北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍級の登山、国内外の旅行、歴史探訪、反戦・平和への思いなど備忘録としてつづっています。

戦争と平和~ウクライナに日本が防弾チョッキを提供した

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 自衛隊の防弾チョッキ (防衛省提供写真)

 

目次

 

 

 ロシア軍に侵略されたウクライナの政府に、日本政府は自衛隊が使う防弾チョッキを提供することにしました。2022年3月8日に第一便の輸送機が愛知県の小牧基地を出発、現地に向かいました。

 

 「防弾チョッキとは、いいアイデアだね」なんて、私がノー天気なことを、防衛問題に詳しい友人の記者に話しかけたら、「いやいや、問題があるんだよ」とマユをひそめました。

 

 「え?どういうこと?」。

 

 以下、友人とのおしゃべりで、多少分かったことです。

 

 

いまはプーチンによる無差別攻撃が心配

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 3月9日付「東京新聞」朝刊

 

 

 KGBソ連の秘密警察)将校のプーチン大統領率いるロシア軍は2022年2月24日、ウクライナの領土を侵略し、キエフなどに侵攻を始めました。

 以後、ロシア軍による空爆で病院を含む建物が次々と破壊され、ウクライナと隣国の国境には避難民が集まっています。それも子供と女性ばかり.。泣き叫ぶ幼い子を抱く母親はテレビに向かって「ウクライナを助けて!」。

 男性は、というと、ウクライナのゼレンスキー大統領が出した国民総動員令によって、18歳から60歳までの人は出国禁止になっているんですね。国内に残って、ロシア軍と戦っています。

 

 近日中にロシア軍は総攻撃に出るとみられています。ロシア軍はかつてチェチェン紛争やシリア内戦に介入した時のように、首都キエフなど都市部を無差別攻撃するのではないか、と軍事研究者(小泉悠・東大先端科学技術センター専任講師ら)は心配しています。

 

 

 そんな状況なので、私はウクライナにいる人たちに、命を守る防弾チョッキの提供は的確な判断だ、と珍しく政府の判断を「良」としたのですが、友人は「読みが甘い!」というのです。

 

 

 

 

武器の外国への提供にはルールがある

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 3月9日付「読売新聞」朝刊

 

 

 

 友人によると、戦闘で使う「武器」と、「武器を製造するための技術」のことを、オブラートに包んで「防衛装備」とお役人は言うそうです。この防衛装備は軽々に外国に提供できないのです。

 

 「防衛装備移転三原則」というルールと、その手引書である「防衛装備移転三原則の運用指針」(以下、「運用指針」)が日本にはあります。

 いずれも2014年4月に第二次安倍晋三内閣が閣議決定したものです。

 

 

 この「運用指針」をみますと、防衛装備、つまり「武器」、具体的には自衛隊が使う戦闘機や戦車、感染、火器、弾薬、通信システムと言った装備品を海外に「移転」(=提供すること)できるケースというのは、提供しようとしている相手国が「米国や日本との間で安全保障面で協力関係にある国」に、ほぼ限定されているのです。

 

 

 

「防弾チョッキ」の提供は初めて

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 3月9日付「朝日新聞」朝刊

 

 

 そうした中で、2月末にウクライナの国防相から岸信夫防衛相あてに、自衛隊の装備品の提供を求める手紙が届いたのです。

 

 ウクライナ政府が支援を要請してきた品は、防弾チョッキ、鉄のヘルメット、防寒服、テント、カメラ、衛生資材、食糧、発電機など

 しかし、このうちの防弾チョッキは「防衛装備移転三原則」の防衛装備つまり武器に当たります。

 

 もう一つ問題なのは、ウクライナという国は、従来の「運用指針」に照らすと防衛装備を提供する相手に該当しないのです。

 

 こうしたことから政府は「運用指針」を改める必要に迫られました。

 

 

 

 

武器の提供ルールを政府が変更

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 自衛隊の輸送機に積み込まれるウクライナ向けの防弾チョッキなど(時事ドットコムニュースから引用)

 

 

 

 政府は3月8日、国家安全保障会議持ち回りで開いて、「防衛装備移転三原則」の「運用指針」を改定して、「侵略を受けているウクライナに対する防衛装備の提供」を可能にしました。

 

 さらに、「防衛装備移転三原則」は「紛争当事国」への防弾チョッキを含む防衛装備品(=武器)の提供を禁止しているのですが、政府は「紛争当事国」という言葉の定義を「武力攻撃が発生し、国連安全保障理事会が措置をとっている国」と限定的に解釈して、ウクライナの場合は国連安保理による対応が講じられていないことを理由に、「紛争当事国には当たらない」という判断をしたのです。

 

 

 ウクライナが紛争当事国ではない・・・子供でもウソだと分かります。こんなウソがキツネとタヌキが住む霞が関や永田町では通るんです。

 

 

 

 

武器供与の歯止めがなくなるのでは

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 3月9日付「東京新聞」朝刊

 

 

  友人は、「僕が1つだけ言いたいのは、防衛装備の提供は今回のウクライナへの防弾チョッキだけでは終わらない、ということ」と言います。

 武器供与の歯止めがなくなるということを心配しているのです。

 

 

 日本は憲法第9条戦争放棄をうたう平和国家ですから、むかしは武器輸出三原則がありました。これは1967年に当時の佐藤栄作首相が国会答弁で表明した政策で、

①共産圏諸国

②国連決議で武器輸出が禁止されている国

国際紛争の当事国

――の3つの場合には、日本は武器輸出をしないという実質的な武器輸出全面禁止を国是としてきました。

 

 ところが、2014年に第二次安倍晋三内閣がこの原則を撤廃あらたな原則として、防衛装備移転三原則閣議決定し、武器の輸出入を基本的に認め、そのうえで禁止する場合の内容を規定しました。

 

 だから、運用指針を改定すればウクライナ以外にも、今後、侵略受けた国・地域に提供できるんですね。

 

 

 友人は言います。「『防弾チョッキ』をただで贈ると言えば、みんな反対しにくいだろうから、防弾チョッキの提供を突破口に、武器輸出を広げるんじゃないの?非軍事面で日本がやるべき支援はいろいろあると思うんだけどね」。

 

 たしかに、ごもっともな話でした。私も一貫して反戦派だから分かりますが、銃弾から自分の命を守るための防弾チョッキは提供してもいいんじゃないか、と素直に思うんです。夫はロシア軍と戦うために家に残り、恐怖から泣き叫ぶ子供と隣国に避難する母親の姿を見ると、父親を死なせてはいけない、と単純に思うのですが・・・。

 こんなこと言ってると、「相変わらず甘いよ、あなた!」とまた友人から言われそうです。