北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

からだの豆知識⑭「エネルギー」は細胞内のミトコンドリアでつくられる

 

 私たち人間が体を動かそうとするとき脚の筋肉を縮めないと脚が前に出ませんね。筋肉を収縮させるためにはエネルギーが必要なんですが、そのエネルギーというものは、体のどの部位でどのようにして作られているんだろう・・・

 

 というわけで、ちょっと調べてみました。

 

 

目次

 

 

 

エネルギーは細胞の中で作られる

 

 筋肉はたくさんの細胞からできています。その細胞のことを「筋細胞」とか「筋線維(きんせんい)」と言います。

 エネルギーは、この筋細胞の中のミトコンドリアという小さな器官で作られます。

 

 

 

 

 上の図は、1つの「細胞」の中の様子です。真ん中に「核」があって、そのほかにミトコンドリアをはじめ、小さな器官があります。(『解剖生理をおもしろく学ぶ』増田敦子・了徳寺大学教授著、サイオ出版発行から引用)

 

 

 

 

素材は主に「ブドウ糖

 エネルギーの素になるのは、主に「糖質」という栄養素です。

 

 

「糖質」とは?

 糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたもので、ごはんやパン、うどん、果物などに多く含まれています。

 この糖質は小腸で消化酵素によって分解されて、「ブドウ糖」になります

 ブドウ糖は「グルコース」とも呼ばれますが、同じです。

 

 ブドウ糖は小腸の毛細血管に吸収された後、肝臓につながる「門脈」という血管に入り、肝臓に行きます

 

 

 

 

ブドウ糖は筋肉と肝臓に蓄えられる

 ブドウ糖は肝臓に着くと、ブドウ糖同士がつながって「グリコーゲン」という化合物になって肝臓に貯蔵されます。 主に血液中のブドウ糖の維持が仕事で、必要に応じてグリコーゲンをブドウ糖に分解して血中に放出し、血中のブドウ糖のレベルを一定に保っています。

 

 ほかのブドウ糖は、血液に溶け込んでいる時に、骨格筋(=骨にくっついている筋肉)に取り込まれ、「筋グリコーゲン」という名前で筋肉に蓄えられ、登山やマラソンをはじめとした運動時に、筋肉が収縮する時のエネルギー源として働きます。エネルギーを使って筋肉を収縮させることによって手足の「骨」が動くわけですね。

 

 

 

 

ブドウ糖がエネルギー源になるまでの流れ

 筋肉の細胞に入ったブドウ糖は、細胞の中で段階的に分解されていくうちに、エネルギーを産み出します。その手順ですが・・・。

 

 

 ブドウ糖はまず、1つひとつの細胞のなかの「細胞質」と呼ばれる場所で分解されて、ピルビン酸という物質になり、同じ細胞内の「ミトコンドリア」というソーセージのような形をした器官に送り込まれます。

 このミトコンドリアの中でエネルギーが生産されるのです

 

 ピルビン酸ミトコンドリアの中に入ると、呼吸によって「肺」に取り込まれる酸素を使って分解され、最終的に「二酸化炭素」と「水」になりますが、その時、同時にATP」(アデノシン三リン酸)という化学物質が合成されるのです。体では毎日、大量のATPがつくられ、そして消費されているのです。

 なお、ATPができる時に、「二酸化炭素」は肺から、「水」は腎臓からそれぞれ排出されます。

 

 

 

ミトコンドリア」の詳しい話

 ここからしばらく、細かい話になりますが・・・

 

 人間の体は約37兆個とも60兆個ともいわれる数の細胞でできているのですが、ミトコンドリアは赤血球など一部を除くほとんどの細胞にあり、1つの細胞に、数百から数千個存在します。

 ミトコンドリア細胞の中酸素を使ってエネルギーを生み出すために、「エネルギー産生工場」などといわれます。

 

 

 上の図は、日本生物物理学会のホームページからの引用です。

 図は、光学顕微鏡で観察したマウスの細胞のミトコンドリア。緑色にみえる、ヒモのようなものすべてがミトコンドリア。中心部の黒く見えるものは細胞の「核」。

 ミトコンドリアの形は、運動生理学の参考書にはピーナツやソーセージのように描かれていますが、実際の生きた細胞の中のミトコンドリアは、細胞質全体に網のように広がっていて、融合と分裂を繰り返しているそうです。

 

 

 

 

ATP」という化学物質の話

 

 ミトコンドリアの中で合成された「ATP」という物質のことですが、この化学物質がエネルギーの最終的な蓄積源となって、筋肉を収縮させるわけです。

 

