北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

山岳遭難の捜索・救助費用を知っていますか?払えますか?

 「jRO:ジロー」の会員証

 

 

 日本山岳救助機構(jRO:ジロー、会員10万1000人)から、会計報告書が届きました。

 

 2021年(1月から12月)に、山登りで遭難した会員41人についてどんなふうにして遭難し、助けてもらうのにいくらお金を支払ったのか、この報告書をみればザッと様子がわかります。

 

 合わせて、2022年1月から8月末までに遭難した会員41人についても暫定値ですがアップしました。

 

 「県警ヘリや防災ヘリは無料と聞いてますけど・・・ヘリで助けてもらうのにお金いるんですか?」という人がいます。はい、お金はいるんです。

 遭難した人を探して救助してくれるのは、公務員の「警察」だけではありません。

 「遭対協(そうたいきょう)」という民間の人たちでつくる救助隊が、警察からの要請で出動し、救助・捜索活動を支援しますます。命がけでボランティア活動をしてくれる遭対協の皆さんがたに、「日当」や「交通費」などを支払わなければならないのですね

 

「ジロー」や他の山岳保険に入っていない場合、捜索・救助費用は家族にとってたいへんな負担になります。

 

 

 以下、郵送されてきた資料を転記しました。

 長野県内で発生した遭難については、長野県遭対協発行の『島崎三歩の「山岳通信」』の記事を参考にして、事実関係を補強してあります。

 

 

目次

 

 

 

 

 

「遭対協」はどういう人たちなの?

 「そうたいきょう」の正式な名称は、長野県山岳遭難防止対策協会

 

 長野県内の13地区に、ボランティアの「地区遭対協」があり、救助隊を編成しています。メンバーは主に、地元山岳会のリーダー格の自営業者、山岳ガイド、それに山小屋従業員(通称:小屋番)

 遭対協は、長野県警本部の山岳遭難救助隊(約40人)隊長から応援要請があった時に捜索・救助活動に加わります。

 

 遭対協はボランティアの組織のため、メンバーは月給をもらえませんが、実際に出動した時は、救助された人から後日、日当などの手当てをもらいます。遭対協の会長は長野県知事。事務局は県庁にあります。

 

 

 

「jRO(ジロー)」という遭難対策制度の説明

 「jRO」の会報

 

 「jRO(ジロー)」は、会員が遭難した時に、捜索や救助にかかった費用を会員が出し合うという「相互扶助」によって成り立っている制度。よくある短期の掛け捨てタイプの保険とは違いますね。遭難救助に特化したタイプです。

 

 会員が遭難した場合は、遭難した会員は救助活動終了後、出動した民間の遭対協救助隊員1人ひとりに対し以下の費用を支払うことになります

 

▽「日当」(無雪期の一般ルートは1万円積雪期の岩場は1万5000円など)

▽「交通費」(捜索・救助に向かうための公共交通機関、レンタカー代、ガソリン代、有料道路代、駐車場代など)

▽「消耗品費」(活動で発生した消耗品。ロープなど)

▽「宿泊費」(捜索・救助従事者が山小屋や旅館に泊まった費用)

▽「食費」(捜索・救助従事者の食事代・弁当代・非常食代)

 

 jROは「遭難した会員」に550万円を上限として用を補てんしてくれます。

 この中には、

▽「関係者現場駆け付け費用」(親族らが捜索・救助現場までいく交通費・宿泊費)(限度額30万円)

▽「謝礼費用」(救助活動に従事した人や機関への謝礼)(1人または1機関につき限度額1万円など条件あり)

▽「遺体搬送費用」(死亡が確認された場合、遺体を収容先から自宅などへ搬送する費用)(限度額30万円)

――も含まれています。

 

 

 「jRO」の年会費は、「2200円」(税込み)と「事後分担金」の合計です。

 「事後分担金」というのは、1年間に発生した会員の遭難救助活動に対してjROが支払った費用総額を、会員数で割った「会員1人あたりの負担額」です。jRO会員は「10万人超」と多いために、1人あたりの事後分担金は200円ほど。

 ですからjROの年会費は2400円ほどということです。

 

 

 

2021年中の遭難の内容(jRO会員の場合)

