ミーンミンミンミンミー♪ ミーンミンミンミンミー♪
真夏の風物詩といわれるセミの鳴き声が耳に響く時期になりました。
東京のわがマンションには、朝5時ごろから「ミーンミンミンミンミー」という音が聞こえてきます。ミンミンゼミの鳴き声です。
子どものころ、田舎で聞いたセミの鳴き声は「シャーシャーシャーシャー」で、もっと大きくて迫力すらありました。
地域によって住むセミの種類が違うんですね。
猛暑が続く2024年8月3日(土曜日)午前11時、ひょんなことから東京のセミの鳴き声に耳を傾けてみようという気になり、大田区立平和の森公園に出かけました。
目次
小学生のころのセミ採りの思い出
空き家。(2012年春撮影)
生まれてから高校を卒業するまで、愛知県のへき地に住んでいました。
夏の朝、5時ごろになると庭の植木にいるセミが「シャーシャーシャーシャー」と鳴き始めるんです。うるさくて目を覚ましました。
木に止まっているセミを、「タマ」と呼んでいた虫とり網(=標準語では「タモ」)で捕まえようとすると、おしっこをかけて逃げるんですね、クマゼミは。
日が暮れると、妹や弟を連れて家の前の小学校の森に行きました。土の中から直径1センチぐらいの穴が開いて、セミの幼虫が顔を出したところを引っ張り出すんです。
幼虫の一部は近くの木を登り始めていますので、懐中電灯で幹を照らして捕まえました。
もう50年以上も前のことですが、当時田舎では蚊に刺されないように寝る時には「蚊帳(かや)」という網を、8畳間に天井の4すみから吊り下げて、その蚊帳の中に布団を敷いて雑魚寝していました。(貧困だからでしょうかねえ)
蚊帳(かや)。(ウィキペディアから引用)
その蚊帳の網の内側に、小学校の森で捕まえてきたセミの幼虫をはわせて、眠ったものです。
朝目覚めて、幼虫が殻を脱いで立派になった姿をみるたびに、感動したものです。
幼いころの夏の遊びでした。
大田区立平和の森公園
「平和の森公園」は、運河を埋め立てて造った大田区内で最大の広さを誇る公園だそうで、森林やスポーツ施設があります。
樹林に一歩踏み込むと、直径1センチほどの穴がボコボコ開いていました。
セミの幼虫が出てきた穴です。
セミの生態
セミの抜け殻。
セミは次のような流れを経て、地上に姿を現すようです。
①セミのメスは、木の樹皮や枝に8月のお盆すぎごろ卵を産みます。
②1年以内に卵が孵化(ふか)して白色の幼虫になります。
③幼虫はポトポトと地面に落ちて、アリに見つかる前に土の中に潜ります。そして木の根っこを目指して土を掘り進み、根に取り付いて樹液を吸い、時間をかけて生育します。幼虫は徐々にあめ色になりますが、幼虫でいる期間は解明されていません。
④幼虫は時期が来ると地表に小さな穴をあけ、暗くなってから穴をはいだして近くの木に登ります。幹にへばりついたままの幼虫もいますし、もっと先の枝や葉っぱまで進む幼虫もいます。そして暗い夜の8時すぎごろから背中がタテに割れ、成虫へと羽化(うか)していきます。
⑤羽化したセミは3週間程度、生きます。
葉の上で羽化した幼虫の抜け殻。
羽化に失敗した幼虫もいます。
地上に出て鳴いたり卵を産んだり、木から木へと飛び回ったあと、命が尽きてしまいます。はかない命です。
東京あたりで一番よく聞こえるセミの声は「ミンミンゼミ」
昼前に平和の森公園に着いたとき聞こえたセミの鳴き声は2種類。「ミーンミンミンミンミー♪」と「シャーシャーシャーシャー♪」でした。
「ミーンミンミンミンミー♪」というミンミンゼミの鳴き声に近づいてデジカメを構えようとすると、サッと飛び立ってほかの木に移ってしまいます。なかなか写真を撮れません。
見えますか?木に張り付いているミンミンゼミ。
やっと捕まえたミンミンゼミ。淡い緑色の身体で、美しく上品でもあります。
「シャーシャーシャーシャー」と鳴いていたのはクマゼミですが、姿は見えませんでした。
アブラゼミ
木にベタベタくっついていて、よく目にしたのはアブラゼミでした。
このアブラゼミは羽が茶色で、全国の雑木林でごくふつうにいるセミです。
「ジリジリジリ・・・」という鳴き声が、油で揚げ物をするときの音に似ているので、アブラゼミと呼ばれるようになったという話です。
でも、昼前は鳴いていませんでした。
アブラゼミが鳴くのは、「昼以降、夕方まで」という話があります。
確かにこの日の夕方、わがマンションの前の児童公園の樹木で「ジリジリジリジリ・・・」という声がしていました。
クマゼミ
クマゼミのお腹。左が鳴くオスです。(「セミハンドブック」から引用)
幼いころみたセミは、ほとんどが「シャーシャーシャーシャー」と泣きわめくクマゼミでした。まれにアブラゼミを見るぐらいでした。
セミの研究の第一人者、税所(サイショ)康正さんによると、クマゼミはもともと三浦半島(神奈川県)が北限で、本州、四国、九州で生息していました。ところが近年は植物の移植の関係で東京や埼玉でも鳴き声を聞くようになったそうです。
【参考資料】
「セミハンドブック」(税所康正著、文一総合出版、2019年5月発行)