北穂高岳で味わう至福のひと時

標高3000㍍の北アルプスに登っていたころの写真記録、国内外の旅行、反戦平和への思いなどを備忘録として載せています。

紅葉の谷川岳と一ノ倉沢ハイキングと土合駅地下トンネルの話≪上≫

 一ノ倉沢の岩壁と紅葉(2022年10月14日午前11時撮影)

 

 

 一ノ倉沢にある岩壁の説明板

 

 

 

 ❝魔の山❞と呼ばれたこともある谷川岳(たにがわだけ)2022年10月13日(木)から一泊二日で行ってきました。

 東京から日帰りできる山ですが、紅葉を楽しんだあと温泉でゆったりしたかったからです。

 

 谷川岳の最近の様子を、写真をたくさん使って2回に分けて載せます。

 

目次

 

 

 

 

谷川岳」という山のこと

 ≪谷川岳ロープウェイ≫発行のパンフから引用

 

 

 

 谷川岳は、群馬県新潟県にまたがる山で、「日本百名山」のひとつ。

 トマノ耳(標高1963㍍)オキノ耳(1977㍍)という2つの山頂を持つ双耳峰で、遠くから眺めると猫の耳のように見えますね。

 この谷川岳の東側斜面は、一ノ倉沢(いちのくらさわ)、マチガ沢、幽ノ沢という急峻な岩壁で、岩登りロッククライミングが行われています。特に一ノ倉沢は「ロッククライミングの聖地」といわれているようです。

 

 

 

 

死者800人超の「魔の谷川岳」の今昔

むかし

 谷川岳は標高が2000㍍以下ですが、かつては遭難する登山者が多くて「魔の山」と言われていたんです。

 谷川岳とその近くの一ノ倉岳、万太郎山などを含めて「谷川連峰」といいます。

 戦争が終わって間もない昭和30年代には登山ブームが起きました。いまの中高年や山ガールさんの登山とは違って、困難な岩登りや冬山を目指す20代の大学生や社会人が主流で、谷川岳の一ノ倉沢の岩場で遭難事故が多発しました。

 国鉄上越線開通で土合(どあい)駅ができた昭和6年(1931年)から数え始めて、2021年12月までに群馬県警の統計では死者824人を数えています。

 死亡原因は、岩登り中の転落・滑落が半数以上。これに低体温症や雪崩が続きます。

 

 

いま

 谷川岳ロープウェイのゴンドラ

 

 

 いまは、ロープウェイで「天神平」という谷川岳稜線の手前まで運んでもらえます。ですから天神尾根ルート初級者コースという紹介文が多く、ここを通る人が多い。

 ここ数年の谷川連峰での死者群馬県警の統計では年に5人以内です。一ノ倉沢で岩登りする人が少なくなったことが大きな理由でしょうね。

 

 

 それでもことし(2022年)は既に3人が遭難死しています

 2月谷川連峰・一ノ倉岳の山頂付近の斜面で、神奈川県の男性2人(53歳と47歳)が遺体で発見されました。群馬県警によりますと、2人が所属する山岳会副会長に「ホワイトアウトで身動きできず、体力的に下山が厳しいのでビバークする」と事前に携帯電話から連絡があったそうです。

 もう1件は6月に発生。一ノ倉沢衝立岩正面壁・A字ハングで、岩登りをしていた東京都の男性(35歳)が80㍍下の岩場に墜落。一緒に行動していた人が携帯電話が通じる場所まで下山して110番し、県警ヘリで救助されましたが、死亡が確認されたとのことです。

 

 

 

 

土合駅――「日本一のモグラ駅」に降りた

 JR上越線土合(どあい)駅の下り線地下ホーム。写真は車両の最後尾です。

 

 2022年10月13日午前8時37分、着きました。日本一のモグラ駅に――。

 

 線路(左側)渡ると、ボックスが・・・。待合室ですね。

 

 中をのぞくと、張り紙がペタペタ。イベントでもあったんでしょうかね。

 

 

 「出口」はあっちという表示。

 

 

 

 「ようこそ『日本一のモグラ駅』へ」。

 

 