 長野県遭対協の救助隊。夏山シーズン中に常駐する白馬村営白馬岳頂上宿舎に向かうところ。(2021年7月15日、白馬大雪渓で撮影)

 

以下、

【遭難発生場所】【被害の程度】【jROの補てん金額】【遭難の概要】の順

 

【1月】

■北海道キロロスキー場◆負傷◆jROが補てんする費用58万円

(スキー場のコース外にあたる)バックカントリーで、ゲレンデに戻れない場所に降りてしまうスマホアプリで現在地を確認し、戻ろうとしたが、日没で行動不能となり、救助要請。スキー場パトロール隊や雪上車が出動。23時すぎに付き添って下山。2人共同遭難。(1人だけ会員のため)総額116万円を按分。

 

北アルプス白馬八方尾根◆負傷◆16万7193円

5人パーティーでオープンバーン(=開けた斜面)を滑走中岩に衝突し負傷。仲間と警察らにより救助。北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会(遭対協)への支払いが発生。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第211号によると、1月20日に男性(35)バックカントリーをスキーで滑走中に転倒して負傷、長野県警ヘリで救助した。

 

 

【3月】

中央アルプス千畳敷カール◆負傷◆15万1932円

登山中に雪崩に巻き込まれ1㍍埋没。パーティーメンバーらにより救助される。中ア地区遭対協の救助活動あり。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第217号によると、3月14日、千畳敷八丁坂付近で、4人パーティーで登山中の男性(40歳)雪崩に巻き込まれ、軽傷。駒ヶ根署員と中ア地区遭対協救助隊員が出動して救助した。

 

 

【4月】

山形県蔵王・地蔵山◆負傷◆7万3484円

熊野岳からロープウェイ地蔵山頂駅へ仲間とスキーで下山中、同行者と離れてしまい道迷い遭難。救助依頼を受けた山形市山岳遭難対策委メンバーにより救助される。

 

 

【5月】

北アルプス槍ヶ岳死亡12万9468円

3人パーテーで槍ヶ岳に登山中、低体温症のため遭難死亡。長野県警山岳遭難救助隊が発見。北ア南部地区遭対協の救助活動あり。

北アルプス槍ヶ岳死亡38万6250円

3人パーテーで槍ヶ岳に登山中、飛騨乗越付近(標高3010㍍)で低体温症で死亡。北ア南部地区遭対協が出動。

(注)

上記の3人パーティーは、山小屋「槍ヶ岳山荘」に宿泊予定だったが、「あと200㍍」という地点で猛吹雪に遭い、視界ゼロの中で息絶えた。jRO会員は、3人のうち2人。

 

●補足共同通信社の配信記事は概略以下の通り。

 長野県警は5月4日、槍ヶ岳で岐阜、愛知両県の男性3人パーテーが遭難し、いずれも救助後に死亡したと発表した。

 県警によると、3人は5月3日午前、岐阜県新穂高登山口から入山。午後2時半ごろ、3人のうち1人が「飛騨乗越(のっこし)付近で仲間1人(49歳)が滑落した」と110番した。遭対協救助隊(=槍ヶ岳山荘従業員)が出動し、登山道上で倒れていた男性(28歳)を発見、午後7時ごろ、近くの山小屋(=槍ヶ岳山荘)に収容した。

 5月4日午前には、飛騨乗越の登山道上で横たわっていた男性(37歳)と、そこから東側に約180㍍滑落した地点で、雪をかぶった状態で倒れている男性(49歳)を発見。正午過ぎに長野県警ヘリで救助した。

 県警は、登山道上で風に舞う雪に囲まれて視界が白一色になる現象「ホワイトアウト」が発生したとみている。

信濃毎日新聞」2021年5月17日デジタル版から引用

 

 

 

 

北アルプス蝶ヶ岳◆負傷◆13万1707円

単独で蝶ヶ岳から三股へ下山中に転倒し、左脛骨(けいこつ)、左腓骨(ひこつ)を骨折。警察、北ア南部地区遭対協救助隊員らに救助される。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第223号によると、5月29日に単独で蝶ヶ岳に入山した男性(46)が、山頂から三股に下山中、転倒して負傷し、動けなくなった。翌30日、北ア南部地区遭対協救助隊員と県警ヘリが出動し、救助した。

