インフルエンザが全国的にはやっています。
私のかかりつけ医(内科医)はマスクを着けずに患者に接していますが、体調を崩した姿を一度も見たことはありません。
「先生は風邪(かぜ)、ひかないんですか?」とぶしつけな質問をしたら、ニコッと笑って「ひいたことないんです。免疫があるんですかねえ」と答えていました。
免疫力が低下すると、風邪をひきやすい、と昔からいいます。
風邪をひかないようにするには、具体的にどうしたらよいのか・・・・・・・。
札幌雪まつり (2019年2月9日夕方撮影)
風邪って何だ
風邪とは、くしゃみや咳(せき)で空中を浮遊した「ウイルス」が、人間の鼻から体内に入って、鼻の奥で細胞に入り込むことによって生じる炎症のこと全般をいいます。
症状は言うまでもなくいろいろ。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、たん、微熱、頭痛、倦怠感・・・
ウイルスの種類によって症状は違うようです。
風邪のウイルスを殺す薬は、開発されていません。
1週間で免疫ができるので、放っておけば治ります。
薬局でもらう薬は、つらい症状を和らげるだけであって、原因物質のウイルスを取り除くことはできません。
風邪と免疫力の関係
風邪を引き起こすのは、ほとんどが「ウイルス」という微生物。数百種類あるそうです。一度感染したウイルスに免疫ができても、次に出会うウイルスは異なるために、また風邪をひくことになります。
人間は、風邪ウイルスがウジャウジャいる中で生きており、いつ感染してもおかしくない状態です。風邪をひくのは、ウイルスと自分の体力との力関係で、負けた、ということです。
体の免疫力が高いと、風邪のウイルスが体内に入ってきても、ウイルスの増殖を食い止め、風邪はひかない。ウイルスに対抗する免疫力を高めることで、風邪を予防できます。
免疫力って何だ
ウイルスが鼻や口から入ってくると、体内の白血球と呼ばれる免疫を担当する細胞群がよそ者を排除しようとして対抗する「抗体」をつくり、ウイルスを攻撃します。これが「免疫力」です。
免疫細胞はどこにいるの?
「免疫」を担当する細胞である「白血球」という表現は大雑把な言い方であって、分類すると、顆粒球系(好中球、マスト細胞など)、単球系(マクロファージ、樹状細胞)、リンパ球系(B細胞、T細胞、NK細胞など)です。
チコちゃんの雪像
全身の免疫力を高めるには?
ほどほどの運動がいちばん!
適度の運動をすれば、風邪をひきにくくなるようです。「適度な運動」です。
明治大学経営学部の鈴井正敏教授は、2012年の『日本登山医学会』の会合で「運動と免疫」と題して特別講演しました。
その内容は、血液中のNK(ナチュラルキラー)細胞という白血球の数の増減に注目した研究結果で、
「マラソンなどの長時間にわたる激しい運動の最中には、血液中のNK細胞が著しく活性化するが、運動後には安定している時よりも低くなって免疫機能が下がり、風邪をひきやすくなる。」
「一方、習慣的に、強度がそれほどでもないウォーキングなどの有酸素運動をしている人は、風邪にかかりにくい。」
鈴井正敏・明大教授の解説
この理由について、鈴井教授は次のように推測します。
「なぜ運動によって風邪に感染しやすくなったり、しにくくなったりするのか。そのメカニズムは解明されていない。推測の域を出ないが、可能性としては免疫細胞の新しい細胞と古い細胞の入れ替わりが関連していると考えている。免疫細胞は早いものでは数時間、遅いものでは数週間で死を迎える。つまり、生体の免疫細胞は常に新しい細胞と入れ替わることによって、一定の数を維持しているという動的なバランスの上に立っているものである。運動はこの代謝を早くする可能性がある。その刺激が適度で、加えて適切な回復期間であれば、若くて機能が高い細胞が存在する状態になる。逆に、運動が過度で、休養が不十分な場合では、未成熟な細胞の動員が多くなり、機能の低い細胞が多い状態になる。言い換えれば、健康のための適度な運動であれば、免疫細胞の活動性がより高くなるので風邪をひきにくくなるが、アスリートがハードな練習を繰り返しているような状態では、機能の低い未成熟細胞が多くなることにより、免疫機能が低下して感染しやすくなってしまうということである。運動はやり方によって、免疫機能を上げる効果も下げる効果もある。」
カギは「腸」にある
ほどほどの運動をすることが、免疫力アップにつながりますが、もう1つ、「腸」に注目するとよいようです。
「風邪」と「腸」の関係・・・・・・
最近の研究で、
腸を健康に保つことができれば、免疫細胞が活動しやすくなって、体の免疫力が高まる、と分かってきました。
「腸」は、大きく分けて小腸と大腸があります。
