北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

新聞社志望の人、必見! 2024年3月期中間決算(産経・朝日・中日)・・・衰退する業界(下)

 

 新聞各社の経営状況を追います。(随時、更新)

 

目次

 

 

2024年3月期「中間決算」の速報

 「朝日」「産経」「中日」各社の2024年3月期中間決算が、社外に出始めました。2023年4月から9月までの「半年間の収支」です。

 

 産経新聞は、グループ企業全体の「連結」決算も、新聞を発行する産経新聞社だけの「単体」決算も、ともに減収減益でした。

 「単体」では、売上高227億円(前年同期比マイナス6.0%)。本業のもうけを示す営業利益は12億円の赤字。最終的な純利益は34億円の赤字だったようです。

 この中間決算では、損益計算書の特別損失の項目に、「特別退職金」18億9300万円を計上しています。

 

 

 朝日新聞社「単体」の売上高は905億円でした。

  営業利益は2億円余りありますが、前年同期より85%もダウンです。部数減と用紙代の高騰が響いたようです。

 

 ただ、この穴埋めのために固定資産の売却によって32億9700万円をひねり出し、特別利益として計上しています。

 

 また、前年同期に特別損失として計上した「早期割増退職金」42億8100万円が今期は600万円で済んだため、純利益は43億円になっています。

 

 

 中日新聞社は、東海地方で「中日新聞」、南関東で「東京新聞」という銘柄を発行しているブロック紙です。

 中間決算では、産経と同様に本業でもうけることができず、営業利益2300万円の赤字のようです。

 東京で広告収入の落ち込みが深刻らしいです。

 

 

 

「産経」が希望退職者を募集

 産経新聞は2023年度の4月から9月にかけて、希望退職者を募集し、退職金を割り増しして支給しました。

 「産経」が2023年11月28日に発表した「2024年3月期中間決算短信」には、特別損失として18億9300万円の「特別退職金」を計上しています。

 応募した人数は不明ですが、通常の退職金に、総額約19億円が上乗せして支払われたということを示しています。

 

 

 

新聞社の【2023年3月期決算】

「朝日」は本業(新聞発行)で19億円の赤字

 新聞各社は2023年6月下旬、株主総会を開いて、この1年間(2022年4月から2023年3月)の決算を公表しました。

 

 新聞業界紙や公表資料に載った数字を眺めると、本業である新聞発行業の収支はどこの社も前期に比べて大幅な収入減

 朝日新聞社(単体)にいたってはもうけがなく、19億円余の赤字決算でした。

 

 

 ここに示した損益計算書は、その新聞社が1年間にどれだけもうけたかを表す決算書の数字です。

 

 表の最上段に、新聞社名に続いて「売上高」「営業費用」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」と並べました。

 

 売上高1年間の売り上げの合計金額のこと。単位は百万円。

 営業費用は新聞をつくって売るのにかかった費用。

 営業利益は、本来の仕事(=本業)の新聞発行業で利益を出せる会社かどうかをみるうえで大事な指標。「売上高」から「営業費用」を単純に引き算したものが「営業利益」。

 営業費用について詳しくみますと・・・。

「営業費用」は「売上原価」「販売費及び一般管理費」(略して『販管費』)の合計。

 「売上原価」は、材料費(=用紙代、インク代)、労務費(=記者の人件費)、諸経費(=印刷費・編集費・広告費など)から成ります。

 販管費は新聞を売るための販売・発送費、給料手当(=管理部門の人件費)など。

 

 「営業利益」を増やすには売上高を増やすか販管費を削るか、です。

 

 以下、各社の決算を見ていきます。

 

 

「朝日」は早期退職者向けに41億円計上

 朝日新聞社は、朝日新聞社本体だけの「単体決算」のほか不動産や出版など28の子会社を含めたグループ全体を1つの組織とみなした「連結決算」も公表しています。(上の表参照)

 

 連結売上高は2670億3100万円で、11期連続の減収。連結営業費用がこれを上回っており、結果として連結営業損益は4億1900万円の赤字となりました。

 ただ、連結経常損益ベースでは「営業外収益」として「持分法による投資利益」を計上できることから、テレビ朝日ホールディングスなど持分法適用関連会社からの利益を上乗せして70億6200万円の黒字にしています。