 

 

【6月】

山形県鳥海山不明136万8180円

6月11日、同行者2人で上ノ台にタケノコ採りに入山。道に迷い、沢に降りる。高い位置からリュックを落とす姿を同行者が確認後、合流できずに行方不明に。同行者が翌日、自力下山して通報。八幡山捜索救助隊が捜索。

 

 

 白馬大雪渓上の危険個所の整備をする遭対協の常駐隊

 

【7月】

北アルプス常念岳◆負傷◆8万1248円

雨天時、胸突八丁付近で足を滑らせて滑落。同行者と、その場に居合わせた救助隊員に捜索・救助される。

 

北アルプス五竜岳◆負傷◆5万2400円

単独五竜岳に登山中、北尾根ノ頭付近で脱水症により救助要請。県警ヘリで救助される。遭対協隊員1名も別途出動。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」229号によると、単独で7月19日に爺ヶ岳に入山し、20日に鹿島槍ヶ岳から五竜岳に向けて縦走中の男性(55歳)が疲労で行動不能に。県警ヘリと遭対協・常駐隊員が出動して救助した。

 

北アルプス奥穂高岳死亡25万9994円

単独奥穂高岳からザイテングラートを下山中に滑落岐阜県警からの通報で、長野県警ヘリが心肺停止状態で発見。その後、死亡が確認された。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、ザイテングラートで7月21日、登山道下に男性(77歳)が倒れているのを登山者が発見。県警ヘリが出動して救助したが死亡が確認された。単独で登山しており、何らかの原因で滑落した。

 

北アルプス涸沢◆負傷◆19万1406円

涸沢テント場でギックリ腰になり、行動不能。北ア南部地区遭対協・常駐隊の救助を得て、県警ヘリで松本市内の病院に搬送。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、7月22日に2人パーティーで入山した女性(48歳)が、テントを設営中に腰痛で動けなくなり、ヘリの出動になった。

 

北アルプス槍ヶ岳◆負傷◆7万5529円

山岳会5人パーティーで登山中、(槍ヶ岳山頂直前の)最後のハシゴの中段で落石を受け、重傷。荒天のため、遭対協・常駐隊員が付き添ってババ平まで下山し、そこで県警ヘリで搬送した。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、落石事故があったのは7月23日で、けがをしたのは男性(59歳)

 

 

北アルプス爺ヶ岳◆負傷◆24万0400円

爺ヶ岳山頂から下山中、冷池山荘への中間地点で、石につまずいて転倒、歩行困難に。遭対協、長野県防災ヘリに救助される。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、2人パーティーで入山した男性(73)が、縦走中の7月25日に転倒して行動不能に。遭対協・常駐隊員が出動して男性を山小屋に収容し、翌26日にヘリで救助した。

 

北アルプス槍ヶ岳入院33万3688円

山小屋「槍ヶ岳山荘」内のベッドのハシゴから転落して意識を失う。慈恵医大槍ヶ岳診療所の手配で病院にヘリで搬送高山病が原因の(肺に水がたまる)高地肺水腫などと診断された・

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、単独で槍ヶ岳に入山した男性(53歳)が、山小屋で宿泊中に発病し、ベッドから落下して負傷。7月24日に、県警ヘリが出動して救助した。

 

 

南アルプス北岳◆負傷◆12万4686円

単独登山者が北岳・大樺沢二股付近でねんざをしたのち、転落、歩行困難となる。山小屋「白根御池小屋」に救助を求め、翌日に山梨県警ヘリで病院に搬送。

 

奈良県観音峯◆負傷◆48万5857円

単独で登山中に、バランスを崩して転倒。両ひざを骨折して移動困難に。2日後に発見され、県警ヘリで搬送。天川村消防団の捜索費用ほかを補てん。

●補足:当時のニュースによると、7月24日朝、奈良県天川村の観音峯山(標高1348㍍)に日帰りで単独登山に行った男性(68歳)が帰宅しないため、家人から連絡を受けた県警が翌日から消防団の協力を得て捜索。26日に警察犬を投入し、男性の家人から借りたシャツのにおいをかがせながらさがしたところ、登山開始から2日後の昼すぎに登山道から800㍍下の沢で、声を出せないほど衰弱した状態で見つかった。男性は膝の骨折などで重傷。吉野署は警察犬にビーフジャーキーなどをプレゼントした。

