エゾリンドウ(2021年9月16日、茶臼岳の那須ロープウェイ山頂駅近くで撮影)
目次
牛ヶ首でルートを見失う
茶臼岳(標高1915㍍)は、那須連山という福島県から栃木県にかけて連なる峰々の主峰。いまもたくさんの噴気孔から火山ガスを噴出している活火山です。「那須岳」と呼ぶ人もいます。
ロープウェイで ❝4分間の空中散歩❞をするだけで8合目まで行けるので、
初心者向きとされている人気の山です。
その茶臼岳に、2021年シルバーウィークが始まる前の9月16日(木曜日)に登って、もっと奥にある秘湯・三斗小屋温泉に泊まったのですが、茶臼岳の山頂に向かう時に、道に迷ってしまったのです。
小雨が降っていてガス(霧や雲)が濃く、視界がきかなかったからなんですが、
15分ぐらい、時間のロスをしました。
天候によっては、初心者向きではなくなりますね。
以下、その時と、その後の記録です。
私がとったルートは、
那須ロープウェイ山頂駅⇒牛ヶ首⇒「茶臼岳のお鉢周り」⇒「峰の茶屋跡」⇒
三斗小屋温泉・大黒屋(泊)⇒隠居倉⇒朝日岳⇒峰の茶屋跡⇒県営峠の茶屋駐車場
那須ロープウェイの山頂駅(標高1684㍍)で降りた時の視界は、こんな感じでした。
前がよく見えませんねえ。先に歩き出した人の姿がすぐに消えてしまいました。
山頂駅を出て、ガスと小雨の中を歩くこと25分、牛ヶ首に着きました。(ロープウェイに乗り合わせた他の6人は標準ルートで茶臼岳を目指したようです。)
牛ヶ首の広場。ガスが濃いです。
「牛ヶ首」と書かれたプレート。右奥にあるのは・・・?
標示棒とでも言うんでしょうか。案内板です。
「峰の茶屋跡」方面にとりあえず向かうには、どちらに行ったらいいんだろう。標示棒の矢印は左方向・・・。
左方向をみると、少し下がったところにまた、標示棒が見えました。(上の写真)
何と書いてあるのか、その一点に関心が集中してしまって、坂を10数歩下って、標示棒の図に向き合いました。
「姥が坂」という初耳の地名が書かれていましたが、「峰の茶屋跡」は左に行けということのよう。
ガスで視界が悪い中を左に3、4歩進んだ時、進行方向右手に、大きな岩がとペンキの文字が目に飛び込んできました。(下の写真)
大岩に黄色のペンキ。これで私の脳の神経細胞が狂っちまったのです。
岩には「峰ノ茶ヤ」の文字と矢印が書かれていて、岩場を登っていくルートに見えてしまったのです。視界がきかないから。
「こんなところを登るのかいな。ポピュラーとは言えないルートだから、そんなもんか」と思いつつ、ゴツゴツした岩や硫黄の黄色い結晶が転がる土の上を進みました。
でも、人の靴跡が全くありません。「なんか、違うんじゃないの」と思って振り返ると、眼下には道がぼんやり見えました。ただ私は、その道は「姥ヶ平」に行くルートだろうと思い込んでいたため、無視して再び登り始めました。
しかし、「ペンキも靴跡もない、やっぱりおかしい」と感じ、下に見えた道まで戻ることにしました。
そして「この道を進むと、見当違いの姥ヶ平に着いちゃうんじゃないかな」と苦々しく思いながら5分ほど歩くと、ガスの中に標示棒がぼんやり見えてきました。
近づいて見ると、「無間地獄」という文字がありました。
この道で正しかったんだ、とほっとしました。
歩いてきた道。
思うに、「牛ヶ首」の広場から、ガスの中を少し下って「姥ケ坂」と書かれた標示棒に向き合った時に、背中側に「姥ヶ平」への道が付いているにもかかわらず、標示棒ばかりに気が行っていて、周りに目を凝らさなかったことが過ちの原因のようです。
判断ミスをした場所――
「姥ヶ坂」と書かれた標示棒。上の写真の左下に道が見えます。「姥ヶ平」への道でした。
晴れていれば周りがよく見え、何の問題も生じない場所でしょうね。
「気象遭難」というのは、こんなふうにして起こるんでしょうね。
無間地獄
茶臼岳の西斜面の登山道わきで、ケムリがモクモクと上がっている場所です。
無間(むげん)地獄と呼ばれる噴気地帯です。たくさんの噴気孔から絶えず火山ガスを噴き出しているんです。
牛ヶ首まで足を延ばしたのは、ここをじっくり見たかったからです。(結果的に、よく見えませんでしたが・・・)
「シューッ」「ゴーッ」。噴気孔自体は灰色のベールに包まれて見えませんでしたが、噴き出した火山ガスが風に流され、ジェット機がかもしだすようなごう音を一人で聞いているのは気持ちのよいものではないですね。
火山ガスの成分は、水蒸気が90%以上だそうですが、有毒な硫化水素(H₂S)と二酸化硫黄(SO₂)が含まれていて、長居するのは好ましくないようです。
茶臼岳の山頂へ
上の図の「赤●」が無間地獄です。
無間地獄の音と火山ガスを体感した後は、茶臼岳山頂に向かうため、「峰の茶屋跡」を目指します。
「峰の茶屋跡」に着く手前に、「硫黄鉱山跡」と書かれた標識があり、ここを右に曲がって山頂を目指しました。
「硫黄鉱山跡」の位置です。
茶臼岳には、山頂を一周できる登山道が付けられていました。
火口の直径は200㍍、深さは30㍍とのことで、噴気活動は今はありません。
「お釜口」です。ここから一周します。反時計回り(左回り)です。
前に進むのですが、何もみえまへん。
向こうがお釜でしょうか。
土手には、こんなお遊びも・・・
お鉢周りの途中。現在地は・・・
山頂がぼんやりと見えてきましたね。
山頂は、溶岩が大きな岩の塊になって、転がっていました。
ザックに着けてある温度計は、10度。
三等三角点の位置です。
那須ロープウェイ・山頂駅から登ってくると、ここに出るんですね。
「お釜口」に戻ってきました。左回りで1周するのに33分かかりました。お釜の底は、まったく見えませんでした。
峰の茶屋跡
「峰の茶屋跡」はいま、立派な避難小屋になっています。
茶臼岳の山頂から降りてきて、目の前に避難小屋がボーッと見えてきました。
避難小屋の入り口。内側から撮影。
避難小屋の中には、地震や噴火来策としてヘルメットや常備され、「ラジオ」が設置されていました。緊急時には、ふもとの栃木県那須町からの放送が流れるようです。