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新聞社志望の人、必見!【早期退職】【赤字決算】【利益半減】・・・衰退する業界(下)

 

目次

 

 

本業(新聞発行)で「朝日」は19億円の赤字

 新聞各社は2023年6月下旬、株主総会を開いて、この1年間(2022年4月から2023年3月)の決算を公表しました。

 

 手元にある新聞業界紙や公表資料に載った数字を眺めますと、本業である新聞発行業の収支はどこの社も前期に比べて大幅な収入減

 朝日新聞(単体)にいたっては、もうけがなく、19億円余の赤字決算でした。

 

 

主な新聞社の台所一覧(=2023年3月期決算)

 ここに示す損益計算書は、その新聞社が1年間にどれだけもうけたかを表す決算書の数字です。

 見慣れないのでスルーしたくなるかもしれませんが、これをみれば経営状態が分かるんです。

 

 上の表の最上段に、新聞社名に続いて「売上高」「営業費用」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」と並べました。

 

 「売上高」1年間の売り上げの合計金額のこと。単位は百万円。

 「営業費用」は、新聞をつくって売るのにかかった費用。

 「営業利益」は、本来の仕事(=本業)の新聞発行業で利益を出せる会社かどうかをみるうえで大事な指標。「売上高」から「営業費用」を単純に引き算したものが「営業利益」。

 「営業費用」についてちょっと詳しく・・・。「営業費用」は「売上原価」「販売費及び一般管理費」(略して『販管費』)の合計。

 「売上原価」は、材料費(=用紙代、インク代)、労務費(=記者の人件費)、諸経費(=印刷費・編集費・広告費など)から成ります。

 販管費は、新聞を売るための販売・発送費、給料手当(=管理部門の人件費)など。

 

 「営業利益」を増やすには「売上高」を増やすか原価や販管費を削るか、です。

 

 以下、各社の決算を淡々と見ていきます。

 

 

「朝日」は早期退職者向けに41億円計上

 朝日新聞社は、朝日新聞社単体」の決算のほか、不動産業、出版業など28の子会社を含めたグループ全体を1つの組織とみなした「連結決算」も公表している。(上の表参照)

 

 連結売上高は、2670億3100万円で、11期連続の減収。しかも連結営業費用がこれを上回っており、結果として連結営業損益は4億1900万円の赤字となった。

 ただ、連結経常損益ベースでは、「営業外収益」として「持分法による投資利益」を計上できることから、テレビ朝日ホールディングスなど持分法適用関連会社からの利益を上乗せして、70億6200万円の黒字にした。

 しかし、最終的な利益である当期純利益は、「特別損失」として42億7100万円を計上したため25億9200万円にとどまった。

 

 朝日新聞社「単体」の決算(上の表)をみると「売上高」は1819億5000万円で、10期連続の減収。

 「営業損益」は19億2300万円の赤字これは販売部数減に加え、新聞用紙代など原材料の高騰や水道光熱費の増加などが影響して、新聞発行事業という本業でのもうけがないことを示している。

 

 また、「単体」で特別損失として「早期割増退職金」41億6400万円を計上最終損益は3億7900万円の赤になっている。

 

 「早期割増退職金」は、通常の退職金額に加えて支給される退職金のこと。本来の定年退職時期より早めに退職する社員に、優遇措置として導入されるもので、朝日新聞社人員整理を急いでいることをうかがわせる。

 

 

「毎日」も営業赤字

 毎日新聞社の単体決算は「売上高」595億2300万円で前年比マイナス。営業損益と経常損益で赤字となった。最終損益は固定資産の売却などによって30億100万円の黒字にしている。

 

 

「読売」グループは増収増益

 読売新聞グループは、持ち株会社」のグループ本社のもとに、新聞3本社、読売巨人軍中央公論新社よみうりランドを置き、「基幹7社」と称している。

 基幹7社は連結決算をしていない。7社の合計額には、7社間の取引が含まれているため、個別決算のそれぞれの額とは一致しない。

 

 「新聞4社」とは、グループ本社と、大阪・東京・西部3本社のこと。新聞4社の「売上高」合計は2330億4400万円。個別決算では西部本社が7億円余の赤字となったが、「新聞4社」合計では2期連続の増収増益。

 

 

 読売新聞社業界紙に「営業利益」の数字を発表せず、「経常利益」を公表している。

 「経常利益」は、本業の新聞発行という営業活動と、それ以外の主に財務活動で発生した利益(または損失)を合わせた、事業全体の利益のこと。預金の利息、株の配当金、借入金の利息などだ。

 当期純利益は、「経常利益」に不動産の売却などで臨時に入った「特別利益」を加え、災害などによる「特別損失」を差し引き、これから法人税・住民税・事業税を差し引いた、最終的に会社に残ったもうけのこと。

 

 

 

「日経」は連結売上高が業界トップ

 日本経済新聞社の決算は、2022年12月期。連結売上高3584億3200万円は業界トップ。

 日本経済新聞社「単体」「売上高」は1751億8500万円で「読売」「朝日」に劣るものの、当期純利益は93億600万円で飛び抜けてかせいでいる。

 

 

 

「産経」は本業のもうけが大幅減

(上は、連結決算)

(下は、単体決算)

 産経新聞連結売上高は、2年前の2021年3月期に「1000億円」を割り込んだ。2023年3月期は786億円に落ちた。

 産経の「単体」では、「売上高」は504億7000万円、本業のもうけを示す営業利益は2億2300万円で、前期(6億800万円)から3億8500万円も減らした。深刻な事態と推測する。

 

 

 

「中日」は営業利益46.5%減で、新聞業は下り坂

 中日新聞社は、主に愛知・岐阜・三重の東海3県と南関東の1都3県で「紙」の新聞を売る「ブロック紙」。「売上高」は2007年3月期決算の「1600億円」をピークにして下落の一途をたどっている。

 2023年3月期の「売上高」は1041億9400万円で、40年前1982年度の数字(売上高1057億円)に戻ってしまった。

 

 ことし1月の新聞用紙代の値上げの時には、「減ページ」によって紙の使用量を減らして対応した。

 しかし部数減に歯止めが止まらず新聞の販売収入は前期よりも約34億円も減。

 広告収入にいたっては、大手企業に無視され、通販と売れない本の広告しか載らないため11億円ほどの減

 結果として「営業利益」は前期よりも25億9100万円、46.5%減って、29億7800万円になった。

 

 部数減に歯止めが効かないとはいえ、「中日」は東海3県では読者の信頼はたいへん厚く、「新聞」といえば「中日」、「野球」といえば「中日ドランゴンズ」という土地柄。これは戦後一貫して変わらない。

 経営指標をみても「自己資本比率」(=総資本に占める自己資産の割合)は、2023年3月期は約69%で11期連続の60%超え。資金や資産の「内部留保」は増える一方。「不動産」をたっぷり持っているために倒産する心配は全くない。

 この会社、今後は「事業収入」に期待が持てそうな気配。というのも、アニメのスタジオジブリの世界を2022年11月に、愛知県長久手市内に開設。愛知県と「スタジオジブリ」と手を組んで、イベントに力を入れている。

 どうやら新聞事業以外の「不動産業」や「イベント収入」で生きていこうとしているように見える。

 新聞記者を志す皆さんの目には、どう映るだろうか。

 

 

 

 北海道のブロック紙「道新」も苦戦。減収減益。

 九州のブロック紙「西日本」は、売上高が新聞用紙など資材の高騰もあって17期連続の減収。営業損益は2億1800万円の損失で、2期連続の営業赤字だ。

 

 

 

www.shifukunohitotoki.net

 

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