 

 

北アルプス奥穂高岳死亡33万5280円

奥穂高岳南稜を登攀中に滑落。同行者が警察に通報し、翌朝、長野県警ヘリが発見、収容。その後、死亡が確認された。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、7月25日、女性(55歳)が2人パーティーでクライミング中に滑落した。

 

北アルプス涸沢◆入院20万3464円

涸沢に到着直後に自力歩行が困難に。新型コロナワクチン接種の副反応による持病の悪化で、筋力が低下。警察・遭対協によりヘリで病院に搬送。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第229号によると、7月25日、女性(34歳)が2人パーティー北穂高岳から上高地に向けて下山中、涸沢で発病して行動不能に。県警山岳遭難救助隊と県警ヘリが出動して救助した。

 

 

北アルプス奥穂高岳◆負傷◆4万5817円

3人パーティー奥穂高岳南稜を登攀中、落石で1人が負傷。遭対協・常駐隊員が救助し、県警ヘリで搬送。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第230号によると、7月31日、男性(58歳)が同行者と南稜を登攀中、落石で負傷した。

 

 ロープワークの点検をする長野県警山岳遭難救助隊(2015年5月2日、涸沢で撮影)

 

 

【8月】

北アルプス西穂高岳◆負傷◆5万9368円

西穂高岳から奥穂高岳方面へ縦走中、天狗岳付近のクサリ場でねんざ。自力で天狗沢を下山するが、動けなくなりビバーク。翌朝、ヘリで救助された。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第231号によると、8月7日、単独で西穂高岳に入山した男性(57歳)が、奥穂高岳に向けて縦走中、クサリ場で足を踏み外して転倒、負傷した。県警ヘリが出動して救助した。

 

 

南アルプス北岳◆負傷◆16万6248円

山岳会7人で下山中、白根御池小屋下の第二ベンチ付近で転倒、滑落眼窩底(がんかてい)骨折のため入院。民間救助隊による救助。

 

北アルプス笠ヶ岳◆被害は特になし◆3万円

脱水から熱中症なり、下半身が動かなくなって登山者に協力を依頼。ヘリで救助された。岐阜県北ア遭対協の救助費用を負担。

 

 

北アルプス西岳◆負傷◆8万1248円

足を踏み外して転倒。約20㍍滑落。自力で登り返し、登山者に通報してもらう。その後、北ア南部遭対協救助隊員に救助され、ヘリで病院に。

 

 

北アルプス槍ヶ岳◆負傷◆19万9931円

山岳会15人で槍ヶ岳から上高地に下山中、殺生ヒュッテ付近で転倒し、頭部裂傷。県警ヘリで病院へ。遭対協の費用発生。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第234号によると、8月29日、15人パーティー槍ヶ岳から下山中に、男性(66歳)が転倒して負傷。遭対協常駐隊員、北ア南部地区遭対協救助隊員、県警ヘリが出動し、救助した。

 

 

【9月】

北アルプス赤沢岳◆負傷費用10万8268円

赤沢岳に登頂し、ヒュッテ西岳方面に戻る途中で登山道から滑落。北ア南部地区遭対協救助隊員が出動し、県警ヘリで救助される。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第236号によると、9月10日、単独登山の男性(59)が滑落して負傷し、動けなくなった。

 

北アルプス焼岳◆死亡17万5720円

新中の湯ルート上で意識を失い、倒れる。登山者の通報で県警ヘリによって病院に搬送。急性心筋梗塞と診断。「遺体搬送費用」が発生した。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第236号によると、9月12日、男性52歳)が2人パーティーで登山中、意識不明になった。

 

北アルプス涸沢岳死亡34万6687円

槍ヶ岳から奥穂高岳へ縦走中、涸沢岳北東約700㍍の岩場で、約30㍍滑落して死亡。岐阜県北ア遭対協の救助費、「遺体搬送費」を補てん。

 