 「ATP」の正式名は、アデノシン三リン酸

 

 ATPの構造は、上の図の通りです。

 アデノシンという分子に、「リン酸」というイオンが3つくっついた構造をしています。

 2つ目のリン酸イオンと3つ目のリン酸イオンをつなぐ結合は、高いエネルギーを持っており、なおかつ切れやすい結合。この結合が切れる時、つまり、3つあるリン酸イオンの1つがATPの結合から外れる時に、エネルギーが発生するのです。

 そのエネルギーを使って、筋肉の収縮をはじめとしたいろいろな生命活動が行われます

 ATPは、3つ目のリン酸イオンが切れると、ADP(アデノシン二リン酸)になりますが、糖質や脂質を口から取り入れることによって、ADPをATPに戻す(=再合成する)ことができ、それによって運動を続けられるのです

 

 

 

運動中に再びATPがつくり出されるという不思議!

 筋肉を収縮して体を動かすためには、エネルギーが必要なわけですが、運動をする前に筋肉に蓄えられているエネルギー源のATPは、非常に少ないのです。

 

 ですが、不思議なことに、体には、一度使ったATPをリサイクルして、再びエネルギーを作り直すという便利なシステムがあるのです。

 そのシステムを「再合成」といい、3つの方法があります

 

【1】手っ取り早いのは、骨格を動かす筋肉(=骨格筋)に貯蔵されている「クレアチンリン酸」という物質を分解して、その「リン酸」を「ADP」に渡す作業です。この作業はそれぞれの細胞の中の細胞質という場所で行われます。

 この作業では、栄養素として糖質や脂質を必要としないために「ATP」を一番早く合成できます。しかし、ストックがごくわずかですので数秒で終わってしまいます。短距離走の時のエネルギー源になります。

 

【2】食事によって摂取され、筋肉に蓄えられていたブドウ糖が細胞内の細胞質分解される時、「ATP」が作られます。しかし、これも量は少ない。

 

【3】ブドウ糖や、内臓脂肪の分解でできた脂肪酸が、細胞内のミトコンドリア」という小器官に入り、呼吸によって取り入れた酸素と反応して分解する時、ATP」が合成されますこれは多量です。エネルギーの90%以上は、ミトコンドリアで産み出されています。

 

 

 

激しい運動では「脂肪」は落ちない!

運動の強度によって、使われるエネルギー源が異なる

 上の図は。「1から学ぶスポーツ生理学」から引用。

 

 運動時に、3つある再合成のシステムのうち、どれが使われるかは、運動の強度と運動の継続時間によって変わります。いくつかの研究結果をまとめると、概略で次のようになります。

 

 

運動強度が低い時、エネルギーは「脂質」から

 ウォーキングぐらい軽い長時間運動で使われるのは、主に脂質です。

 脂質は、一般的に言う「脂肪」のことです。脂肪は体内で「中性脂肪」という形で脂肪細胞に貯めこまれています。脂肪がある場所によって、「皮下脂肪」か「内臓脂肪」といわれます。

 

 軽い運動をすると、脂肪細胞にたまっている中性脂肪が、脂肪酸グリセリンに分解され脂肪酸がエネルギー源として筋肉の細胞の中のミトコンドリアに運ばれていきます。

 そこで脂肪酸が酸素と反応して、エネルギーを産み出すATPという化学物質に変わるわけです。

 

 

 

運動強度が上昇すると「ブドウ糖」の出番に

 ランニングのような息が上がってしまうほどのきつめの高強度の運動の場合、筋肉や肝臓に蓄えられているブドウ糖基本的なエネルギー源になります。

 ただ、ブドウ糖が枯渇してくると、それを補てんするため脂肪酸も使われるようです。

 フルマラソンで、30キロすぎあたりでブドウ糖がなくなると、ガス欠で走れなくなるそうです。この場合、脂肪は内臓などにたっぷり貯蔵されているにもかかわらず、使われない。

 登山のような中強度の運動も同じで、2時間近くブドウ糖をとらずに登り続けていると、経験上、スピードが落ちます。シャリバテですね。そんな時に、アンパンを口に放り込むと、すぐにエネルギーになるのでじきに回復します。

 

 

 

≪参考資料≫

◆中里浩一・日体大教授ら『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ発行)

◆東田一彦・滋賀県立大准教授『運動時のエネルギー代謝糖質制限食』(独立行政法人農畜産業振興機構HP)

◆ほか

 

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