北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

からだの豆知識⑮76歳で知人が認知症に・・・原因や治療の話

 

 元日に配達された年賀状を見て、がく然としました。

 「父ですが、毎年の年賀状をしたためることも難しくなってまいりました。今後の年始のご挨拶については今年限りで失礼します。」という文面でした。

 

 差出人欄には、76歳の先輩の住所と名前が印刷されていましたが、文面の走り書きは娘さんからでした。

 

 2年ほど前に先輩に会った時には、同じことを繰り返して言うため奇異に思い、その後、身の回りのことを一人でできなくなって老人ホームに入ったと知った時にはビックリしましたが、「76歳」で認知症とは・・・ショックでした

 

 「認知症」について、調べたことを分かりやすくまとめてみました。

 

 

目次

 

 

 

認知症」ってどんな病気?

「病名」ではなくて「症状」だよ

 

 認知症は「病名」ではありません

 人間の脳が行っている「認知機能」が鈍くなって、自分のお金の管理や部屋の片づけ、買い物を一人でできなくなるケースが分かりやすい例です。

 

 脳の認知機能というのは、目や耳、口、鼻、手足などから入ってくる情報を脳で飲み込んで、過去の経験に照らし合わせてどのように行動するかを判断する脳の働きのこと。これが失われた「状態」が認知症です。

 

※世界保健機構(WHO)が作った国際的な統一基準「国際疾病分類」による認知症の定義は「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、判断など多数の高次脳機能の障害から成る症候群」とされています。

 

 

 

どのくらいの人が認知症になっているの?

 いったい、認知症の人はどのくらいいるんでしょう。厚生労働省のホームページによりますと、65歳以上で認知症の人は約600万人と推計されており、2025年には約700万人が認知症になると予測しています。これは65歳以上の5人に1人という割合です。

 別の資料には、95歳以上では5人のうち4人、つまり8割が認知症だとありました。そうかもしれませんね。

 

 

どんな症状がでるの?

 

 認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」に分けて説明されています。

 中核症状というのは必ず現れる症状のことで、例えば、もの忘れが多い記憶障害自分の居場所や日付・曜日、目の前にいる相手など自分を取り巻く状況を判断できない見当識(けんとうしき)障害言葉が出てこない言語障害などです。

 

 行動・心理症状は、 中核症状によって引き起こされる二次的な症状で、はいかい、暴言、暴力などの症状を言います。

 

 

 

認知症はどうして起こるの?「原因」は何なの?

 

 人間の脳は1000億個以上の神経細胞からできていて、巨大なネットワークができています。神経細胞は電気信号を発して「情報」をやり取りしているのですが、その神経細胞が壊れることで認知症を発症するのです。

 

 認知症を起こす一番多い「病気」はアルツハイマーです。認知症7割近くが「アルツハイマー認知症に分類されています。

 

 

 

 

アルツハイマー病」って何?

 アルツハイマー病の根源的な要因は「老化」です。

 老化によって神経細胞アミロイドβ(ベータ)というタンパク質を産み出し、周囲に放出します。若いうちは酵素によって分解されてすぐに壊されるのですが、40歳を過ぎると分解されずにゴミとなって神経細胞の周りにたまるようになり、老人斑と呼ばれるシミができます。 

 このアミロイドβが老人斑としてたまり始めるのを引き金に、10年もすると今度は神経細胞の周りではなく神経細胞の中に「タウ」というタンパク質が異常にたまり始めます。

 その結果、神経細胞が死んでいき神経細胞のネットワークが崩れることによって脳が委縮。記憶力や思考力が損なわれ、認知機能が低下します。

 こうしたアミロイドβやタウタンパク質の蓄積が原因で認知機能が低下する病気がアルツハイマーです。

 

 アミロイドβの蓄積は、認知症の症状が出る「20年以上前」から始まっていると考えられています。しかし、そのようなメカニズムで始まるのかは、分かっていません。

 

 

 

 

 

アルツハイマー認知症」ってなんのこと?

 アルツハイマー認知症は、「アルツハイマー病」という病気になった結果、認知症が始まった事例をいいます。

 このタイプが一番多いのですが、ほかにも「血管性認知症」とか「レピー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」などいろいろあります。

 

 

 

 

「血管性認知症」というのは?