北アルプス常念岳◆負傷◆18万4988円

山小屋「常念小屋」の玄関の「上がりかまち」を降りようとした時、「すのこ」で滑り、タナにわき腹を打ちつけて行動不能。北ア南部地区遭対協の救助費用が発生した。

 

北アルプス柏原新道◆負傷◆4万6000円

鹿島槍ヶ岳に登頂後、扇沢に向けて柏原新道を下山中、ぬれた石に足を乗せて滑って転倒。自力で歩けなくなり救助要請。遭対協の費用が発生。

 

八ヶ岳連峰権現岳◆負傷◆19万2061円

ツアー登山で権現岳から赤岳に向かう途中、ハシゴを通過後に転倒。県警ヘリで病院に搬送。諏訪地区遭対協の救助費用などを補てん。

 

北アルプス柏原新道◆負傷◆14万5220円

爺ヶ岳から種池山荘経由で柏原新道を下山中、転倒して骨折し、救助を依頼。北ア北部地区遭対協に救助された。

 

 

北アルプス槍ヶ岳死亡35万1585円

単独槍ヶ岳北鎌尾根に入山し、行方不明に。その後、捜索中の警察が東側斜面で遺体発見。岐阜県警ヘリで収容された。

 

 

【10月】

北アルプス白馬鑓ヶ岳◆入院9518円

天候急変で稜線上でビバーク低体温症により意識混濁となる。翌朝、登山者に発見され、県警ヘリで救助。

 

南アルプス日向山◆死亡33万5310円

単独で登山。帰宅しないため警察が捜索。工事関係者が尾白川で遺体発見。遭対協北杜支部の捜索費用、「遺体搬送費」などが発生

 

三重県御在所岳◆負傷◆5万3488円

藤内壁をクライミング中にスリップして7㍍墜落。後頭部を強打、失神し救助される。三重県防災ヘリで搬送。救助者が使った消耗品が補てん対象に

 

 

北アルプス白馬乗鞍岳◆死亡45万0400円

単独で白馬乗鞍岳に入山し、積雪のために身動きがとれず救助要請長野県警山岳遭難救助隊などが倒れているところを発見、既に死亡していた。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第242号によると、男性(57歳)は10月22日に日帰り予定で単独で栂池から入山し、白馬乗鞍岳から下山中、何らかの原因で動けなくなり、救助要請。10月23日に大町署員(県警山岳遭難救助隊員を兼務)が出動して男性を発見したが、死亡が確認された。

 

岩手県大野山◆負傷◆6万2957円

堺ノ神山に登り、帰途に道に迷い、山中をさまよう。山麓の民家に助けを求めた。「親族などの現場駆け付け費用(交通費・宿泊費など)」、「日当などの支払いがなかった救助者への謝礼費」が発生した。

 

 

南アルプス鋸岳◆行方不明550万円(未請求)

単独登山。おそらく鋸岳で行方不明になったと思われる。警察が捜索したが手掛かりなし。民間救助隊が捜索の打診を受けている。

 

 

 

【12月】

■北海道カミホロカメットク山◆特になし◆3万5159円

登攀後、下山中にGPSの電池切れにより、吹雪で道に迷い、遭難。同行者ともはぐれてビバーク後、自力下山中に道警ヘリに発見され、搬送。

 

 

八ヶ岳連峰硫黄岳◆負傷◆29万3870円

2人で大同心北西稜を登攀後、硫黄岳付近の稜線で悪天候低体温症で身動きが取れなくなり、ビバーク。赤岳鉱泉まで自力で下山後、救助された。

 

   ◇     ◇     ◇

 

2022年1月から8月までの遭難の暫定値(jRO会員の場合)

【1月】

中央アルプス木曽駒ケ岳◆負傷◆1万9250円

下山中に千畳敷カール内で転倒し、下肢を複雑骨折。警察ヘリで病院に搬送。中央アルプス地区遭対協の救助費用が発生。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第248号によると、1月9日に2人パーティーで中アに入山した男性(46)が、千畳敷カールの八丁坂付近を下山中に転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生し、駒ヶ根署山岳遭難救助隊員と県警ヘリが出動し、男性を救助した。

