東京都心にある「国宝」の迎賓館が2024年4月、開館50周年を迎えたそうです。
これまで近くを通りがかったことはありますが、中に入ったことはない。節目のこの機会に、中に入れるのならのぞいてみようかということで4月26日に見学してきました。
目次
「迎賓館」でふだん行われていること
「迎賓館」が建っている港区元赤坂には江戸時代、紀州徳川家の中屋敷がありました。
「紀州徳川家」(別名:紀伊徳川家)は、江戸幕府の初代将軍・徳川家康が、徳川家の血を絶やさないようにするため3人の男子を独立させた徳川御三家(尾張・紀伊・水戸)のひとつです。
「中屋敷」というのは、参勤交代で江戸にくる各藩主とその妻子がすむ「上屋敷」が、火災などで使えなくなった時のための予備の屋敷でした。
明治時代になるとこの屋敷は皇室の所有となり、皇太子(のちの大正天皇)の住まいとして1909年(明治42年)に東宮御所が建設されました。
建物はフランス皇帝ナポレオン3世の時代の建築様式を再現した西洋風の宮殿でした。ただ、ここはあまり使われなかったようです。
太平洋戦争後は国が施設を管理するようになり、1974年(昭和49年)に外国の賓客をもてなすための施設として大規模な改修工事を経て迎賓館が完成しました。
和風別館はこの時、となりの森の中に造られました。
管理は現在、内閣府が担当しています。
迎賓館では世界各国からお迎えした国王、大統領、首相らに泊まっていただくほか、首脳会談や晩さん会などの行事が行われているとのことです。
入場料は?
迎賓館の一般公開は、2016年4月から行っているそうです。ただし、有料で。
ホームページで調べますと、「庭園」を歩いてみるだけの場合、事前の申し込みは不要ですが入場料が必要で、大人は300円。
「本館」と「和風別館」の両方に入る場合、参観料は大人2000円。
いずれか一方の場合は大人1500円。
「和風別館」はガイドさんが付く参観となり、ネットでの予約が必要。
せっかくみるのなら「和風別館」なるものもみてやろうということで、申し込みました。
迎賓館「本館」の外観
迎賓館の正門。外国からの賓客はここから入ります。
正面の鉄扉の上部には「菊の紋章」が施されています。菊の紋章は天皇家の家紋ですね。
見学者は正門からではなく、「西門」から敷地に入ります。
前庭から見た「本館」の玄関ロータリーです。
「本館」の裏側に回り込みますと、こういう眺めになります。
裏側なんですが、ここは「主庭」と呼ばれています。
「主庭」には噴水があります。これも国宝。創建100年後の2009年に本館や正門と一緒に国宝に指定されました。
「本館」のなか
さて、「本館」の中に入りましょう。
本館の内部は撮影禁止にされていますので、迎賓館発行のパンフレットの写真を引用します。
玄関ホール。深紅のじゅうたんは中央階段の先の2階大ホールに続きます。
花鳥の間(かちょうのま)。晩さん会が催される部屋です。
天井には、狩りでしとめたシカやイノシシが描かれていました。フランスなどヨーロッパの貴族はジビエという野生の鳥や獣の肉を好んだそうです。
花鳥の間には、花や鳥を描いた七宝焼きが壁に何枚か飾られていました。
彩鸞の間(さいらんのま)。賓客が最初に案内される控えの間。日本の首相と賓客の会談にも使われるそうです。
朝日の間(あさひのま)。国賓が天皇・皇后両陛下とお別れの挨拶をする一番格式の高い部屋だそうです。
朝日の間の天井に飾られている絵。朝日を背に受けた女神が、4頭立ての白馬の車に乗って天を駆けている姿が描かれています。
羽衣の間(はごろものま)。ここでは晩さん会の招待客に食前酒がふるまわれるそうです。
和風別館
この建物の中も撮影禁止です。庭は撮影OKでした。
和風別館は50年前の大改修で現在の迎賓館ができた時に新設された施設。中を見学するには予約が必要です。
見学者は、入場の時に受け取った日本政府の紋章「五七の桐」を配したプレートを首からぶら下げ、狭い砂利道を一列になって、本館から少し離れた和風別館に向かいます。
池では、ニシキゴイが泳いでいました。赤、白、金色・・・。その数、125匹。
もともとこの池にはコイはいなかったのですが、田中角栄さんが首相の時に、ニシキゴイを放ったそうです。
(パンフレットより)47畳の和室。賓客を和食でもてなすそうです。
(パンフレットより)
室内から見た和風庭園。手前は池。
アメリカのトランプ大統領が2017年に来日した時の話ですが、この池でコイにエサを与えた際、初めのうちは桝(ます)からスプーンでエサをすくって池に投げていたのですが、そのうち面倒になったらしく、桝をひっくり返してバサッとやったシーンがニュース映像で流れたことを思い出します。
狭い砂利道を見学者は整然と歩いて去ります。
多い禁止事項や注意事項
「国宝」ということもあってでしょうが、制約が多い施設でした。
西門から入るとすぐ、金属探知機による身体検査と手荷物検査を受けることになります。それが済んでから参観料を払います。
館内での撮影は禁止。理由の説明はありません。
スマホの使用も禁止。「バッグにしまうように」と厳しく言われます。
デジタルカメラやスマホで壁や装飾品が傷つけられることを警戒しているんでしょうかねえ。
館内では鉛筆以外のものを使ってメモを取ることも禁止です。
壁に触れてもいけません。
防犯カメラがいたるところに設置されていました。
係員もいたるところに立っています。視線は厳しいです。
和風別館では玄関の床に黒光りする石が敷かれ、見学者はカーペットの上を歩くのですが、私がウッカリ石を踏んでしまったところ、すかさず「石を踏まないでください!おそれいりますが」と叱責の声が飛びました。
交通費のほかに「2000円」を払ってまで、庶民の暮らしとは無縁の特権階層の活動の場を見に行く意味がどれほどあるのか・・・。人それぞれ思いは異なるでしょうね。