 血管性認知症は、脳梗塞脳出血など脳卒中の結果、障害を起こした部位から先の神経細胞に酸素や栄養素が届かなくなって認知症になる状態を指します。

 脳血管障害が起こるたびに、認知機能は階段状に低下していきます。現れる症状は認知症のほかに、手足のマヒ、飲み込みの障害、失禁など見られます。

 原因は高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や心臓病など。

 この血管性認知症は、全体の認知症のうち2割を占めます

 

 

 

脳梗塞から認知症になった私の父の事例

 

 私の父は2007年4月3日、愛知県田原市の病院で満78歳で亡くなりました。直接の死因はMRSA感染による「肺炎」と診断されましたが、亡くなる12年前の1995年以降、脳梗塞の発作を繰り返しており、2004年の4回目の脳梗塞で左半身がマヒして歩けなくなり、言語も不明瞭になりました。

 入院から3ヵ月後に退院し、田原市豊橋市の介護老人保健施設グループホーム特別養護老人ホームを4ヵ所転々としました。

 その間、東京から何度か会いに行きました。いつも車いすですが、私の顔を見ると怖い顔つきになって車いすから立ち上がって殴りかかろうとするポーズをとりました。ショックでした。悲しい思い出です。

 居合わせた母に対しては、「校長の時にアンタにお金を預けたが、あれはどうした」とか、「今から学校に行く」などと妄言を口走っていました。私が母に、「もう、頭が壊れているよ」と告げても、母は「そんあことはないよ、私が話しかけると、ちゃんと理解している」と認知症を認めようとしませんでした。(父は小学校の元校長)

 これが脳梗塞を原因とする血管性認知症なんですね。

 結局、入退院を繰り返した田原市の病院では「認知症」という症状の診断はなされず、亡くなる半年前の5度目の脳梗塞の時には、体力低下のために脳梗塞の新たな治療は受けられませんでした。

 

 

 

 

「もの忘れ」と「アルツハイマー認知症」は違うの?

 

 年をとると、もの忘れが多くなってきます。でも、「老化によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」は違います。

 

 老化によるもの忘れは、記憶を思い出す機能が低下するために思い出すのに時間がかかるだけで、さしあたり心配はなさそうです。

 

 よく例示されるものを載せておきます。

【A】は認知症、【B】は老化です。

 

【A】ごはんを食べたこと自体を忘れる。【B】食べたことは覚えているが、何を食べたか思い出せない。

 

【A】体験そのものを忘れる。【B】体験の一部を忘れる。

 

【A】約束したこと自体を忘れる。【B】約束ごとを忘れたが、約束したことは覚えている。

 

【A】ヒントがあっても思い出せない。【B】ヒントがあれば思い出す。

 

 

 

 

認知症はどうしたらなおるの?

認知症はなおりません

 

 認知症で一番多いのがアルツハイマー認知症ですが、健康な状態に戻す治療法はありません。

 ひとたび認知症になると、治る、ということはないのです。

 症状が悪い方向に進むスピードを抑えることを目標に治療は行われます。薬を使うこともありますが、認知症の進行を完全に抑えるものはありません。

 

 

 

 

 

アルツハイマー病」の治療薬に動きあり

エーザイが米企業と開発中

 発表文の一部と、共同通信社配信の図

 

 


 認知症を引き起こす病気の1つにアルツハイマーがあります。

 このアルツハイマー病の治療薬を、日本の製薬大手「エーザイ」とアメリカの製薬企業「バイオジェン」が共同で開発を進めてきましたが、1月7日に米食品医薬局(FDA)に「迅速承認された」と発表しました。

 

 病気の原因となる物質を脳の中から取り除いて、認知症が進むスピードを緩やかにする効果が期待できるかもしれません。「エーザイ」は日本でも近々、販売承認の申請をするという話です。

 

 治療薬の名前は「レカネマブ」。投与対象者は、脳内にアミロイドβがたまり始めた発症早期の患者。レカネマブを静脈に点滴で投与すると、脳内に蓄積しているアミロイドβにくっついて除去するとしています。その結果、神経細胞周辺のアミロイドβが減って、認知機能の悪化を遅らせる効果が期待できるといいます。

 アメリカの迅速承認制度は仮免許のような位置づけで、正式承認を得るには追加試験で効果を確認する必要があります。

 

 

 

認知症は「予防」できるんですか?

 

 認知症を一生の間「予防」する方法は、開発されていません

 ただ、認知症になるのを遅らせる、とか、認知症になっても侵攻を緩やかにする方法の研究は行われています。

 

 これまでの研究では、認知障害が軽い段階、つまりもの忘れと認知症の始まりの段階を「軽度認知障害」といいますが、その場合は、適度の運動と「脳トレ」のような学習で進行を遅らせることができることもある、という指摘もあります。

 血管性認知症の場合は、動脈硬化が背景にあるわけですから、高血圧症や糖尿病にならないようにバランスのとれた食事とか運動を心掛けよ、といわれています。

 

 

 

【参考資料】

●「これでわかる認知症診療 改訂第3版」(浦上克哉・鳥取大学教授著、南江堂、2022年発行)

●「認知症予防 第3版」(山口晴保・群馬大学名誉教授著、協同医書出版社、2020年発行)

●一般社団法人「日本神経学会」HP

厚生労働省HP「こころの病気を知る」

ほか