北穂高岳で味わう至福のひと時

穂高連峰や丹沢を歩いて20年余り。見たこと学んだことを備忘録として書いています。

雪山・荘厳な世界~①美しさと厳しさ

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5月  奥穂高岳山頂からジャンダルムへのルート

 

 冬山(雪山)の美しさ

光岳での体験

  あの時、目の前で一瞬のうちに全体に広がった光の神々しさは、今でも強烈な印象として残っています。

 2002年1月1日午前6時15分、社会人山岳会の4人パーティーで、南アルプス・光岳(てかりだけ)近くの標高2230㍍地点で張っていたテントをたたんで下山を始めました。

 

 気温は氷点下9度・・・。薄い雲に隠れた満月は、少しぼやけて見えました。ヘッドランプに照らし出された雪面はキラキラ輝き、樹林帯の木々の枝に覆いかぶさっていた雪も、結晶がキラリと光っていました。

  

 午前7時15分。遠くの雲が少しオレンジ色になったな、と思った瞬間でした。

 薄暗かった低い樹林帯が、一瞬にして明るい光の波に襲われました。眼の覚めるような、自然のつくりだす営みに感動を覚えました。

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南アルプス・光岳から下山途中 (午前7時20分ごろ撮影)

 

 

 

  ◇       ◇       ◇       ◇

 

 

アイゼンの音が心地よい~~~北アルプス

ギュッ、ガリ、ゴリ・・・・・

 北アルプスの3000㍍級の山々は、11月も中旬を過ぎると、白一色の銀世界になります。岩や土は氷の下に埋もれ、姿は見えません。聞こえるのは、自分のはいた重登山靴のアイゼンが、氷に食い込む時のガリッという摩擦音のみです。キーンと空気が張り詰め、静まり返った厳かな世界に身を置くと、心が洗われます。

  

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北アルプス・燕岳の山頂近くの稜線上・・・遠くにとがった槍ヶ岳がみえる

                     2006年1月1日撮影)

  

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北アルプス・燕岳の山頂・・・・2005年12月31日撮影)

 

 

冬山(雪山)の厳しさ

トレースが消えた!

  12月以降の冬山を縦走する時に、「怖い」と思うのは、トレース(踏み跡)が消えてしまうことです。ほんの少し前まで自分がいた場所が、分からなくなってしまうのです。

 2001年の年末から2002年1月にかけての光岳でもそうでした。登頂を目指して前進するものの、横殴りの雪と視界が10㍍程度という悪天候のために、来たルートを安全と思われる場所まで戻ろうとしました。しかし、自分たちが雪の上に残してきた靴跡が消えていて、進むべき方向が分からくなるのです。吹雪でほんの1、2分で靴跡が消されてしまうのです。遭難の一歩手前です。怖いです。

 こうした危険な事態を避けるために、パーティーは、山頂まで往復する場合に、「赤布」や「旗竿(はたざお)」を携行し、樹林帯では木の枝に赤布を一定間隔で縛りつけながら進みます。

 森林限界(本州中部では2500㍍)より標高が高いところでは、2㍍ほどの長さの竹竿の先に赤布を付け、雪面に突き刺しながら歩きます。

 

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北アルプス八方尾根の第3ケルン付近・・・2002年11月30日撮影)

 


怖いのは、風

  冬の稜線の風は、すさまじいばかりです。台風並みの毎秒17㍍以上ということもあります。吹っ飛ばされて、転倒、滑落に要注意というところです。

 これも別の年の年末年始の南アルプスでの話ですが、易老岳から聖岳を目指したものの、樹林帯を出たところで強風に歓迎され、稜線を真っ直ぐ歩けませんでした。なんとか茶臼岳(標高2604㍍)まで進みましたが、身の危険を感じ、山頂で証拠写真を撮ってあたふたと下山しました。

 

降雪も怖い

  2002年の年末、山岳会の合宿で中房温泉から北アルプス・燕岳(つばくろだけ)まで進んだときのことです。

 山小屋の前にテントを張ったのですが、夜中に隣のテントで女性の悲鳴のような声。続いてスコップの音を聞きながらも寝込んでしまいました。

 仲間の声で目が覚めヘッドランプを付けると、顔の近くにテントがあって、かなり圧迫されている気配。入口のチャックを少し開けると、テントの最上部まで雪が積もっていました。テント内はとても狭く、コンロを付けるスペースもない。押しつぶされる恐怖感から、脱出して山小屋に避難することになりました。

 テントの撤収にかかりましたが、テントのスソは降り積もった70㌢ほどの雪に埋もれており、掘り出しているうちにテントポールを2、3ヶ所折損。テントを引っ張りあげた際に底が破れました。

 予定していた大天井岳(おてんしょうだけ)までの縦走も不可能になり、山を下りました。

 

夏山との違い

 冬山登山は夏山登山とは大きな違いがあります。

 ①気圧配置が西高東低の冬型で風が強い②気温が低い③日照時間が短い④営業している山小屋が少ない⑤登山者が少ない⑥テント泊の場合は装備が重くなる――などです。

 同じルートでも、天候によっては吹雪によって視界がゼロ(ホワイトアウト)になり、方向感覚を失うことがあります。また、積雪による雪崩の心配もあります。さらに、降雪で路面が凍り、滑って転んだり、がけ下に落ちることもあります。

 汗を大量にかいて、体が冷えてしまえば、低体温症に陥ることもあります。

 

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八ヶ岳・夏沢峠近く・・・・2003年3月2日撮影)

 

   求められるもの

   こうしたことから、12月から3月までの冬山、4月から5月までの雪山に登るのに必要なことは何か。

 

  思うに、1にも2にも体力。それに、生きて帰るんだという強い精神力。さらに、ピッケル、アイゼンをきちんと使える歩行技術。冬山・雪山の稜線では転倒したら終わり、という場所が少なくありません。転ばない技術の習得が大事。ホワイトアウトの時には、地図とコンパスと高度計を駆使して現在地を確認する「読図」もできるようにしておきたいものです

 

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 (八ヶ岳・硫黄岳の凍てついた氷上の登り・・・・2003年3月2日撮影)

 

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(冷たく、吹き付ける風・・・上と同じ)