北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

健康寿命が「男性72歳」という根拠は何なの?

 

 「健康寿命」という言葉を、よく聞くようになりましたね。

 「健康寿命」というのは、寝たきりや認知症にならないで自力で生活できる年齢のことでしょ、と連想するんですが、その境目の年齢がなんと、男性は72歳、女性は75だというんですね。

 わたしもそのうちその年齢になりますが、ちょっと早すぎません? 調査方法に問題があるんじゃないの?

 

 そんな思いから、健康寿命の算出方法調査対象者はどういう人たちなのか、なんていうことを調べてみました。

 

目次

 

 

 

キーワードは「日常生活に制限のない期間の平均」

 そもそも「健康寿命」ってなに? というところから。

 

 健康寿命」という言葉を、厚生労働省は、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことをいう」と説明しています。

 

 そして、2019年(令和元年)の健康寿命は、男性72.68歳女性75.38歳と公表しています。(2021年12月20日厚労省発表)

 

 一方で、2019年の「平均寿命」は、男性81.41歳、女性87.45歳ですから、「健康寿命」との開きは、男性約9年、女性約12年もあるわけですね。

 

 

 

健康寿命」はWHOの提唱

 「健康寿命」という考え方はどこのだれが言い出したのかというと――

 

 WHO(=World Health Organization)世界保健機関という国連の機関が、2000年に提唱した言葉だそうです。

 

 WHO憲章の前文に、「健康」の定義が次のように書かれているようです。

 「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」

 

 WHOは、「健康寿命」をもっと延ばして「平均寿命」との差を縮めましょう、と各国に働きかけているようです。

 

 

 

 

健康寿命」の年齢は何をもとにしてはじき出しているの?

 

 さてそこで、疑念を抱いている「算出方法」です。

 実は「健康寿命」の数字をはじき出す方法は1つではなく、いくつかあることを知りました。

 

 厚生労働省は「サリバン法」という方法で健康寿命を算出しているそうです。

 「サリバン法」とは「毎年必ず10万人が誕生する状況を仮定し、そこに年齢別の死亡率と、年齢別の『健康・不健康』の割合を与えることで、『健康状態にある生存期間の合計値』(『健康な人の定常人口』)を求め、これを10万で除して健康寿命を求める方法」です。(厚労省健康寿命のあり方に関する有識者研究会」報告書から引用)

 何を言っているのか私にはそしゃくできない説明ですが・・・。

 

 

 

厚労省は「国民生活基礎調査」のデータを基に健康寿命を算出している!

 「健康寿命」を算出する時に気になるのは、「健康な人の割合」をどんな資料を使って数字をはじき出しているか、ですね。

 

 データの基になるのは、厚労省が3年ごとに一般国民を対象に、無作為抽出で行っている自記式の「国民生活基礎調査」で得られた数字でした。

 

 厚労省は現在、このデータを使って、2通りの方法で「健康寿命」を算出しています。

 

 1つは日常生活に制限のない期間の平均」を健康寿命とする方法。これが「主指標」です。

 

 もう1つは自分が健康であると自覚している期間の平均」を健康寿命ととらえる方法で、こちらを「副指標」としています。「健康」という言葉が抽象的で受け止め方がさまざまなために、追加で考え出した指標のようですね。

 

 

 

 

 さて、どんな調査か、といいますと――

 

 日常生活に制限のない期間の平均」の出し方は、国民生活基礎調査の質問票の中の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか①ある②ない」の項目で、「②ない」に〇を付けた人を「健康」とし、「①ある」を選んだ人を「不健康」として、サリバン法によって算出しています。

 

 

 もう1つの「自分が健康であると自覚している期間の平均」の出し方は、同じ質問票の中の「あなたの現在の健康状態はいかがですか。あてはまる番号1つに〇を付けてください。①よい②まあよい③ふつう④あまりよくない⑤よくない」という項目で、「①よい」「②まあよい」「③ふつう」という回答を「健康」とし、「④あまりよくない」「⑤よくない」を「不健康」として算定しているんですね。

 

 

 要するに、調査対象者の主観的な自己申告によって「健康寿命」が測定されていることが分かります。信頼性に疑念を持たれるかもしれませんね。

 

 

 

 

 

介護保険データで健康寿命を出す方法も

 このほか、都道府県レベルでは、「介護保険データ」を使って、「健康寿命」を算出している自治体もあります。

 それは、「日常生活動作が自立している期間の平均」を「健康寿命」と考える新しい指標です。

 介護保険」の要介護度が、「2~5」の人を「不健康」、そうでない人を「健康」とみなして計算する方法です。

 この方法だと、2020年(令和2年)に厚労省がまとめた全国平均の「健康寿命」は、男性80.1年、女性84.4年でした。

 

 ただ、この指標では、65歳以上の高齢者のみが対象になります。平均寿命との差も1~2歳と小さいために、健康増進という政策課題達成のための指標としては、役立たないという欠点がありそうですね。

 

 

 

 

 

まとめ

 「健康寿命」という言葉は、あいまいな言い回しなんですね。どういう状態が「不健康」なのか明確に統一された規定もなく、数字はさまざまです。

 ただ、健康寿命が延びればご本人はうれしいし、お国としても介護・医療費を抑えることができますので健康寿命を延ばすことに異論はございません。

 あたしとしては、寝たきりにならないようウォーキングを毎日続けて、脚の筋肉を鍛えることにします。