮影)
青木ヶ原樹海という原生林の足元は、ゴツゴツした溶岩です。
平安時代の貞観6年(西暦864年)から1年余り、富士山の北西側山腹の長尾山で割れ目噴火が続き、流れ出た溶岩が森林を焼き払い、湖の大半を埋めました。
これが「貞観(じょうがん)噴火」です。せき止められた湖は、現在の「西湖」と「精進湖」になったそうです。
溶岩で覆われた大地は、飛んできた葉や鳥や虫のフンで栄養素が増え、1200年もの年月をかけてコケを生じ、樹木が育つようになったようです。
青木ヶ原樹海というのは、溶岩の上に草木が生えて大きくなった原生林なんですね。
ほら穴のでき方
溶岩でできたほら穴は、どんなふうにしてできたんだろう。「富岳風穴」と「鳴沢氷穴」とでは、微妙に違うんですね。
横穴式の「富岳風穴」の場合
富士山の山腹にある長尾山(標高1424m)あたりから噴き出した溶岩は、すそ野に向かってダラダラ流れて青木ヶ原樹海の基になる溶岩台地をつくりました。
図は、富士観光興業㈱のHPから引用。
溶岩の流れは、大気に触れる上部と地表に触れる下部は徐々に冷えて固まっていきますが、真ん中の部分は高温のままでシュークリームのような液状になっています。
そして外側からの圧力で、もっとくだって行こうとすると、溶岩流の先頭部分の固くなりつつあるカラが破れて中身が吹き出し、跡には「空洞」が残ります。
こうしてできたのが横穴式の「ほら穴」。富岳風穴がこのタイプのようです。
竪穴式の「鳴沢氷穴」の場合
図は、富士観光興業㈱のHPから引用
富士山山腹の長尾山が噴火した時に、幹の太い巨木が溶岩流に飲み込まれ、徐々に冷えて溶岩が収縮する際に、内部の高温のガスやシュークリーム状のドロドロの溶岩が空に向かって噴き出した時に、残された空洞がこの竪穴(たてあな)式のほら穴。
鳴沢氷穴の例です。
(図の中の青色部分は一番深い地点。右下のしっぽは「地獄穴」の部分。ほら穴の出入り口は、左上部分です)
富岳風穴に入った
富岳風穴のチケット売り場。入場料が必要です。
青木ヶ原樹海の下に、ほら穴はあります。
標高1000mの樹海の中にある横穴式のほら穴です。平坦なのが特徴。富士急グループの会社が管理運営しています。
「富岳風穴」と名付けられているこのほら穴は、入り口の直径は5mちょっと、天井までの高さは2m近くから10mぐらい。歩く距離は201mで、所要時間は15分ほどです。
ほら穴には明かりもついていますが、天井が低いところでは頭をぶつけますからご用心!
内部の温度は、常にほぼ3度。これはほら穴の底に水がたまっていて、冬に氷結したまま夏になってもまだ一部が凍っているためらしい。
氷柱ですね。ライトアップされていて、ロマンチックです。
縄状溶岩。説明版がありました。上の方から流れてきた溶岩流が、下流部の流れが遅いために乗り上げて、縄のようになったそうです。
ここもアタマ注意。
溶岩だな。溶岩が固まる前に、壁面がはがれて丸くなり、丸太のようになったところらしい。
ここは昭和30年ごろまで、繭(まゆ)や種子の貯蔵庫として使われていたそうです。それを再現していました。
ここで行き止まり。「ヒカリゴケ」というコケの一種の群生地だそうです。岩壁に付いて、青白く光ります。
出口へ。
露出した木の根。
樹海です。
鳴沢氷穴にも入った
鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)は、標高1000mの青木ヶ原樹海の中にある竪穴のほら穴です。ここも富士急グループが管理運営しています。
2つの輪がつながって8の字の形になっていて、底まで21メートルあります。
鳴沢氷穴の入り口。
潜りま~す。
階段を下ります。
写真右下が通路ですが、天井が91センチと低いので、しゃがみこんで横歩きします。しかし、おもしろい。
ほら穴の天井は低いところで91センチ、高いところは4m近く。幅は2m近くから10mぐらい。
縦に8の字の形になっているので、一方通行で一周できます。
歩く距離は153mで所要時間は10数分。温度はこちらも3度ぐらい。
ここは「地獄穴」という名前が付けられています。
一番深い地下21メートルの地点。ピンボケ写真ですが、水が吸い込まれる穴です。どこまで続いているか、調べられないので分からないようです。
急な階段。手すりがあります。
青い光が見えてきました。
ライトアップされた氷柱(左下)。地下21メートルの一番深いところ。天井からしみ出た水滴が落ちて凍り、それが積み重なってできた氷の柱です。天然の氷は冬にできて、春に大きくなって9月ごろまで見られるようです。
氷が青く見えるのは、氷の柱にライトが当たると氷の中で波長の長い赤色などが吸収される一方で、波長の短い青色だけが反射して人間の目に入るので、青く見えるらしいです。
帰りの階段。
出口。
「溶岩樹型」という穴
こんな形のものが、溶岩樹型(ようがんじゅけい)。
溶岩樹型というのは、森林地帯を流れ下った溶岩が、太い樹木を抱き込んで冷え固まると、巨木が溶岩の熱で燃え尽きて、「空洞」になった穴のことです。
「空洞」の直径をみれば、いかに太い木だったか分かりますね。
図は、富士観光興業㈱のHPから引用。
山梨県鳴沢村に残る溶岩樹型は、標高1000mぐらいに点在しています。溶岩流の勢いが弱くなって厚さも薄くなる先端部分にあたります。
まとめ
富士山(標高3776m)は、1707年(宝永4年)の宝永山の大噴火を最後に、ここ300年あまり、噴火していません。
でも、「活火山」なんですね。
いつまた噴火し、山体を変えてしまうかもしれません。いまは、ひと休みでしょうね。
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