「小腸」は胃、十二指腸の続きにあって、長さは6㍍ぐらい。食べたものから栄養素を吸収するのが仕事。
「大腸」は長さ1.5㍍ほど。水分を吸収してウンチをつくります。
小腸には免疫細胞がいっぱい
小腸の管の内側には、免疫細胞がいっぱいくっついています。
体内で働いている免疫細胞の50%以上がここにいるそうです。食べ物にくっついて口から侵入してきた怪しい細菌やウイルスから身を守るために待機しています。門番、衛兵というわけです。
大腸には細菌がウジャウジャ
人間の体には細菌がいっぱいいますが、一番多い大腸には、「1000種類、100兆個」といわれるほどの数の細菌が“定着”しています。
その様子がお花畑(Flora=植物群)に似ていることから、「腸内フローラ」と呼ばれます。腸内フローラは、腸の壁の表面を覆う粘膜の中に生息しています。
善玉菌を優位にしよう
細菌には「善玉菌」と「悪玉菌」と、そのどちらでもない菌があります。
善玉菌の代表格が、「ビフィズス菌」と「乳酸菌」。一方、悪玉菌はその名の通り、腸内のたんぱく質を腐敗させて発がん物質をつくり出すなど人体にとって好ましからざる存在。腸内で、これらの菌がせめぎあっています。
腸内に生息する細菌の種類や数には、個人差があるそうです。
健康を維持するためには、風邪など感染症を防ぐ作用のある「善玉菌」の占める割合を増やす必要があります。
善玉菌を増やす食事
腸内細菌の構成は一人ひとり異なるために、ある特定の食材で免疫の向上につながるというものではないようです。たくさんの種類の食材をとればよいです、と栄養士さんはいいますが、それではちょっと・・・。
ひとつ注目してよいと思うのは、「食物繊維」。この食物繊維は「善玉菌」のエサになっています。食物繊維は他の栄養素のように小腸では吸収されずに大腸まで届きます。ですから善玉菌の数少ないエサになっています。
食物繊維を口からとるのは有効かもしれません。わかめやヒジキなどの海藻類、キノコ類、ゴボウ、ニンジンなどです。
食物繊維の摂取は、大腸がんの予防にも効果的だそうです。
ヨーグルトを食べてみるのも・・・
免疫力のアップのために、「ヨーグルト」をすすめる研究者もいます。
善玉菌、悪玉菌という言葉を最初に使った「腸内細菌」の研究者、光岡知足・東大名誉教授。教授は著書でこう書いています。
「乳酸菌が腸管免疫を活性化してくれる。」
「食事からしっかり乳酸菌を取り込む習慣をつけていけば、それだけで免疫活性につながり、病気の予防に役立つ。」
「生きた菌を腸に届けることも、ビフィズス菌を選ぶことも重要ではない。免疫を刺激することが目的であり、菌の種類よりも量が大事。」
「自分は毎朝、ヨーグルトを250~350グラムとっている。」
「重要なのは、どんな種類の乳酸菌が自分の腸を元気にしてくれるか、ということ。自分のお腹に合った乳酸菌を見つけていく必要がある。」
「毎日摂取することが大切。」
風邪をひいたら
風邪をひいた時、どうするか。一番大事なのは「睡眠」。布団で温まって、たっぷり眠ること。風邪の症状だと自分で分かれば、医者に診てもらう必要はない。症状を緩和する薬を出してもらえるだけです。待合室にいる間に、インフルエンザのウイルスをもらうかもしれません。
初期症状に「悪寒(おかん)」があります。これは体内に、より多くの「熱」を発生させようとする働きです。脳の指令で骨格筋を震わせることによって体温を37度以上に上げて、ウイルスをやっつけようとするのです。ウイルスは熱に弱いから。悪寒は免疫細胞(=白血球)がウイルスと闘っている証です。ウイルスを撃退すると、もう体温を上げる必要がなくなりますので、脳は汗を出すように命令を出します。汗をかくと、皮膚表面から汗が蒸発する時に周囲から気化熱を奪うため、体温は下がっていきます。
汗をかけば、快方に向かっているということです。
「インフルエンザ」と「風邪」の違い
この2つは病原が「ウイルス」」という点では同じです。が、風邪が様々な数多くの種類のウイルスによって起こるのに対して、インフルエンザは「インフルエンザウイルス」と名付けられた特定のウイルスが原因で起こる病気です。
症状にも違いがあります。インフルエンザの場合は、急に全身がだるくなり、筋肉痛や頭痛がします。今まで経験したことがないぐらいのだるさです。その後、のどの痛みや鼻水が出ます。多くの場合、38度以上の高熱になりますが、高熱にならない場合もあります。
普通の風邪ではないな、と思ったら、医者の診察を受けるべきです。インフルエンザに感染しているかどうかは、鼻水やのどの粘液を採って行う簡単な検査で、すぐに分かります。治療薬としては、インフルエンザウイルスの“増殖を抑える”薬を出してくれます。インフルエンザは肺炎を起こすことがあるため、注意が必要です。