 

 

■福岡県・宝満山◆負傷◆6900円

2人で登山史、下山中に転倒して脱臼・骨折。救助され防災ヘリで病院に搬送。関係者駆け付け費用、謝礼費用が発生

 

新潟県・阿寺山◆死亡35万5874円

3人でスノーボードで下山中に雪崩に埋没。同行者に救助されたが意識がなく、数日後に警察ヘリで収容。遺体搬送費が発生

 

 

【2月】

北アルプス鹿島槍ヶ岳◆負傷◆22万9763円

北アルプス鹿島槍ヶ岳◆負傷◆6万7000円

3人パーティー(うちjRO会員2人)で爺ヶ岳東尾根を登り赤岩尾根を下山中に道に迷い、警察、遭対協により救助。3人で按分した捜索救助費用と、遠隔地からの駆け付け費用が発生。

補足:「島﨑三歩の山岳通信」第251号によると、男性3人(27歳、27歳、20歳)は2月2日、天候不良で道に迷い、行動不能になった。

 

 

八ヶ岳連峰天狗岳◆負傷◆8万8400円

単独で天狗岳に出かけ、下山中に低体温症に。諏訪地区遭対協により救助され、県警ヘリで病院に搬送。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第252号によると、2月8日、男性(62)が黒百合平付近を登山中に体調不良により行動不能となり、県警ヘリが出動した。

 

 

岩手県・夏油高原スキー場◆負傷◆3万円

スキー場のツリーランエリア内でスノーボード中に、沢にできた穴に転落。スキー場パトロール隊に救助される。救助費用が発生。

 

八ヶ岳連峰美濃戸口◆負傷◆17万4220円

角木場沢でイスクライミング中に、氷の崩落により全身打撲、右足首骨折。遭対協により救助され、人力搬送後、諏訪中央病院に収容。

●補足:「島崎三歩の山岳通信」第254号によると、2月26日、八ヶ岳連峰柳川付近で3人パーティーでアイスクライミング中の男性(74)が、崩落した氷塊が体に当たり、体勢を崩して氷壁に身体を打ち付けて負傷し、行動不能になった。

 

 

【3月】

■長野県志賀寺子屋スキー場◆負傷◆6万1570円

スキー場内で衝突し、転倒負傷。パトロールに救助され、ドクターヘリで病院に搬送。救助謝礼、関係者駆け付け費用が発生

 

■埼玉県・両神山死亡5万円(未請求)

両神山系滝沢内で下山中に、道迷いの末に滑落。3月30日に発見され、死亡が確認される。家族の駆け付け費用が発生

 

鳥取県・大山◆負傷◆5万0220円

6人グループで下山中、6合目付近でバランスを崩して滑落、負傷。警察、遭対協により搬送。鳥取県山岳・SC協会遭難対策委に支払い発生。

 

■石川県・白山◆死亡216万0315円

奥長倉で下山途中に滑落し遭難。民間救助隊の5回にわたる捜索の結果、3ヵ月後の6月2日に遺体を発見、収容。

 

新潟県・東谷山◆負傷◆6万0840円

3人で山頂からスキーで滑降中に転倒。右足を骨折し、自力下山不可能に。新潟県警のヘリで救助。

 

 

【4月】

八ヶ岳連峰赤岳◆死亡84万1491円

文三郎尾根を3人で登山中、南峰リッジ取り付き付近で雪崩に流され、埋没。茅野署山岳遭難救助隊、諏訪地区遭対協隊員が捜索。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第257号によると、4月1日、3人パーティーで登山中の男性(65)が、雪崩に巻き込まれた。翌日、発見され、県警ヘリで救助したが病院で死亡を確認。

 

 

八ヶ岳連峰赤岳◆負傷◆32万3004円

地蔵尾根を下山中に雪に足をとられ、ひねって骨折。茅野署、諏訪遭対協が出動し、地上搬送。救助費用と謝礼費用が発生

・補足:「島崎三歩の山岳通信」第259号によると、4月17日に男性(59)が2人パーティーで下山中、バランスを崩して転倒して負傷した。

 

 

