お盆にキュウリとナスで作った「おしょろさん」。(「小さなお葬式」のHPから引用)
8月13日から16日までは、東京と一部の地域を除いて「お盆」ですね。
お盆休みの方も多くて、帰省ラッシュです。
この時期になると、幼いころ愛知県の太平洋側の片田舎で行われていた「おしょろさん」という風習を思い出します。その話です。
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おしょろさん
お盆には、ご先祖さんや亡くなった大切な人の「霊」が一時的に帰ってくるという言い伝えが仏教にあるようです。
その「霊」の乗り物のことを「おしょろさん」といったようです。
私が生まれ育って家は、曹洞宗という仏教の宗派でした。
8月13日の昼ごろになると、祖母がキュウリやナスに割りばしを刺して動物の「足」のようにし、それをなんと、仏壇に供えたのです。
奇妙なことをするもんだと、子ども心に思ったものです。
のちに知ったことですが、キュウリは馬、ナスは牛を表したとか。
「足の速い馬に乗って家に早く『霊』を呼び寄せ、あの世に帰る時には牛の背に乗ってゆっくり去ってもらおう」という思いが込められていたようです。
その8月13日の夕刻になると、玄関先で松の木をチロチロと燃やしました。「霊」が迷わないようにという目印です。「迎え火」と呼んでいました。
そして、お風呂に入って身を清めてから、お寺さんにお参りに行きます。ここでもお墓の前で火を焚きました。
精霊流し
8月15日の夕方になると、こんどは「精霊流し」(=しょうろうながし)が行われました。
精霊流しは長崎県などでいまも伝統行事として毎年8月15日に行われる有名なイベントですが、私の田舎のそれはくらべものにならないほど地味でした。
こちらはタテヨコ30センチ程度の小さな箱のようなもの(=記憶があいまい)に、キュウリやナスで作ったお供え物を乗せ、ろうそく(=たぶん)をともして自宅裏の川に流しました。
「霊」をあの世に送る行事ですね。
近所の人たちも同じようにしていたので、明かりのともった精霊舟(=しょうろうぶね)が暗闇の中をいくつも河口に向かって流れて行った光景を思い出します。
あれからうん十年。環境保護の観点から、あの風習はいつの間にか廃れたようです。
条例で川に流すことができなくなったのかもしれませんね。