 これがウワサの地下トンネルです。

「日本一のモグラ駅」という愛称が付けられていますが、無機質で不気味な地下トンネルですね。

 

 下りホームは地下70㍍の新清水トンネルの中にあるのです。

 

 

 

 階段のステップには「50」というふうに数字が書かれていました。

 地上の改札口まで「462段の階段」を上るんですが、「いま50段目だよ」というわけですね。

 

 

 

 階段の両隅には、チョロチョロ水が流れていました。ヒンヤリします。ここは建設当初、エスカレーターを設置しようと考えたのではないか、なんて言われています。

 

 

 ベンチです。階段の途中でほかにも2ヶ所で見ました。

 

 

 

 そろそろ地上出口ですね。「462」という数字。

 

 

 

 扉(とびら)がありました。風が吹き上げて来るんでしょうか。

 

「お疲れさまでした(階段数462段)」と書かれています。それに「改札口まで・・・階段2ヶ所で24段です。がんばってください」と。

 

 

 

 

 486段目の階段。

 

 

 改札口です。ただし無人。電車を降りてから、ここまで10分かかりました。

 

 

 待合室です。

 

 

 

 

地下にホームをつくったのはどうしてなの?

 ところで、なんで地下にホームがあるんだろう、都市部の地下鉄ならともかく、と思いますよね。

 

 調べてみると、地下にホームができたのは昭和42年(1967年)秋のこと。

 

 それまで国鉄上越線単線で上り線と下り線が共用の線路でした。ホームは昭和6年(1931年)の上越線開通以来ずっと地上でしたが、技術革新で長いトンネルを掘ることができるようになって様相が一変。

 清水トンネル群馬県みなかみ町湯檜曽(ゆびそ)駅と新潟県湯沢町土樽駅との間にできると、上り線と下り線に分離することになり、土合駅の上り線ホームは昔からある地上のホームに、下り線ホームは新清水トンネルの途中に置くことになったそうです。

 

 

 土合駅の駅舎は、谷川岳をイメージして三角屋根。たまたま屋根の改修工事中でした。

 

 

 この土合駅、いまや観光名所になっているらしく、新潟県長岡方面からの見学者が上り線ホームに降り立ち、「地下トンネル」入り口を探しているのかキョロキョロする人を見かけました。

 

 

 

 

 

土合駅でのステーションビバーク(駅寝)は禁止らしい

 土合駅の待合室。

 

 

 ステーションビバークというのは、駅の待合室や通路に野宿することです。翌朝、始発バスに乗ったり深夜に鉄道駅に着いた時にする登山スタイルですね。

 

 私もこの土合駅に2度、お世話になりました。1回目は2002年2月に西黒尾根で深雪トレーニングをするために、社会人山岳会のメンバーと夜中に乗用車で着いた時。もう1回は、日本勤労者山岳連盟の関東ブロック・雪崩講習会に参加した2003年1月。

 当時もすでに無人駅になっていましたが、JRは黙認してくれました。

 

 でも、いまは「待合室」は夜、ロックされるらしい。何年か前に、登山者が待合室で食事のために登山用ストーブで点火する行為をJRが防火の観点から危険視して、待合室は宿泊禁止になっていると地元山岳関係者から聞きました。

 

 登山用ガスストーブ。

 

 

 なんとも息苦しい時代になりましたが、非常識な登山者も見かけますからねえ。

 

 

 

 

 

天神尾根は「初級コース」と紹介されるが・・・

 谷川岳ロープウェイ作成のパンフ

 

 写真は、ロープウェイのチケット売り場。終点の「天神平」は「濃霧」だと・・・。

 

 

午前9時25分谷川岳ロープウェイに乗りました。

 

 ロープウェイの土合口駅は標高746㍍

 

 

 

 15分間の空中散歩。

 

 

 終点の「天神平」駅。標高1319㍍

 

 

 さて、一歩を踏み出したいのですが、濃霧・・・。

 

 

 「クマ」だって。バケツを棒でガンガンたたいて、音を出してから進め!というわけね。

 

 

 

 しばらく木道です。これが雨や霧でぬれていて、滑るんです。

 

 

