北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

小泉悠「ロシア点描」を読んでプーチンの頭の中をのぞいた

 

 表紙に描かれているかわいいマトリョーシカ(ロシアの民芸品)にひき付けられて、ついつい買ってしまいました。

 自称・軍事オタクで、このところテレビなどで引っ張りだこのロシアの軍事研究者、小泉悠(ゆう)さんの本です。

 

 タイトルは「ロシア点描 まちかどから見るプーチン帝国の素顔」。

 

 小泉さんは現在、東京大学先端科学技術研究センター専任講師。2009年から3年間、モスクワに外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー客員研究員という肩書で滞在しました。

 この本はその時に出会った人々や体験したこと、感じたことがつづられています。

 

 ロシア人の奥様がいらっしゃるせいか、ロシアへの愛がにじみ出ているエッセイです。肩の凝らない本です。

 そうした中で、ロシア大統領・プーチンの思考様式の背景にあるものも、この本は教えてくれます。

 

 

目次

 

 

 

 

プーチンの世界観

 わが家の本箱を占拠している昔の訪ソみやげ3点。左2つはマトリョーシカ

 

 

 小泉さんの本は7章からなりますが、彼の分析で特におもしろいと持ったのは、政治的な話題を取り上げた6章と7章です。

 

 

 

 

国力は弱くても「大国」だという意識のロシア

 国の経済規模や豊かさを示す指標の1つに、GDP(国内総生産)がありますね。

 一定期間に生み出された付加価値の合計です。

 

 わが日本は2021年の国別ランキングでは、アメリカ、中国に次いで世界第3位

 ロシアはドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ、韓国より低い世界11位です。

 人口は、日本が約1億2500万人、ロシアは約1億4500万人で、それほど違いはありませんね。

 

 それでも「ロシア」という国は、アメリカに対峙する「大国」のようにふるまっています。

 

 その背景にある事情を小泉さんは、3つ挙げます。

①「ソ連」時代から受け継いでいる「国連安保理事会常任理事国」として、拒否権を行使できる国

②広大な国土

③核戦力保有を背景に、躊躇することなく踏み出す軍事力の行使

 

 

 

主権国家」といえるのは「大国」だけだ

 プーチン大統領は、ロシアがあたかも「大国」であるかのようにふるまいます。

 プーチンは、他国に対しても、「『大国』としてひと目置くべき相手がどうか」ということを最初に考えている、と小泉さんは見ます。

 

 プーチンは2017年に、「ドイツは主権国家ではない」と発言しました。

 

 その意味するところは、本当の主権国家というものは、独自の核戦力を持って非同盟を貫ける「大国」だけであって、その国はロシアアメリ以外には、中国インドだけだ、ということ。ドイツは違うよ、と。

 

 

 

日本は主権国家ではない!

 プーチン流の世界観によりますと、日本は、ロシアから、主権国家扱いされていない、ということになります。

 

 小泉さんは次のように書いています。

 

 「2016年(12月)にプーチン大統領が日本を訪れたとき、『日本は条約上の義務を負っている。どこまでできるのか見極めなければならない』と述べました。

 この『条約上の義務』という言葉をその後もプーチン大統領は何度も繰り返していますが、その意味するところは、『日本はアメリカに逆らえない国ではないか』ということです。(中略)

 (プーチンから見れば)日本はアメリカによって『主権を制限された国』であり、例えば、『返還された北方領土に米軍基地は置かない』といった約束を自分だけでできる国ではないのです。

 さらにプーチン大統領は『実際、北方領土が返還されたら米軍基地を置く密約がある。そのことを知っている』と述べています。(中略)

 アメリカによって『主権が制限された国』である日本がロシアにすり寄ってきたとしても、ロシアが本気で領土交渉に取り組むつもりがあったとは思えません。

 

 

 「北方4島の返還」なんて、無理だっちゅうことですね。これでは。

 

 

 

 

市民には不信感を抱いている

 

 本の表紙です。

 

 

