北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

からだの豆知識⑬登山中の「あくび」「頭痛」・・・それは酸欠や脱水症状かも

 

 山登りの話です。

 急な斜面を登り下りしたりしていると、体の調子がおかしくなることがあります。

 脚がつった、頭がズキズキする、あくびが出る・・・・・

 その原因の多くは、「酸素不足」、あるいは「汗」をたっぷりかいたための「脱水症状」のようです。

 

 「あくび」と「脱水症状」について調べました。

 

目次

 

 

 

なんで「あくび」がでるんだろう

 標高1491㍍の神奈川県丹沢の塔ノ岳を登っている時に、「あくび」が出ることがあります。眠いなあ、と思うこともあります。

 

 あくびが出る仕組みはきちんと解明されていないようです。が、「脳が酸素欠乏だというサインでは」とか、「脳の温度を下げて37度ぐらいの適温にしようとしているのでは」という説を聞くことがあります。

 とにかく、人体を構成する細胞の機能を維持するために、「酸素」が必要のようです。

 

 富士山のような標高の高い山に登ると、「あくび」に加えて「頭痛」「吐き気」などを訴える人もいて、医師はその症状を「高山病」といっていますね。

 これは標高が高くなるにつれて酸素が薄くなり、人の体の血液中の酸素濃度が低くなるからです。「脳」は人間の臓器の中でもたくさん酸素を必要としますので、必死にいろんなサインを送るんでしょうね。

 

 「あくび」対策として、手軽にできるのは2つ。

 1つは、深呼吸をし、くちをすぼめてゆっくり、かつ、しっかり吐く。そうすればたくさん酸素を肺に取り込むことができます。

 もう1つは、汗をたっぷりかいた時、ナトリウムイオン入りの水分を補給して血流をよくし、「脳」にまで酸素がたっぷり届くようにする。

 効果は自分で確認済みです。

 

 

 

登山中の「脱水症状」について

 鹿屋体育大学の山本正嘉教授が「登山の運動生理学とトレーニング学」(2016年発行、東京新聞)という本で、【脱水による様々なトラブル】として次の症状を挙げています。

 ①熱中症②筋のけいれん③運動能力の低下④心臓への負担の増加⑤血液の粘性の増加⑥高山病⑦脳神経系の機能の低下⑧むくみ⑨凍傷

 

 自分の経験を踏まえて、脱水によってあらわれる症状を整理しました。

 

体の中の水分は、体重のなんと6割を占めている!

 体の「水分」のことを、まとめて「体液」と表現します。1人ひとりの体重の60%ぐらいが体液だそうです。

 

 人間の体は37兆個(約200種類)の「細胞」でできているのですが、体液というのは「細胞の中にある水分」「細胞の外の液体」「血管の中の血液の液体(=血漿)」、リンパ液などをいいます

 この体液には、水に溶けると電気を通す「電解質」と呼ばれる物質が含まれているのですが、特にナトリウムイオンとカリウムイオンは濃度が一定であることが大切で、濃度のバランスが崩れると体調不良になります。

 

 

 

「脱水症」の原因は、汗!

 体の中から体液が失われて体調が悪くなった状態を、脱水といいます。

 体の60%を水分が占めているわけですが、たった数%減っただけでもノドがかわいてきて体調がおかしくなり始めるわけです。

 登山で脱水が起こるのは汗を大量にかくためです。

 汗は主に、水とナトリウムからできていますが、体内からナトリウムが減っていくことによって体液の量と濃度が変化し、不都合な症状が出ます。

 

 

 

登山でよくある「脱水」の自覚症状

「尿の色が濃い」、もしかしたら?

 私の場合、登山中に尿意を催すとやむなく草むらに入りますが、おしっこが濃い黄色になっていることがよくあります。

 こんな時、「ポカリスエット」という商品名のスポーツドリンクをたっぷり飲むと脱水状態が改善されて、次からは透明に近い黄色に戻っています。

 

 

 

その「脚のつり」、もしかしたら?

 登山をすると、太ももの内側や裏側がよくつります。特に下山時に

 これは脚の筋肉にある電解質のバランスが崩れることが原因らしいです。筋肉には、いきすぎた筋肉の伸びや収縮を防ぐために、ブレーキをかけるセンサーのようなものがあります。そのセンサーが故障すると「脚がつる」という原理ですね。

 

 解説書をめくってみますと、脚の太い筋肉の横には筋紡錘(きんぼうすい)という筋肉の伸びを感知する感覚器官が並行して走っていて、筋肉が伸び続けるとそれはまずいので神経細胞を通じて「脊髄(せきずい)」に連絡。情報を得た「脊髄」は「縮みなさい!」と命令を出します。

 筋紡錘とは別に、もう1つの感覚器官が脚の筋肉の両端の「腱(けん)」にあります。ゴルジ腱器官(ごるじけんきかん)といいます。この感覚器官は筋肉が縮むと逆に引っ張られるので、「腱が切れてしまうぞ!」と注意信号を脊髄に送ります。

 ところが、ゴルジ腱器官が登山による疲労と発汗によって故障してしまうと筋肉の収縮を感知できなくなり脚がつってしまうというわけですね。

 

 

 

その「手の甲のむくみ」、もしかしたら?

