傾斜40度のキツイ登り。滑落したらアウト (2007年5月3日、残雪期の北アルプス・北穂高岳で撮影)
定年まで勤めた会社の先輩が先日、相次いで亡くなりました。83歳と72歳。死因は2人とも間質性(かんしつせい)肺炎という、シロウトの私にはなじみのない病名でした。
「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」はこのところ耳にしますが・・・。「肺炎」について自分なりに整理してみました。
目次
人間の「肺」の仕事
(上のイラストは、「『肺炎』に殺されない!36の習慣」生島壮一郎著から引用)
鼻や口から吸った空気は、気管を通って肺に入ります。気管は左右の肺に入ると、気管支(きかんし)という名前に代わります。気管支はもっと細かく分かれ、その末端には球状の小さな袋がブドウの房のように付いています。
このブドウの房のような部分が「肺胞(はいほう)」で、大事な仕事をしています。
肺胞は、吸った空気に含まれる酸素を、近くにある毛細血管を通る血液中の赤血球に渡し、逆に、血液に含まれていた二酸化炭素を受け取って空気中に吐き出す「ガス交換」をしています。呼吸運動ですね。
「肺胞」のイラスト (「Newton別冊 人体完全ガイド」から引用)
気管を通って肺胞に入った酸素は、肺胞の壁を介して、肺胞をとり巻いている毛細血管に入り、心臓に向かいます。そして心臓から全身に送られます。
一方、全身をまわった後で心臓から肺に送られてくる血液からは、血液の中に溶け込んでいた二酸化炭素が毛細血管から肺胞の中に移動し、人が息を吐く時に体外に出されるんですね。
「肺炎」という病気のこと
肺炎というのは、「肺に炎症を起こす病気」のことをさします。
細菌やウイルスなど病気を起こす微生物が、鼻や口から侵入して入り込みます。元気な人はノドでブロックしますが、風邪をひいたりして免疫力・抵抗力が弱っていると、肺にまで入ってしまいます。
肺炎の原因となる微生物で多いのは、「肺炎球菌」が最多。ついで「インフルエンザ菌」「肺炎マイコプラズマ」が続きます。
「誤嚥性肺炎」というのは?
人間のノドの奥は、食道と気管に分かれています。ふだん呼吸をしている時は、気道が開いていて空気を肺に送りますが、飲食物や「だ液」が通る時は、喉頭蓋(こうとうがい)というノドのフタが閉じ、気管への道が封鎖されます。
しかしながら、食べ物や飲み物、だ液が「食道」ではなくて、間違って「気管」の方に入ってしまうことがあります。これが「ゴエン」で「誤嚥」と書きます。
どうして誤嚥が起こるのかというと、ノドのフタの喉頭蓋(こうとうがい)の動きが鈍くなるためです。高齢者に多いです。
そして、飲食物や口の中の「だ液」に混じっている細菌などの微生物が気道に入り、肺に炎症が起こるわけです。これが誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎は、2017年から、厚労省の「死因統計」の独立した項目に追加されました。それまでは「肺炎」に含まれていました。お役所が、誤嚥性肺炎に注目し始めたことを示していますね。
「間質性肺炎」のこと
間質性肺炎の進行のようす (慶応義塾大学病院医療・健康情報サイトからの引用)
肺は、肺胞というブドウの房のような小さな袋が、たくさん集まってできています。
一般的な肺炎は、口や鼻から入った細菌やウイルスが肺胞の内部(空気が入る部分)や気管支で増殖した時、それを免疫細胞が攻撃することによって起こる炎症のことをいいます。
一方、「間質性(かんしつせい)肺炎」は、「間質」で起こる炎症です。
「間質」というのは、肺胞の壁や、肺胞をとり囲んで支持している組織のことをいいます。
多くの場合、間質に炎症が起こると、肺胞の壁が厚く硬くなって、毛細血管が押しつぶされ、肺胞と毛細血管との間で行う酸素と二酸化炭素の「ガス交換」ができにくくなります。そのため、呼吸が苦しくなります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※東京逓信病院のホームページは、間質性肺炎のことを分かりやすく次のように紹介しています。
「間質性肺炎は語尾に肺炎が付きますが、肺炎とは全く異なる病気です。肺という臓器をコップにたとえると、コップの中で起こる病気が肺炎で、コップ自身が侵される病気が間質性肺炎です。間質性肺炎の方がより広い範囲で病気が起こり、息切れなどの症状が強くなります。治療もコップの中を洗えば済む肺炎に比べ、コップ自身の修繕が必要な間質性肺炎は一般的に難治性です。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
間質性肺炎の原因は、ほとんど不明です。ただ、知らないうちに吸い込んでいるほこりやカビ、抗がん剤、関節リウマチなどが原因のケースがあります。最近では、たばこも原因の1つと考えられているようです。
間質性肺炎は、治る病気ではなく、徐々に進行するそうです。病気の進行を緩やかにすることが期待される薬もあるようですが・・・。
【参考資料】
①「『肺炎』に殺されない!36の習慣」(生島壮一郎・日赤医療センター前呼吸器内科部長著、2019年発行、すばる舎)
②日本呼吸器学会ホームページ
ほか
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~