東京の最高気温が5.8度と低かった2019年12月7日。神奈川県の丹沢・塔ノ岳(標高1491㍍)では雪が積もるかも、などという淡い期待から、いそいそと山に向かいました。
残念ながら雪にはめぐりあえませんでした。が、氷点下3度の塔ノ岳山頂では、代わりに霜柱や霧氷、雪を頂いた富士山の雄姿が出迎えてくれました。
丹沢・塔ノ岳山頂 (2019年1月6日正午撮影)
冬の風物詩、霜柱
初冬の冷え込んだ登山道を歩いていて、ついつい踏みたくなるもの――それは
「霜柱」です。
登山道からちょこっと外れたところにあって、踏みつけると氷の細い柱が折れて
ザクッザクッと心地よい音がします。楽しい、と思う気持ちは、大人も子供も変わらないと思います。
「霜柱」は、気温が氷点下になった時、土の中の水分が
「毛細管(もうさいかん)現象」で地表にしみ出て、柱のように凍結したものです。
丹沢の大倉尾根を登っていて、花立山荘(標高1300㍍)を過ぎたあたりから、登山道わきで霜柱が表れ始めました。
霜柱ができる条件
霜柱って、どこでもいつでもできるものではないようです。
いろいろ条件があるようです。
まず、地表面が「零度以下」であって、土の中は零度以上という気象条件が必要です。土の中の水分が凍っていると、霜柱はできません。
土にも条件があります。土は細かなすき間があることが決め手。登山道のように踏み固められたところには霜柱はできない。地中に適度な湿り気があることが大切で、カラカラでもたっぷりでもいけない。
関東平野は「関東ローム層」という、周辺の火山の噴火で降り注がれた火山灰の層からできていて、霜柱ができやすい地域だそうです。
霜柱のでき方
霜柱ができる季節は、冬です。
気温は氷点下になり、地表の土に「氷」が付く。これが最初の変化。
次に地中の水分が「毛細管現象」で表面の凍った粒をめがけて、細かな土の粒の間を上昇し、地表近くで外気にさらされて凍ります。
地表で凍ると、水は体積が増えます。だから土が盛り上がります。また地中の水分はどんどん上がってくるため、凍った土は押し上げられて細い氷の柱になって上に伸びます。
みたところ氷の柱の直径は1ミリと細く、高さは5センチぐらい上に伸びます。それ以上伸びると、横になってしまうようです。
霜柱のアタマの上には、最初に凍った部分の「土」が付いた状態で、まっすぐ伸びます。枯れ葉を押しのけているのではなく、茶色の土を押しのけているのです。
ただ、この霜柱、時には登山道の斜面を崩すことにもなりますので、全面的に歓迎されているわけではないようです。
「すごーい」。山頂で突っ立っていると、山ガールのお姉さんたちが登ってきて、スマホで写真を撮り始めました。
「霧氷」です。
『霧氷』も素敵です
霧氷は、ここ1491㍍の山頂まで登ってこないと、塔ノ岳では“拝む”ことができません。
霧氷は、気温が「氷点下」の時に、空気中の水蒸気が風に乗って樹木や障害物にあたって、くっついてできる「氷」のことです。冬ならの現象です。
霧氷とは別に、「樹氷」という自然現象もあります。
ただし、樹氷は「霧氷」の一種です。
樹氷は気温がマイナス5度より低くなって、固まっていない霧が冷えた樹木や構造物にぶつかってくっつき、当たった面が凍りついたものです。
次々とぶつかってきた水蒸気は、凍りついてから風上に向かって伸びていきます。成長していきます。「風下」ではありません。
風上に向かってたくましく成長したものを「えびの尻尾」と呼んでいます。てんぷらのえびの尻尾というイメージです。
塔ノ岳山頂で見たエビの尻尾 (2007年1月21日撮影)
富士山・・・鉄の支柱やロープにできたエビの尻尾
(2009年11月3日撮影)