北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

からだの豆知識⑫寝たきりにならないためにはどうしたらいい?

バラ (アルブレヒト デューラーローゼ という品種)

 

 

 

 50歳になるまでは、神奈川県の丹沢・塔ノ岳で重さ20㌔のザックを背負って山登りしても若い人に追い越されることはほとんどありませんでした。それがいまはもうだめですね。重さを10㌔にしても抜かれる。脚の筋力の衰えでしょうかね。

 

 そんなふうに思っている折、図書館で見つけたのがこの本。

 『寝たきり老人になりたくないなら 大腰筋(だいようきん)を鍛えなさい』(2014年発行、飛鳥新社

 

 筆者は、久野譜也(しんや)・筑波大学教授。スポーツ医学の専門家で、メディアのインタビューによく登場する方です。

 

 「簡単な筋トレで、寝たきりを防ぎましょう」という先生のお話を紹介します。

 

 

 

目次

 

 

 

筋肉は1年で1%ずつ減っていく

 久野先生は「歩くスピードというのは、40代、50代から少しずつ低下しているのです」といいます。

 「人間の筋肉は、20代をピークとして、以後中長期的に細くなっていき、およそ年1%の割合でジワジワと減っていきます。20代の時点が100だとすれば、40代は20%減、50代は30%減、60代は40%減、70代は50%減。そう、70代になると、20代の時の半分の筋肉量にまでおちてしまうことになるわけです。」

 

 ホントですか、と驚きますよね。先生はさらに、こういいます。

 

 「脚の筋肉が衰えれば、だんだん歩行能力が低下してくるようになります。じつを言うと、歩くスピードというのは、すでに40代、50代から少しずつ低下しているのです。老化で歩行スピードが低下するのは、徐々に歩幅が狭くなっているせいということです。では、どうして歩幅が狭くなっていってしまうのか。その原因は、従来から『下肢(かし)の筋力が全体的に低下したため』とされてきたのですが、近年の研究によって、そのなかでもとりわけ歩行能力低下に影響を及ぼす筋肉が存在することがわかりました。その筋肉が『大腰筋(だいようきん)』です。」

 

上の図の赤い部分が腰と太ももをつなぐ大腰筋

 

 

 

一番大事な≪大腰筋≫の話

 「大腰筋は、腰の部分の背骨と、太ももの大腿骨(だいたいこつ)とをつないでいる体の奥の太い筋肉です。上半身と下半身とをつないでいる唯一の筋肉であり、直立二足歩行をするために非常に重要な役目を果たしていることがわかっています。また、大腿骨は歩行の際に脚を引き上げたり踏み出したりする動作をつかさどっているのですが、この筋肉が加齢とともに細くなってくると、脚を大きく上げたり大きく踏み出したりすることがだんだんできなくなってきますそれで徐々に歩幅が狭くなって、歩くスピードが落ちていくというわけです。」

 「大腰筋が衰えて機能しなくなると、直立することも二足歩行することもできなくなって、寝たきりのような状態となって動けなくなってしまうのです

 

 

 

 

こわい「サルコペニア肥満」 筋肉が落ちて脂肪たっぷり

 久野先生は、次のようにいいます。

 「『筋肉が落ちる』というと、みなさんは体がどんな状態になることをイメージするでしょう。腕や脚がガリガリにやせた状態?もちろんそんな状態になることもありますが、そればかりとは限りません。」

 「見た目が結構ふくよかだったり、一見健康そうなふつうの肉付きだったりするのにもかかわらず、体の中身を調べると、じつはかなり筋肉が落ちていたというケースもあるのです。これを『サルコペニア肥満』と呼んでいます。」

 

(上の写真は著書から引用)左が20代女性右が60代女性・サルコペニア肥満筑波大学久野研究室)

 