中央アルプス空木岳死亡30万円

4月23日に単独で入山。3泊4日の予定であったが連絡がなく、捜索していた県警ヘリが発見。救助後に死亡を確認。遺体搬送費など。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第261号によると、男性(68)は4月26日に下山予定だったが連絡が取れず、県警ヘリが出動して捜索。28日に発見、死亡を確認した。池山尾根を下山中に滑落した。

 

 

 

奈良県・吉野四寸岩山◆死亡80万円(未請求)

単独で入山し行方不明に。警察による捜索が打ち切られた後、民間救助隊が捜索。5月16日、死亡が確認される。

 

 

【5月】

富山県・クズバ山◆負傷◆4万0060円

6人グループで山頂から下山途中、1480㍍付近の雪庇で滑落。富山県警ヘリで病院に収容される。謝礼費用と駆け付け費用が発生。

 

福島県会津駒ケ岳◆負傷◆2万2000円(未請求)
沢登山口ルートを下山中に1650㍍付近でルートを外れ、トラバース中に滑落し骨折。檜枝岐村遭対協救助隊の救助費用が発生。

 

北アルプス西穂高岳◆負傷◆2万3323円

山岳会員3人で西穂山荘から下山中に急坂で右足首をねんざと骨折。警察による人力搬送で病院に収容。会員の駆け付け費用が発生。

 

北アルプス前穂高岳◆負傷◆9万1953円

2900㍍付近から300㍍滑落し、岩と雪の間に落下。同行者が引き上げて岳沢小屋に1泊したが、歩行不能のためヘリで搬送される。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第263号によると、女性(47)は4人パーティーで21日に上高地から入山し、22日に前穂高岳からバリエーションルートを下山中、滑落して負傷、23日に行動不能となったため県警ヘリで救助した。

 

 

北アルプス常念岳特になし11万0973円

常念岳東側の沢で、沢を誤って詰め、雪渓で滑落北アルプス南部地区遭対協に協力要請したうえで自力下山。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第263号によると、男性(61)が28日から2人パーティーで入山し、常念岳方面に向けて別々に登山中、道に迷い行動不能に。29日に北ア南部地区遭対協救助隊員と安曇野署山岳遭難救助隊員が出動して無事救助した。

 

 

【6月】

北アルプス白馬岳◆負傷◆16万3220円

白馬大雪渓を下山中、2200㍍付近でシリセードに失敗して負傷。長野県警ヘリで救助。北アルプス北部地区遭対協からの請求が発生。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第265号によると、男性(58)は2人パーティーで大雪渓を下山中、滑落して足を負傷、行動不能となった。

 

 

北アルプス白馬鑓ヶ岳◆負傷◆16万4220円

下山中に雪渓で滑落し負傷。当日は現地でビバークし、翌朝、長野県警ヘリで救助される。遭対協隊員3人が出動。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第266号によると、男性(50)は18日、単独で下山中に滑落、左足を負傷して行動不能に。

 

 

山形県飯豊山死亡13万5440円

登山道から滑落し、約40㍍下の岩場で登山者により発見。防災ヘリで病院搬送後、脳挫傷による死亡を確認。遭対協隊員7人が出動。

 

八ヶ岳連峰稲子岳◆負傷◆10万円(未請求)

稲子岳南壁カンテをクライミング中に同行者が滑落。動揺により下山困難に。警察ヘリや遭対協隊員7人の出動で救助される。

 

■北海道・小樽赤岩◆負傷◆10万円(未請求)

ライミング中に滑落して脳挫傷、脊椎骨折、足首ねんざ。ドクターヘリで収容。駆け付け費用他が発生見込み。

 

 

【7月】

北アルプス小遠見山◆負傷◆12万3480円

遠見尾根を下山中、ガスと雨で道に迷い、110番通報で救助要請し救助される。北アルプス遭対協への支払いが発生。

 

北アルプス間ノ岳死亡16万2130円

単独上高地西穂高岳奥穂高岳を登山中に行方不明に。7月20日に岐阜県警ヘリにより、間ノ岳北北西約100㍍地点で発見、死亡を確認。

 