 プーチンは、「市民社会」に強い不信を抱いています。

 ロシア政府主催の会議の席上、プーチンは「市民の声というものはどうやってつくられるのか」「それは本当に市民の声なのか・・・」などと発言したとか。

 

 そのプーチンは、「第五列」という言葉を最近、よく使うそうです。 

 ロシア国内にありながら、欧米のために働く裏切り者・スパイと言った意味です。

 ロシアの民主団体、リベラルなジャーナリストらが、欧米の意向を受けて活動する第五列に見えているようです。

 

 

 ロシアがウクライナ侵略を始めた後の3月1日、プーチンの意向に沿わない報道を続けたモスクワの独立系テレビ局「ドーシチ」に対し、プーチンは、「軍事作戦で虚偽の情報を提供した」として、「ドーシチ」の放送とサイトを遮断するなど、メディア規制を強めています。

 

 

 インターネットの規制も強めています。

 ロシアは、FacebookTwitterなどのSNSのほか、外国メディアのホームページにアクセスできないようにファイアーオールという壁を作って、見られなくしました。

 

 ただ、ロシア市民も知恵を働かせます。市民の間では、通信を暗号化したうえで海外のボランティアが提供する多数のサーバーを経由して、海外メディアのホームページにアクセスする「VPN」と呼ばれるサービスを利用する動きが広がっているようです。

 

 VPNは、バーチャル・プライベート・ネットワークのことです。

 プーチンの暴挙に抗議の声を上げるロシア人にとって、VPNは意思表示のためにも情報を得るためにもきちょうな道具になっているとのことです。

 

 

 

 

今後の展開をこう読む

 今も続くロシア軍のウクライナ侵攻をプーチン特別軍事作戦と言い、「戦争」ではないという立場です。

 

 小泉さんは「あからさまな侵略戦争」と言い切ります。私もそう考えます。

 

 その小泉さん、プーチンの出方について、こう書いています。(2022年5月2日の発行時点での認識)

 

 「こんな状況で2024年の大統領選に打って出れば、あまり芳しい結果にはならないだろうということは想像がつきます。

 もちろん、ここで兵を引くことはできません。戦争の失敗を認めることになり、やはり大統領選に暗雲を投げかけるでしょうし、選挙には勝てても政権運営は苦しくなるでしょう。(中略)。

 となれば、プーチンはなりふり構わずにこの難局を打開しようとするはずです。つまり、民間人にどれだけの被害を出そうともウクライナ政府を屈服させようとし場合によっては化学兵器のような大量破壊兵器の使用に及ぶかもしれません。」

 

 

 

 

経済制裁にもパニックにならない?

 西側諸国によるロシアへの経済制裁の効果はどうなんでしょう。

 

 小泉さんは、ロシア人は忍耐強いですよ、といいます。

 

 「日本の社会は減点主義で動いていて、完璧なのが当たり前。ところがロシア社会は加点主義です」と言います。

 

 ロシアの人々は、物事が完璧でなくてもそんなに問題視しない。物事が動いていて一応目的が達せられていればよいではないか、と考えるらしい。

 60点が合格点なら60点でいい。それ以上求めてどうするの?という思考をするらしいのです。

 

 だから、ウクライナへの戦争で経済制裁を受けてロシア人の暮らしやビジネスが打撃を受けても、その程度で完全にパニックになってしまうわけではない、というのがロシア人なのだそうです。

 

 

 

 

 

軍事侵攻を支持する多数のロシア人

 こんな新聞記事がありました。

 ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」が2022年5月下旬に実施して6月2日に発表した調査結果です。

 

 ロシアによる特別軍事作戦を「支持」するという回答は、前月比3ポイント増の77%

「ロシアの勝利で終わる」という回答は、前月比2ポイント増の75%――。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 こういう結果ですが、いつ停戦になるのでしょうか。

 

 悲しむを生む殺し合いを止めて、和平交渉を早く始めてもらいたいものです。

 わが日本がいまやるべきこと、できることは何なんでしょうか・・・・・。

 

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