高尾山のケーブルカー乗り場。
これは意外でした。3、4回しか行ったことはありませんが、あんな低い山が「遭難者数・日本一」だとは・・・。
警察庁が2024年6月に公表した統計資料「令和5年(2023年)における山岳遭難の概況等」をみましたら、東京都心から電車で1時間足らずで行ける「高尾山」が、日本で一番遭難者が多い山だというんです。
目次
「警察庁」と「警視庁」の違いは?
「警察庁」というのは、都道府県の警察を「指揮監督」する国の中央省庁の1つです。
犯罪の捜査で現場に立つことはありませんが、治安を揺るがす事件や広域の組織犯罪では各県警を指揮しますし、事件や事故の統計の取りまとめや法案の検討などをする役所です。職員の身分は国家公務員です。
一方の「警視庁」は東京都に置かれている警察組織で、いわば「東京都警察」。ほかの北海道警や三重県警などと同等の位置づけの地方公務員です。
「高尾山」で133人も遭難!
その「警察庁」が公表した資料をみますと、昨年2023年(令和5年)は山の事故が過去最多だったそうです。
遭難事故は全国で3126件起こり、遭難者数は3568人に上りました。
そのうち「死者・行方不明」は1割ほどの335人。
しかしながら遭難した人のおよそ半数の1833人はけがもなく「無事救出」されました。持って行ったスマホで救助要請できたからかもしれませんね。
ここから先がポイントですが、昨年1年間に発生した山岳遭難の「場所」を都道府県別にみますと、一番多かったのは日本アルプスがそびえる「長野県」で302件(332人)でした。
長野に次ぐのがどこかと思ったらなんと「東京都」で、214件(233人)に上っていました。
東京のどこで遭難しているの?と思ったら、「高尾山」が多いんですね。ビックリしましたわ。
上の図をみますと、真ん中の高尾山では、133人が遭難しています。
富士山の97人、北アルプス穂高連峰の80人を上回っているんです。
高尾山はわずか標高599メートルの山なんですが・・・。観光気分で訪れる人が多いことが背景にあるんでしょうね。中腹までケーブルカーやリフトがあり、舗装された「1号路」を歩けば山頂に着いてしまいますからね。
高尾山での【遭難】は転倒・滑落・道迷い
山頂。
警視庁高尾警察署の山岳救助隊のホームページをのぞいてみました。
データが2年前から更新されていないので最新情報は分かりませんが、遭難内容の傾向は分かります。
それによると、「転倒」「滑落」「道迷い」による遭難事故が発生しています。
7本あるハイキングルートのうち、急な斜面があって木の根も露出している「4号路」や「6号路」は「転倒」「滑落」が起こりそうです。木の根でつまずいたり、雨が降った後の足元の悪い場所で足を滑らせてひっくりかえり、ねんざや骨折をするのでしょうね。
舗装された「1号路」でも、下山時に脚の疲れから滑って転ぶ人がいるようです。
「道迷い」は夕暮れから夜になって周囲が暗くなり、自分がどこを歩いているのか分からなくなるようです。
死亡事故の事例
高尾山の遭難で、死に至った事故の件数・事例は警察が公表していないので分かりません。
ただ、ネットで検索すると2件ヒットしました。
■2015年12月23日
4号路での滑落事故。浄心門と吊り橋の間。
60代の運動靴の男性。
がけ下30㍍ぐらいの地点で発見。
■2017年元旦
6号路(琵琶滝コース)の途中。
70代男性が急斜面を約70メートル滑落。
遭難防止・・・どう対処する?
「転倒」を防ぐには、木の根っこや傾いた岩の上に、くつをおかないことが基本でしょうか。
それと斜面やぬれた地面では、かかとから着地するのではなく、靴底全体で真上から着地することを心掛けることが大事ですかね。
「道迷い対策」。これは高尾山に登る人の多くが観光気分なために「ヘッドランプ」を持っていないことが背景にあるんでしょうね。日没後は案内板の文字も見えません。山には街灯はないんです!
釈迦に説法ですが、登山の基本装備をあらためて書いておきますと・・・。
★スマホなど携帯電話
★ヘッドランプ
★紙の地形図とコンパス(⇐スマホのほかに)
★雨具
★銀色のレスキューシート
★非常食(⇐ソイジョイのたぐい)
★水
★応急セット
高尾山山頂からの富士山のながめ。(2024年12月14日午前撮影)