目次
- 【jRO(ジロー)】は互助会組織ではなくなってしまった!
- 都岳連とjRO(ジロー)との関係
- これまでのjRO(ジロー)のスタイル
- jRO(ジロー)の転機
- 「ココヘリ」の仕組み
- 「遭対協」の出動は自己負担!
- 山岳保険を探して新年度から入ります
【jRO(ジロー)】は互助会組織ではなくなってしまった!
暮れも押し詰まった2024年12月26日夜のこと。
東京都山岳連盟(略称:都岳連)が傘下の社会人山岳会の代表や個人会員を事務局に集め、時ならぬ「説明会」を開きました。
先ごろ、会員が10万人もいた遭難対策互助会タイプの『jRO(ジロー)』が、『ココヘリ』というヘリコプターによる捜索サービス会社に買収されたために、古くからのジロー会員の間で「遭難救助に出動した遭対協の救助隊員の日当は、今後は遭難した人が自己負担するのか?」「ジロー会員という形で残るメリットはあるのか?」などと都岳連事務局に疑問の声が多く寄せられているため急きょ開かれたのです。
90分間の身内同士でのやり取りでしたが、納得してお帰りになったのでしょうか。
『ココヘリ』の会員には、「発信機」を貸与される「正会員」と、発信機を持たない「準会員」の2つのタイプがあります。
「準会員」は「ジロー会員」とも呼ばれます。
私は無線機を持たない「ジロー会員」です。
親しんできた「ジロー」がどう変質したのかを調べ、自分なりに頭の整理をしました。
都岳連とjRO(ジロー)との関係
「ジロー」は2008年、当時、東京都山岳連盟が運営していた「都岳連山岳遭難共済」を引き継ぐ形でスタートしました。
そのため都岳連にはジロー会員が多くいます。
これまでのjRO(ジロー)のスタイル
これまでは、ジロー会員が山で遭難した場合、100番通報を受けた警察は必ずと言ってよいほど民間の各地区遭難対策協議会(略称:遭対協)の救助隊員に出動を要請します。「現場を見てきてくれ」と。
捜索・救助に出動する遭対協メンバーは全員ボランティアで、山小屋の小屋番だったり山岳ガイドだったり、地元の自営業者、公務員だったりします。行動はあくまで警察の指示に従います。
救助されたジロー会員あるいはその家族・遺族は、かかった費用を遭対協に支払うのですが、ジロー会員は全員で負担し合う仕組みを大事にしてきました。
ジローという制度は、山仲間の相互扶助の精神に基づいたもので、いわば互助会でした。
ジローが、1個人に支払う費用の上限は550万円でした。主な費目は以下の通りです。
▼警察から真っ先に出動要請があるのは、山小屋のスタッフら遭対協の救助隊員で、彼らに払われる「日当」「交通費」「保険料」「食費」「宿泊費」など。
▼捜索・救助活動に使った「器具」「シュラフ」「ロープ」などの費用。
▼民間ヘリの場合の利用料、ドローンによる捜索費
▼その他、「親族らの捜索現場などへの駆け付け費用」「遺体搬送費」「関係機関への謝礼費用」など。
ジロー会員1人が1年間に負担する費用は、年会費2200円(税込み)と「事後分担金」でした。
「事後分担金」というのは、組織としてのジローが1年間に支払った捜索・救助費用の総額を、ジローの会員総数で割った金額です。
会員が10万人もいましたから「事後分担金」は毎年、200円か300円でした。
jRO(ジロー)の転機
「コロナ禍」がすべてを変えました。
『ジロー』が、会員制の山岳遭難捜索サービス『ココヘリ』を運営する会社に買収されたと分かったのは、2022年7月1日でした。
『ココヘリ』を運営する【AUTHENTIC JAPAN株式会社】(オーセンティックジャパン)という会社が、自分のHPで「2022年6月30日、jROを子会社化いたしました」と発表したためです。
オーセンティックジャパンによると、コロナ禍で登山者が減った時、『ココヘリ』側から『ジロー』側に「1つになろう」と提案したようです。
『ココヘリ』側は2023年6月、新制度を発表。ジローが続けてきた「捜索・救助費用の補てん」という仕組みをなくして「完全役務提供型」に改め、サービス提供の上限を550万円と決めたのでした。
会員制度も「ココヘリ正会員」と「ココヘリ準会員」(別名:ジロー会員)の2つのタイプになりました。
「ココヘリ」の仕組み
「ココヘリ」の規約なるものを数日前、初めて開いて読みました。制度は大筋、以下のように書かれています。
『ココヘリ』は、会員が山岳遭難した時に、【提携機関】を通じ、年間550万円を上限に、「捜索と救助のサービス」を提供する仕組みです。
【提携機関】とは、ココヘリ運営会社と連携して捜索活動をする企業その他の団体・個人、および地上救助活動をする企業その他の団体・個人の総称です。
遭難した「正会員」の捜索は、「受信機」を積んだ【提携機関】の民間ヘリコプターが上空から実施します。
遭難した登山者が携行している「貸与発信機」が発する電波を探知し、遭難者の居場所を特定する、という建て付けです。
ただし、【提携機関】の民間ヘリは捜索するだけであって、見つけた遭難者を即座に救助(=第1次救助)することはできません。警察・消防に「位置情報」を通報するだけです。
≪規約第2条(定義)≫
≪規約第10条(救助)≫
「救助」に関しては「ココヘリ」の出番は限定されています。救助活動は原則的に警察と消防の仕事ですから。
「規約」では、ココヘリが会員に提供できるのは「第2次救助」という書き方をしています。
つまり、警察や消防という公的機関が行う「第1次救助」が、一定期間を過ぎて救助活動を終えたあと、遺族の要望などを踏まえてココヘリが提供するのが「第2次救助」で、その「第2次救助」も【提携機関】を通じて「地上に限定」して行うと規定されています。
「遭対協」の出動は自己負担!
上の写真は、『ココヘリ』を運用する会社が出したパンフです。
遭難者やその家族に「自己負担が発生するケース」の1つとして、「遭難対策協議会が出動した場合」を挙げています。
『ココヘリ』は遭対協に出動を要請できる間柄ではなく、ましてや要請する権限もないため、警察の要請で遭対協が出動した場合、「日当」などの費用は負担しません、ということのようです。
山岳保険を探して新年度から入ります
規約第8条2項に、厭味ったらしく、次のように書かれています。
「準会員(ジロー会員)に対して提供できる捜索活動では、貸与発信機が発する電波を探知受信機を用いた捜索を実施することができないため、捜索活動が長期化する可能性があります。」
私は去ります。