北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

北海道の旅~羅臼でホエールウォッチング

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 海中に深く潜るため尾ひれを持ち上げるマッコウクジラ 

                  (2015日8月12日 羅臼沖で撮影)

 

 

目次

 

 

 

 

 

 

 加藤登紀子さんが歌って知床ブームを生んだ「知床旅情」。

歌詞に出てくる「羅臼(らうす)」という漁村で2015年8月12日、朝を迎えました。

 

 根室海峡で展開されるマッコウクジラを目の前でみるホエールウォッチングに出かけるためです。幸運にも波が静かで、大きな体で滑らかに海を泳ぐクジラに出遭うことができ、海中に潜る瞬間も3回みました。

 

 

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 乗船した観光船「アルラン3世」  (会社のHPから引用)

 

 

 利用したのは「アルラン3世」という観光船。波が高い荒天時や、濃霧でクジラを探すのが難しい時は欠航するそうです。

 

 ホエールウォッチングの所要時間は2時間30分です。

 

 午前9時、羅臼町羅臼港から出港しました。羅臼港の沖には靄(もや)がかかり、25㌔離れた北方領土国後島(くなしりとう)はかすんで見えましたが、ホエールウォッチングには差しさわりがない、と船長さん。

 

 30分ほどして、クジラの出没地点に着きました。

 

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 ×印は、ホエールウォッチングの場所  (地図はグーグルから借用)

 

 

羅臼沖のマッコウクジラ

 観察対象のマッコウクジラは、体長がオスは17㍍前後と巨大です。メスは12㍍前後。

 羅臼沖に来るのはオスだけです。

 

 マッコウクジラは大きな四角い頭が特徴。体の3分の1が頭です。

 1000㍍以上も潜ることができて、一生の3分の2を深い海で過ごしています。

 

 頭のてっぺんの左隅に、鼻の穴のような器官があります。「噴気孔(ふんきこう)」というのが正式名称らしいです。

 

 この噴気孔という穴は、人間と同じように肺で呼吸するためのもの。海中から浮上した時に、長い時間、体内で温められていた空気(主に二酸化炭素)が一気に、左前方に吐き出されます。

 一瞬にして噴き出された空気は、体の外に出ると圧力が下がって、冷えます。すると、息に含まれていた水分が急激に冷やされ、になって白く見えます

 

 

 

クジラの潮吹きは海水ではなく、肺からの息ですよ

 

 遠くから、泳いでいるクジラを見ると、海水を噴水のように吹き上げるように見えますが、実はたまっていた空気を一気に吐き出しているのです。「噴気」というのが正解です。

 鼻の周りにある海水が吹き上がることもあるようですが、ほとんどが空気(主に二酸化炭素)です。

 冬の寒い朝、吐く息が白いのと同じです。

 

 クジラは噴気のあと、同じ噴気孔から空気(酸素)を吸い込み、潜水する時には噴気孔を閉じて海水の浸入を防いでいるそうです。

 

 

 

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   噴気を上げるマッコウクジラ (羅臼沖)

 

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 マッコウクジラのイラスト(国立科学博物館のHPから引用)

 

 

 

 

夏が羅臼で観察のチャンス

 世界の海に生息するオスのマッコウクジラは、流氷が溶けるとともに7月ごろから根室海峡にやってきます

 深海に住むダイオウイカなどイカを捕まえて好んで食べるようです。

 

 

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 潜水するために尾ひれを上げていく瞬間の画像です。

 

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 見えました。尾ひれが・・・。

 

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 きれいですねえ・・・。

 

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 もう、30分以上しないと浮上してきません。

 

 

  

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 観光船「アルラン3世」の船上です。写真右上にクジラがみえます。

 

 

 

プロペラのような尾ひれ 


 マッコウクジラは人間と同じほ乳類で、呼吸のために海面上に顔を出して酸素を肺に取り込んでいます。

 

 浮上している時間が短いうえに、いったん海中に消えると、1000㍍以上潜るために30分は浮上しません。

 

 そのため、マッコウクジラが「噴気」を上げているのを見つけたら、船長さんは必死になって観光船を近づけます。

 

 深く潜る時に、クジラは尾ひれをスローモーションビデオのようにゆっくり上げていきます。すると船上からは「ヨイショ~」の掛け声が飛びました。

 プロペラのような形の尾ひれが海中に沈んでいくシーンは、見事な芸術作品でした。

 

 

 ここからは「噴気」を上げるシーンです。

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 左端に、白いものが・・・。

 

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 プワーッ・・・。

 

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長崎大学が生態を継続調査中

 

尾ひれの傷を撮影

 長崎大学水産学部の調査グループが2006年から毎年8、9月に羅臼で観光船に乗ったりして、根室海峡に回遊してくるオスのマッコウクジラの生態調査をしています。

 

 これまでの調査で、マッコウクジラのメスは生まれた群れで一生を過ごすが、オスは成熟する前に生まれた群れを離れ、同じぐらいの大きさのオス同士で生活することが分かりました。

 生態調査では、マッコウクジラが海中に潜る時に尾ひれを高く上げるため、尾ひれの写真を撮っていました。

 尾ひれは成長とともに傷がついて1頭1頭違うため識別ができ、どのクジラがいつどの個体と一緒にいたかというような情報から、クジラの群れがどうなっているのか調べるようです。

 

 

水中マイクも活躍

 観光船のエンジンが止まった時、学生さんが水中マイクを海に投下しました。

 これは、マッコウクジラがエサを探す時にクリック音と呼ばれる「カチカチ」と聞こえる音波を発し、その反響を聴いてエサの位置を探り出しているため、その音を拾うためです。

 

 観光船にとってもクジラのいる方向が分かれば大助かりで、その方向に進みます。

 

 

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 ここからは「噴気」のシーンと、尾ひれを見せて潜水するまでの記録です。

 

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 背中が見え始めました。

 

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 プワーッと吹き上げます。

 

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 こぶ状の背びれが見えてきました。

 

 

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 尾ひれです

 

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 素晴らしいショーを堪能したのち、知床半島の山々を眺めながら羅臼の港に戻りました。