槍ヶ岳と大キレット (北穂高岳山頂から)
40歳を過ぎてから登山に目覚め、北アルプス穂高連峰や南アルプスの3000メートル級の冬山に登り始めました。
凍てつく音のない世界です。夏山とは全く違う世界です。新雪の上にドサッと疲れた体を投げ出すと、体がジーンとしびれ、そのまま眠ってしまいたい気分になります。素晴らしい世界です。
還暦を過ぎた老体には、あの感動はもう望めませんね。家庭環境がもし許せば、挑戦してほしいと思います。
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体験; アイゼンの音が心地よい~~北アルプス
北アルプス・燕岳 (2005年12月31日~2006年1月1日撮影)
ギュッギュッ、ガリ、ゴリ・・・・・
北アルプスの3000㍍級の山々は、11月も中旬を過ぎると、白一色の銀世界になります。岩や土は氷の下に埋もれ、姿は見えません。聞こえるのは、自分のはいた重登山靴のアイゼンが、氷に食い込む時のガリッという摩擦音のみです。
キーンと空気が張り詰め、静まり返った厳かな世界に身を置くと、心が洗われます。
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体験;冬山の厳しさ~~~ トレースが消えた!
12月以降の冬山を縦走する時に、「怖い」と思うのは、トレース(踏み跡)が消えてしまうことです。ほんの少し前まで自分がいた場所が、分からなくなってしまうのです。
2001年の年末から2002年1月にかけての光岳でもそうでした。登頂を目指して前進するものの、横殴りの雪と視界が10㍍程度という悪天候のために、来たルートを安全と思われる場所まで戻ろうとしました。しかし、自分たちが雪の上に残してきた靴跡が消えていて、進むべき方向が分からくなるのです。吹雪でほんの1、2分で靴跡が消されてしまうのです。遭難の一歩手前です。怖いです。
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体験;赤布・旗竿はピークハントに欠かせない!
こうした危険な事態を避けるために、パーティーは山頂まで往復するピークハントの場合、「赤布」や「旗竿(はたざお)」を携行。樹林帯では木の枝に赤布を一定間隔で縛りつけながら進みます。
北アルプス八方尾根の第3ケルン近くを進む(2002年11月30日撮影)
森林限界(本州中部では2500㍍)より標高が高いところでは、2㍍ほどの長さの竹竿の先に赤布を付けた「旗竿」を雪面に突き刺して残置し、下山時に吹雪でホワイトアウトになった時の目印にします。
越後駒ケ岳・・・雪面に亀裂が入っていた。 (2003年4月13日朝撮影)
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体験;こわいのは、風
冬の稜線の風は、すさまじいばかりです。台風並みの毎秒17㍍以上ということもあります。吹っ飛ばされて、転倒、滑落に要注意というところです。
これも別の年の年末年始の南アルプスでの話ですが、易老岳から聖岳を目指したものの、樹林帯を出たところで強風に歓迎され、稜線を真っ直ぐ歩けませんでした。なんとか茶臼岳(標高2604㍍)まで進みましたが、身の危険を感じ、山頂で証拠写真を撮ってあたふたと下山しました。
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体験;深夜に積もる降雪も怖い
山小屋・燕山荘前 (2002年12月31日早朝撮影)
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体験;夏山登山との違い
冬山登山は夏山登山とは大きな違いがあります。
①気圧配置が西高東低の冬型で風が強い②気温が低い③日照時間が短い④営業している山小屋が少ない⑤登山者が少ない⑥テント泊の場合は装備が重くなる――などです。
同じルートでも、天候によっては吹雪によって視界がゼロ(ホワイトアウト)になり、方向感覚を失うことがあります。
積雪による雪崩の心配もあります。
降雪で路面が凍り、滑って転んだり、がけ下に落ちることもあります。
汗を大量にかいて、体が冷えてしまえば、低体温症に陥ることもあります。
膝の上まで潜るほどの積雪(八ヶ岳・夏沢峠の樹林帯で2003年3月2日撮影)
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【記録写真】
★八ヶ岳(2002年11月)
八ヶ岳連峰・硫黄岳山頂 (2002年11月3日撮影)
八ヶ岳連峰・横岳のクサリ場。コチコチ。(同上)
東天狗岳山頂で撮影。
八ヶ岳の東天狗岳は、標高2640㍍。この山は12本爪アイゼンとピッケルを使う雪山入門コースという位置づけになっているようです。
この山には女性のガイドさんと客3人で登りましたが、「3月」とはいえ風雪で視界が悪く、3メートル先は見えないような状況。ガイドさんは、止めようかと何度かためらっていましたが、客の強い要望で山行を決行しました。
山頂の標識はコチコチでした。
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(八ヶ岳・硫黄岳の凍てついた氷上の登り・・・・2003年3月2日撮影)
(冷たく、吹き付ける風)
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