流氷を砕きながら進む砕氷観光船「ガリンコ号Ⅱ」 (2013年3月1日撮影)
目次
オホーツク海に面した紋別市で2013年3月1日、観光用の砕氷船に乗って、岸に押し寄せてきた流氷を見ました。
その2日後には網走市でも別の砕氷船に乗るという計画でしたが、吹雪で交通網がズタズタに。北海道の自然の厳しさを肌で感じる有意義な旅でした。
砕氷船ダブル乗船!の豪華プランでしたが・・・
≪計画≫
流氷を車窓から見る。(2日)✖
・知床斜里~網走の間をまた「流氷ノロッコ号」に乗る。3日)✖
・網走で砕氷船「おーろら」に乗って流氷を満喫する。(3日)✖
ガリンコ号で氷を割って進む気分はそう快!
紋別で載った砕氷船「ガリンコ号Ⅱ」は、観光目的で運用されている船で、195人乗ることができます。船体は真っ赤。冬の海を埋めた氷は真っ白です。
船体の前部にある2本のドリルを回転させて、ガリガリと音を立てて流氷を砕いて沖に進んでいきます。
これが流氷です。
展望デッキの船首部分に立ちますと、すぐ眼の下で迫力満点の氷を砕くショーを見ることができ、興奮しました。
ところで「流氷」って?
流氷とは、海面を漂う氷のうち、動く氷のことをそうよびます。
北海道の冬の風物詩ですね。
毎年1月下旬になると、紋別市や網走市のあるオホーツク海沿岸に現れて、2月のアタマには接岸しています。
流氷が岸まで着いて、船舶が航行できなくなる最初の日を「流氷接岸初日」と北海道では言っていますが、紋別市はことし2021年は1月26日が流氷接岸初日ですよ、と発表しました。これから1ヵ月間、流氷観光シーズンが始まります。(コロナ禍ですが・・・)
流氷はどうやってできるの?
まず、凍る温度のことから・・・。
塩分を含んでいない真水(まみず)は零度で凍り始めます。しかし、「流氷」の基になる海水は塩分を含んでいて、凍り始めるのは零度でなくマイナス1.8度です。ここまで冷えてくると凍り始めます。(凍るといっても、実際に凍るのは真水の部分だけで、塩分は凍っていない海水のなかに排出されます)
海面近くがマイナス1.8度より下がっていきますと、板状の氷ができ、それが少しずつ増えて大きくなり、海流に乗ってオホーツク海を南下。1月下旬には北海道の沿岸に来る、というわけです。
オホーツク海が凍る3つの要因
オホーツク海が凍る理由は、3つの要因があります。
1つ目は、上の地図を見ると分かりやすいです。オホーツク海は閉ざされた海です。周りをシベリア大陸、サハリン(樺太:からふと)、カムチャツカ半島、その半島から北海道まで延びる千島列島に囲まれています。
(北海道立オホーツク流氷科学センターのHPから拝借)
この閉ざされた海に、アムール川から真水が大量に流れ込んできます。真水はオホーツク海の表面に広がって、海面から50㍍ほどの表層の塩分が薄くなっているのです。アムール川の水が、オホーツク海を塩分が濃い層と薄い層の二重構造の海にしているのです。それが2つ目の要因。(やや見づらいですが、上のイラストを参照)
3つ目は、シベリア降ろしと言われる寒気の来襲。11月になってシベリア大陸から猛烈な寒気が流れ込んできますと、表面の海水は冷やされ、密度が大きいために沈み込みますが、50㍍以上の深いところは塩分濃度が高いためにはね返されます。
つまり海の水が混ざり合う「対流」が海全体ではなく、50㍍までの浅い部分だけで行われるため早く冷え込んでいき、すぐにマイナス1.8度になって流氷ができるわけです。
太平洋や日本海は海水が二重構造になっておらず、海全体で対流が起こりますが、水深が深いためにマイナス1.8度になる前に春が来て、流氷はできません。
流氷の故郷はシベリアとサハリン(樺太)
北海道立オホーツク流氷科学センターの実験で、北海道に来る厚い流氷の故郷は、ロシアのシベリア沿岸と、サハリン(樺太)の東海岸と分かりました。
沿岸でできた薄い氷は北風で次々と流され、厚くなりながらやってくるようです。ただし、北海道沖の海でも薄い流氷はできるようです。
大雪で計画はズタズタに
紋別でガリンコ号Ⅱに乗った翌日は、JR網走~知床斜里駅間を 「流氷ノロッコ号」の車窓から流氷を楽しもうと指定席券も事前にゲットしていました。
ところが、網走でバスを降りたら、目的の列車は運休。「車両故障」とのことでした。
そりゃないよねえ~。がく然としました。
普通列車とバスを乗り継いで、ウトロの知床第一ホテルに入りました。
ウトロから脱出できず知床第一ホテルで待機
翌日は、ウトロを朝9時台のバスに乗る予定でしたが、なんと、積雪で国道が不通になってしまいました。
ホテルで開通まで待機すること、5時間・・・。
午後2時すぎに、やっとバスが動き出し、JR知床斜里駅前になんとか着いたものの、JRはことごとく運休になっていました。
JR知床斜里駅の待合室の「運休」を知らせる張り紙。みなさん、困っていました。
これでは網走で砕氷船「おーろら」に間に合わないどころか、帰りの東京までの飛行機に乗り遅れちまうではないか、というわけで、女満別空港までタクシーで急ぎました。そのタクシーを拾うまでがたいへんでしたが・・・。
ただ、このタクシーの運転手さんは親切な人で、女満別空港手前の撮影ポイントを教えてくれたうえ、車を止めてくれました。
小高い丘の上に木が7本。確かに絵になる光景でした。(上の写真)
(補足)
帰宅して、天気図を見ましたら、最悪の天候でした。
高層天気図は大雪を予想していた
(2013年3月2日21時(日本時間)の高層天気図)
天気図の1つ、高層天気図の中に500ヘクトパスカル天気図というのがあります。登山で使う人もいます。
これは気圧が500ヘクトパスカルになる高さをつなげて1つの面として表している図です。地上から約5100㍍から5700㍍ぐらいの高度です。
この天気図を見る意味は、「大雪の目安はマイナス36度以下」「雪が降る目安はマイナス30度以下」とほぼ決まっていますので、自分のいるところの上空は何度かをチェックできるのです。
これをみると、北海道はマイナス36度の等温線と、マイナス30度の等温線にはさまれていました。
事前にチェックしておけば、大雪を予想できたようです。