 「これは20代の人の太ももと、60代サルコペニア肥満の太ももをMRI(磁気共鳴画像)で撮影した写真です。20代の人の写真で見ると、太もも中央の白くて丸く映っているのが大腿骨で、その周りの黒い部分が筋それを覆う白い部分が脂肪です。」

 「では、60代のサルコペニア肥満の人の写真と見比べてください。黒い部分=筋肉が少なくなり、白い脂肪の部分が大半を占めてしまっているのがおわかりいただけるでしょう。脚の太さはほとんど一緒だというのに、筋肉が減る代わりに脂肪が増えて、『筋肉の割合』と『脂肪の割合』がすっかり入れ替わって形勢逆転してしまっているわけです。」

 

 

 

 

筋肉は年をとっても増やせる

 久野先生は「筋肉は何もしなければ落ちる一方ですが、ありがたいことに、どんなに年をとっても増やすことのできる器官です。さすがに70代になってから20代の筋肉量に戻すというのは無理ですが、何歳からでも筋肉量を10~20%程度増やすのは十分に可能です。」といいます。

 

 

 

筋肉量を増やすには「筋トレ」と「ウォーキング」の両方

 筋肉量を増やすには、いったい何をすればいいのか。

 先生が勧めるのは「運動」で、「筋トレと有酸素運動の両方を行うこと」。

 

 

 

ウォーキングが体によい理由は?

 「ウォーキングをすると、血流がよくなります。なぜ血流がよくなるのか。その答えは、毛細血管が増えるからです。」

 「毛細血管は、体の隅々にまで『酸素』を運んでいる輸送網。もっとも、ところかまわずいろんな臓器に増えるというわけではなく、毛細血管が増えるのは主に筋肉まわりと決まっています。」

 「この毛細血管の効果は重要ですから、ここで解説しておきましょう。そもそもウォーキングなど有酸素運動というのは、筋肉の細胞酸素を取り込んで、細胞の中のミトコンドリアという小さな器官で、その酸素を使って脂肪からATP(アデノシン三リン酸)という物質をつくり、それによって生み出されたエネルギーを使う運動です。酸素を使って体の中でエネルギーをつくり、それをうまくやりくりしながら筋肉を動かしていくから、長時間にわたる運動が可能なわけです。」

 「一方、筋トレなど無酸素運動の場合は、瞬発的に大きな力を出すため、酸素を取り込んでATPを合成している時間がありません。そのため、あらかじめ筋肉の細胞内にストックされている糖をエネルギーとして使います。酸素を使わずに、間に合わせにとっておいたエネルギーで筋肉を動かしているから、短時間しか力が持たないわけです。」

 

 

 

 

具体的な「筋トレ」メニューは?

 ここからは久野先生おすすめの「筋トレ」メニュー5種目です。(イラストは著書から引用)

 

【筋トレメニュー①】つかまりスクワット

 「スクワットは下半身の筋肉を鍛えるもっとも代表的な屈伸運動です。イスの背につかまって行うと動作が安定しますし、転倒も防げます。」

 

 

【筋トレメニュー②】すわってひざ伸ばし

 「太ももの前側の筋肉を鍛えるメニューです。」

 

 

 

【筋トレメニュー③】すわって太もも上げ

 「腹筋と大腰筋の両方を鍛えることができます。」

 

 

 

【筋トレメニュー④】脚の前後運動

 「脚を前後に大きく動かすことにより、大腰筋を鍛えていく筋トレです。」

 

 

 

 

【筋トレメニュー⑤】脚の左右運動

 「太ももの横からお尻までを鍛える筋トレです。」

 

 久野先生は、これら「イス周り」でできる筋トレメニューを実践するうえでいくつか補足しています。それは、「一度に5種類全部しなくてもよい」「毎日しなくてもよい」「何かをしながらの❝ながら運動❞でかまいません」。そして、「この筋トレをずっと続けることが大事です」といいます。

 

 「続ける」ことが大事だということは分かる気がしますが、それが難しい!!!