 山の中を6時間ぐらい歩いて下りた後に、手の甲をみると、パンパンにはれていることが多いです。2、3日縦走した時には、顔がむくんでいます。

 これも「脱水」が原因の「むくみ」のようです。

 

 解説書によりますと、汗をかいて体液が減っていくと、体内の水分量を調節するため「バソプレッシン」というホルモンが活動を始めるとのことです。

 バソプレッシンというホルモンは、脳の視床下部(ししょうかぶ)という部位の神経細胞でつくられて、脳下垂体(のうかすいたい)という部位に蓄えられています。汗をかいて体液が減っていくと、このホルモンが血液中に分泌されて、「腎臓」に達します。

 このホルモンが腎臓に対し、体内の水分を再吸収するように促します。それによって、おしっこの量が減ります。そのため排出されるおしっこの色は濃くなるわけです。この作用からバソプレッシンは「抗利尿ホルモン」と呼ばれます

 

 そこで、尿とした排出されなくなった水分は、体内に蓄積されます。毛細血管の壁には細胞に酸素や栄養素を届けるためにごく小さな穴が開いていますから、その穴から水分が血管の外にしみ出します。そして、顔や手の甲、脚といった部位の「皮膚の下」に水分がたまって、「むくみ」という状態を起こすのです。「むくみ」は「浮腫」といいます。

 

 

 

その「頭痛」、もしかしたら?

 頭痛北アルプス涸沢(からさわ)のテント場(標高2300㍍)に着いた時は、よく起こります。脱水症状だと自分では思っています。

 なんで頭痛か、といいますと・・・。思うに、汗をたっぷりかくと、血液が濃くなって血流が悪くなることによって、「脳」に届けられる「酸素」が不十分になる。すると脳の血管は酸素をいっぱい引き込もうとして「拡張」する。それによって血管の周りにある「神経」が圧迫されて「痛み」が生じる・・・のではないかと、シロウトながら思います。

 頭痛がした場合でも、ポカリスエットの粉末を水で溶かしてたっぷり飲み、仮眠をとれば痛みは消えています。血流が改善されたといつも思っています。

 

 

 

「ビール」を飲んで吐く人、もしかしたら?

 昔、社会人山岳会にいた時、北アルプス縦走後に「スポーツドリンク」ではなく「生ビール」をゴクゴク飲んで、吐いた仲間がいました。アルコールを止めることができなかった私たちが悪いのですが、ビールなどアルコールは水分補給にはならないことを示しています。

 

 これも多くの解説書からの借りものですが・・・。

 ふだん、人間は「抗利尿ホルモン」の働きによって、おしっこが出る量をコントロールされているのですが、ビールなどアルコールには抗利尿ホルモンの働きを抑える作用があって、飲んだ水分以上の水分を体から出してしまうんです。確かに、ビールを飲むと、おしっこが近くなります。

 ビールを飲んだ場合、飲んだビールの水分が腸で吸収されるには時間がかかり、すぐにおしっことして出るのではありません。抗利尿ホルモンの働きが妨害されたことによって、まずは血液の中の水分が尿になって排泄されます。次に、血管の外にあった水分が血管に移動し、やがて尿になります。最後の排泄されるのが、先ほど飲んだビールに含まれていた水分です。

 そればかりか、アルコールを分解するには体内の水分が必要です。アルコールは「酢酸」に分解され、さらに二酸化炭素と水になって排出されるのですが、その過程で水分が必要なんですね。「ビール1㍑を飲むと、約1.1㍑の水分を失ってしまう」という調査結果もあるとのことです。

  

 

「脱水症」と「熱中症」との関係は?

 脱水症状に似たものに、熱中症があります。

 熱中症は、体温が高くなりすぎて起こる様々な体調不良の症状すべてのことです。

 汗をかいて体液が減ると、やがて汗が出づらくなり、体内に熱がこもって体温が上がり熱中症に発展します。

 「脱水症」は「熱中症」の引き金になります

 

 熱中症の症状の一部を以下に挙げます。

▼めまいや立ちくらみ・・・・・「熱中症」に発展する危険なきざし

▼微熱・・・・・汗が出なくなって、体内に熱がこもってきたきざし

▼頭痛・・・・・血液がドロドロになって、血のめぐりが悪くなって脳が酸欠状態に

▼吐き気・・・・・血液がドロドロで消化器官にトラブル発生のサイン

▼からだのだるさ

▼意識が混濁・・・・・これは重症。心筋梗塞を起こして突然死もあり得る状態。救助要請を急ぐしかない。

 

 

 

山好きの女医・大城和恵さんが教えてくれます

 大城和恵さんは日本人で初めて国際山岳医の資格を取得し、札幌市内の病院で「登山外来」を開設している医師です。

 「登山外来へようこそ」(2016年発行、角川新書)に、脱水症にならないための予防策について、次のように書いています。

 

▼脱水症の予防には、2つのタイミングがある。起床時と登山中だ。

▼起床した時点は軽い脱水状態になっているため、登山に出発する前に必ず水分をとること。目安は、朝食以外に500mlの水。朝食にはふつう塩分も含まれるから、普通の水でかまわない。しかし、朝食で塩分をとらないのであれば、スポーツドリンクを飲んで塩分をとること。

▼トイレに朝2回いったら、出発準備完了。というのは、起床時のトイレは夜中のうちにたまった尿。それから何かを食べたり飲んだりしたあとの2回目は、起床後にとった栄養素や水分が体内に循環したサインだから。

▼登山中はノドのかわきを感じなくても、ナトリウムなどの電解質を含む水分を30分おきに補給すること。スポーツドリンクを水で半分に薄めたものを携行するとよい。水で薄めないと、糖の濃度が高いために小腸での吸収が遅くなることがある。

 

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