 最終的な利益である当期純利益は、特別損失として42億7100万円を計上したため25億9200万円にとどまっています。

 

 朝日「単体」の決算(上の表)をみると、「売上高」は1819億5000万円で、10期連続の減収。

 「営業損益」は19億2300万円の赤字。販売部数減に加え、新聞用紙代など原材料の高騰や水道光熱費の増加などが影響して、新聞発行事業という本業でのもうけがないことを示しています。

 

 「単体」では特別損失として早期割増退職金41億6400万円を計上。最終損益は3億7900万円の赤字になっています。

 

 「早期割増退職金」は、通常の退職金額に加えて支給される退職金。本来の定年退職時期より早めに退職する社員に優遇措置として導入されるもので、朝日新聞社が人員整理を急いでいることを示しています。

 

 

「毎日」も営業赤字

 毎日新聞社の単体決算は「売上高」595億2300万円で前年比マイナス。営業損益と経常損益で赤字。最終損益は固定資産の売却などによって30億100万円の黒字にしています。

 

 

「読売」グループは増収増益

 読売新聞グループは、持ち株会社」のグループ本社のもとに新聞3本社、読売巨人軍中央公論新社よみうりランドを置き、「基幹7社」と称しています。

 基幹7社は連結決算をしていません。7社の合計額には7社間の取引が含まれているため、個別決算のそれぞれの額とは一致しません。

 

 「新聞4社」は、グループ本社と大阪・東京・西部3本社のこと。新聞4社の「売上高」合計は2330億4400万円。個別決算では西部本社が7億円余の赤字となりましたが、「新聞4社」合計では2期連続の増収増益。

 

 

 読売新聞社は「営業利益」の数字を発表せずに「経常利益」を公表しています。

 「経常利益」は、本業の新聞発行という営業活動と、それ以外の主に財務活動で発生した利益(または損失)を合わせた、事業全体の利益のこと。預金の利息、株の配当金、借入金の利息などです。

 当期純利益は、「経常利益」に不動産の売却などで臨時に入った「特別利益」を加え、災害などによる「特別損失」を差し引き、これから法人税・住民税・事業税を差し引いた、最終的に会社に残ったもうけのことです。

 

 

 

「日経」は連結売上高が業界トップ

 日本経済新聞社の決算は、2022年12月期。連結売上高3584億3200万円は業界トップ。

 日本経済新聞社「単体」の「売上高」は1751億8500万円で「読売」「朝日」に劣るものの、当期純利益は93億600万円で飛び抜けています。

 

 

 

「産経」は本業のもうけが大幅減

(上は、連結決算)

(下は、単体決算)

 産経新聞連結売上高は、2021年3月期に「1000億円」を割り込みました。2023年3月期は786億円に落ちています。

 産経「単体」では、売上高は504億7000万円、本業のもうけを示す営業利益は2億2300万円で、前期(6億800万円)から3億8500万円も減らしました。

 

 

 

「中日」は営業利益46.5%減

 中日新聞社は主に愛知・岐阜・三重の東海3県と南関東1都3県で「紙」の新聞を売る「ブロック紙」。「売上高」は2007年3月期決算の「1600億円」をピークにして下落の一途をたどっています。

 2023年3月期の売上高は1041億9400万円で、40年前の1982年度の数字(売上高1057億円)に戻っています。

 

 ことし1月の新聞用紙代の値上げの時には、「減ページ」によって紙の使用量を減らして対応したようです。

 しかし部数減に歯止めが止まらず新聞の販売収入は前期よりも約34億円も減。広告収入にいたっては11億円ほどの減。

 結果として営業利益は前期よりも25億9100万円、46.5%減って、29億7800万円になりました。

 

 部数減に歯止めが効かないとはいえ、「自己資本比率」(=総資本に占める自己資産の割合)は2023年3月期は約69%。資金や資産の「内部留保」は増える一方。「不動産」をたっぷり持っているために倒産する心配は全くない。

 この会社、今後は新聞事業以外の「不動産業」や「イベント収入」で生きていこうとしているようにも見えます。

 

 

 このほか、北海道のブロック紙「道新」も苦戦して減収減益です。

 九州のブロック紙「西日本」は17期連続の減収。営業損益は2億1800万円の損失で2期連続の営業赤字です。

 

 

www.shifukunohitotoki.net

 

www.shifukunohitotoki.net