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ネットにシフトするCM広告、民放ローカル局のビジネスモデル崩壊の危機!

 静岡市日本平にそびえるテレビ電波の送受信用鉄塔。

 

 

 全国に127ある民放テレビ局の経営が厳しいようです。

 このうち114局は、東京の日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日テレビ東京という5つの局を「キー局」とするネットワークに入っていて、キー局から「放送番組」「ミルク代」もらってぬくぬくと生きてきました。

 ところがいま、CM広告のスポンサーが、CMを提供する先をテレビから「ネット」にシフトしつつあるんですね。

 

 民放ローカル局のビジネスモデルはいったい、どういうものか、私がかつて8年間、役員として勤務した静岡県の局の様子にも触れ、数字を織り交ぜながら備忘録として書いておきます。

 

もくじ

 

 

民放ローカル局の収入源はCM

 東京のキー局は、「広告収入」を経営の基盤にしています。

 CMの枠を、電通博報堂などの広告代理店を通して広告主である企業に売り、企業からCMの代金をもらっているのです。

 

 CM枠には、「タイムCM」と「スポットCM」の2種類あります。

 

 「タイムCM」は企業が特定の番組を選んでスポンサーになり、その番組の中で30秒か60秒、場合によってはそれ以上のCM枠を買う方法です。

 東京のキー局が「タイムCM」の営業を担当し、スポンサーから受け取った「タイムCM収入」は、番組制作費や広告代理店への手数料に使うほか、系列ローカル局に『ネットワーク配分金』(略称:ネット配分)としてお金を配分しているのです。

 

 もう1つの「スポットCM」は、企業は番組を指定せずに、いろんな番組と番組の間に15秒間、放送してもらうCMのことです。

 キー局だけでなくローカル局も、「スポットCM」で稼いでいます。

 

 

「番組」と「ネット配分」をタダでもらえる美味しいビジネス

 土石流で足元をすくわれそうになった伊豆大島の中継局。

 

 民放ローカル局は、キー局が作った番組を無料でもらえるばかりか、CM付きで県内の各家庭に番組を放送してあげれば、キー局から「ネット配分」というお土産までもらえる特異なビジネスモデルで成り立っています。

 「ネット配分」は営業マンの間では「ミルク代」と呼ばれているキー局からの助成金ですね。キー局を「親」、ローカル局を「赤ちゃん」になぞらえて、そう呼んでいるのです。

 金額はローカル局の視聴者数などによってキー局が決めていますが、公表されません。

 

 静岡のローカル局に勤務を始めたころ、同僚から「うちの会社は装置産業ですから」と、しばしば言われました。どういうことかというと、放送のための電波を送受信する鉄塔やスタジオの機器、衛星中継車、カメラといった巨大な装置・設備を持っているだけで収益が期待できる業種」という意味で、なんとも虚しさを感じたものです。

 

 

 

「ネット配分」は売上高の「3割」も

 キー局から系列局に渡されるネット配分は、ローカル局の売上高のどのくらいになるのか――。

 

 2015年3月期決算を例に挙げて、静岡県の民放4局の【ネット配分を含むタイム収入】【売上高に占める割合】を調べると、次のようになっています。

静岡朝日テレビ(テレ朝系) 31億8900万円;34%

テレビ静岡(フジ系) 26億1000万円;30%

静岡放送(TBS系) 25億6100万円;28%

静岡第一テレビ(日テレ系) 25億5700万円;29%

各局の売上高の3割を占めていますね

 

 この時期に、静岡の各局が自前で稼いだ【スポット収入】と【売上高に占める割合】は以下の通りです。

テレビ静岡 55億4500万円;売上高の63%

静岡第一テレビ 51億3400万円;売上高の58%

静岡朝日テレビ 51億円;売上高の54%

静岡放送 44億8100万円;売上高の50%

 

 なお、ローカル局のこのほかの収入は、事業収入や番組販売収入などです。

 

 

ローカル局の「自社制作比率」は10%

 神奈川県・大山山頂にある中継局。

 

 

 ローカル局の番組表は、キー局が制作した番組を流さなければならない「ネット枠」と、ローカル局が自社制作番組や自社が購入した番組を放送する「ローカル枠」の2つに区分されています。

 ローカル枠は平日の夕方に限定されており、全国のどのローカル局も地元のニュースや地域の情報番組の時間に充てられています。

 

 民放連(=日本民間放送連盟)の調査では、ローカル局自社制作比率(=自社制作番組の放送時間が、週の総放送時間に占める割合)は、どこもほぼ同じ「10%程度」です。

 1日当たり約2時間30分程度です。

 

 

 

「番組はローカルでは自社制作しない方がいいよ」という声も

 テレビ業界にいると「ローカル局が自社制作番組を作ると会社の利益が減る」という発言を時々耳にします。

 私自身、局の仲間から「何も作らん方がいいんですよ。人件費が増える一方で視聴率が低いために損するだけですから」と言われたことがあります。

 

 実際、赴任した時には、平日は制作スタジオは昼間から真っ暗で、ヒトケはありません。派手な業界だというイメージを持っていただけに、奇異な感じでした。

 夕方の1時間だけ、局舎の別の場所にあるニューススタジオでニュースや地域の話題を生放送する程度でした。番組をあまり作っていなかったのですね。

 

 それがある時期、社長が交代して間もなく、月曜から金曜までの夕方、ベルトで「ニュース番組」とは別に1時間の情報番組を始めました。

 

 その結果、あらたな情報番組制作のための年間の支出は2億4000万円。これに対してローカルタイム収入は4000万円弱で、制作費を回収できませんでした

 10年も前の話です。ベルトの情報番組はまだ続いているようです。

 

 

【静岡の民放4局の決算推移】売上高が減り続けるローカル局

 各局の懐事情を公開資料から表にしました。

 

 

 

 総じて売上高が減っているのは、キー局からのネット配分の減少と、ローカル局が独自に稼ぐスポット収入も落ち込んできたためと推定できますね。

 

 

 

【東京キー局の2024年3月期中間決算】スポットCMが低迷

 東京キー局5社の「2024年3月期中間決算(2023年4月から9月末)」が出そろいました。

 放送関係だけを決算書類から取り出して、一覧表にしました。

 

 「営業利益」は前期より減っていますね。東京に本社を置く大企業がスポットCMを出し渋っているようです。

 

 デジタル時代の放送制度はどうあるべきか、なんていう議論が総務省の音頭で続いているようですが、結論が出ません。

 その間にも、テレビのスポットCMは「インターネット広告」に流れています。