 クサリ場。登りは三点確保をすればクサリに頼らず難なく進めます。ただし、下りは岩がぬれていて滑ります。

 

 

 

 

熊穴沢避難小屋

 無人の小屋です。ここから上部の300㍍間は、岩場やクサリ場が出てきますね。

 

 ロープが垂れ下がっています。

 

 

 ロープも階段も・・・。

 

 

 

山頂近くは紅葉が見ごろでした

 

 さて、1時間ほど歩いた標高1600㍍あたりです。

 立ち止まって、登ってきた道を振り返ると、雲が山の斜面をはい上がっていて、見事な紅葉が目に飛び込んできました。こういう景色、好きなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天狗のとまり場

 ここは「天狗のとまり場」と呼ばれる絶景ポイント。休憩地点ですね。

 

 

 この岩から晴れていれば、山頂のトマノ耳・オキノ耳がきれいに見えるはずですが、きょうはダメですね。

 

 

 1年半前、ここ「天狗のとまり場」で事故がありました。2021年5月4日午後、吹雪で視界不良だったようですが、GPSの位置情報データの群馬県警による解析によると、警視庁の男性警察官(43)が250㍍滑落して死亡。同行の女性警察官(52)も数分後に雪の斜面を滑落。女性は沼田署に救助要請した後に連絡が途絶え、半年後に数百㍍したで遺体で見つかりました。

 

 晴れていれば見通しがよくて特に問題のないルートでも、いったん吹雪になると空と足元の境が真っ白で分からなりますから、怖いですよ。

 

 

 ナナカマドの赤い実。

 

 

 

 

天神ザンゲ岩

 見えてきたのが、天神ザンゲ岩。天狗のとまり場からしばらく進むと、右手に見えてきます。

 

 晴れていれば、天神ザンゲ岩の上から天神尾根を見渡せますが・・・。

 西黒尾根に「ザンゲ岩」がありますが、それとは違います。

 

 

 

 

肩ノ小屋

 午前11時40分、ボヤ―ッと見えてきたのが肩の小屋。ガスが濃くて、周囲の状況が分かりませんな。

 

 

 

 ここまで2時間もかかってしまった。

 

 

 小屋の前に吊り下げられているカネ。

 鐘を鳴らしてあげると、ガスの中で小屋の方向が分からずに戸惑っている登山者は助かります。

 

 

 

 

トマノ耳

 標高1963㍍のトマノ耳

 

 

 午前11時55分、トマノ耳に着いたものの、記念撮影の列ができて順番待ち。静岡から高校生がバス3、4台で来ていて、地元の山岳ガイド10人ほどの案内で天神尾根をトマノ耳まで歩いていました。

 

 

 

 

オキノ耳

 標高1977㍍のオキノ耳

 

 

 きれいだ~~~。

 

 

 

富士浅間神社奥宮

 オキノ耳から少しだけ進むと、目に飛び込んでくる鳥居。富士浅間神社奥宮というようです。

 

 ほこら。「富士浅間神社」は谷川岳のふもとにあるようです。

 

 

 

 

 

 

要注意!雨の日の下山時、「天神尾根」も滑りますよ!

 雨や霧が立ち込めている時とか、止んだ後は、下山する時は特に岩場や木道に注意が必要ですね。「滑りそうだな、気を付けよう」と思っていても、滑りますが・・・。

 

 熊穴沢避難小屋から天神平まで、木道が続きます。

 

 木道が傾いていますね。こんなとこ、歩くのは嫌ですよね、滑ります。

 

 

 段差が大きく、脚を挙げるのがたいへんでしょう。

 

 

 ロープを引っ張りながら登れ、というんですかね。

 

 

 ここは私が「下り」で「左脚」を滑らした場所。クサリを右手でつかんで左脚を傾いた岩肌に置いた瞬間、靴底がツルッと横滑り。転ばないようにと反射的に腰を落としたら、右脚に力が入って右ひざが大きく曲がってしまいました。

 ヒヤッとしましたが、筋線維が1、2本切れて炎症を起こしたくらいで、幸い骨折はなし。

 いくら注意していても、やってしまうんですね。気を付けよう!というしかありまへんが。

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