北アルプス北穂高岳◆負傷◆13万7907円

南稜クサリ場付近で岩にかけた足が14㌢ほど下にずれ、左肩が岩に当たって肩を脱臼、骨折。遭対協からの請求が発生。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第270号によると、女性(63)は14日、4人パーティー北穂高岳から下山中、岩の上でスリップして転倒、負傷。松本署山岳遭難救助隊員と北ア南部地区遭対協救助隊員が出動し女性を救助した。

 

 

 

北アルプス北穂高岳◆負傷◆35万円(未請求)

北穂東稜取り付き付近で、先行パーティー起因の「岩雪崩」を受けて滑落。ヘリで病院に搬送。

 

北アルプス北穂高岳◆負傷◆15万円(未請求)

北穂高岳から涸沢に下山中に、岩場で転倒して肩を骨折。北ア南部地区常駐隊に救助された費用が発生。

 

北アルプス剱岳死亡50万円(未請求)

単独で剱岳八ツ峰を登攀中、7峰と8峰のコル付近で、約10㍍滑落。富山県警ヘリで捜索し、搬送後、死亡が確認される。

 

■丹沢・箱根屋沢◆死亡3万円(未請求)

山岳会の仲間4人と一緒に沢登り中、滝で12㍍下に滑落。頭を強く打つなどして死亡。神奈川県警により病院に搬送。

 

■北海道・知床・斜里岳◆負傷◆1万8910円

斜里岳、万丈の滝近くを渡渉中に滑落。頭部外傷、鎖骨ほか骨折などで救助要請。警察、消防の救助隊によりヘリ搬送。謝礼費用が発生

 

熊本県八代市の沢◆負傷◆5万円(未請求)

沢登り中に大岩に手を掛けた瞬間に岩が直撃、バランスを崩して10㍍滑落し、負傷。

 

 

【8月】

南アルプス甲斐駒ヶ岳◆負傷◆20万円(未請求)

甲斐駒ヶ岳から駒津峰方面へ下山中、足を滑らせて小岩につまずき前のめりに転倒。南アルプス北部地区遭対協の救助費用が発生。

 

北アルプスキレット死亡35万円(未請求)

長谷川ピーク付近を通過中、何らかのアクシデントがあり、足を滑らせて転落、死亡。

 

北アルプス槍ヶ岳◆負傷◆10万円(未請求)

槍ヶ岳から東鎌尾根を下山中、岩の上の小石に乗り、転倒。防災ヘリで病院に収容される。北アルプス南部地区遭対協への支払いが発生。

補足:「島崎三歩の山岳通信」第273号によると、女性(55)は13日、2人パーティーで東鎌尾根を下山中、転倒して負傷。防災ヘリが出動して救助した。

 

 

中央アルプス檜尾岳◆特になし◆20万円(未請求)

両脚がけいれんして硬直し、歩行不能に。休憩後下山する旨を小屋に連絡し、救助要請をする。救助隊と合流して下山。

 

■奥秩父豆焼沢◆死亡20万円(未請求)

8月8日、沢で登山者がザックを発見。その後、埼玉県警の捜索で遺体を発見、収容。遺体搬送費を見込む

 

 

 

 

ヘリコプターによる救助について

 長野県警ヘリ(2008年5月4日、涸沢のヘリポートで撮影)

 

 

 

 遭難した場合、頼りになるのはヘリコプターですね。ヘリのおかげで命拾いした登山者は多いと思います。

 

 ヘリによる山岳遭難救助はいま、ほとんどが警察ヘリで、まれに防災ヘリが飛んでいます。

 以前は、「東邦航空」という民間会社がレスキューをしていましたが、救助のエキスパートが2002年に亡くなってから、しばらくしてレスキュー活動から撤退しました。

 

 警察ヘリや防災ヘリに救助された場合、遭難者はヘリ運航費用を支払う必要はありません。

 ヘリが所属する自治体の住民、長野県警ヘリなら長野県民の納めた税金がヘリの運行費用に充てられている、ということを忘れてはいけないですね。

 

 万一、遭難してしまっても、生きて帰るために必要なことは、①ビバーク装備携帯電話の予備バッテリー登山計画書の提出いずれかの「山岳保険」への加入――でしょうか。

 

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